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決戦のグレイス城編
第174話 盗人
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ヘイスレイブ城の玉座の前には兵達がずらりと並んでいた。
アンチェア「オガリョが脱獄した今、国の安定化を重視する他ありません。グレイス城への援軍要請はお断り致します」
国王アンチェアの言葉に異を唱える者がいた。
ナミチュ「カナメルさんが戦ってるなら、私が行かないわけにはいかないでしょ」
ナミチュは隊列から外れ、扉へと歩き出した。
アンチェア「待ちなさい、ナミチュ。私の友であった有力領主達はオガリョの反乱で皆死んでしまいました。元四天王の皆様も今となってはカナメルのみ、そのカナメルも国を離れています。現状あなたはこの国での最高戦力であることを自覚してほしいのです」
ナミチュ「そうでしょうね、私エリートですから。でも私の道は私が決める。例え王様の命令だとしても、私を止めることは出来ないわ」
アンチェア「私は亡き友人達に代わってこの国を守る使命があります。そのためならどんなことでも致します」
ナミチュ「いいわ、なら私もどんな手を使ってでもグレイス城へ向かわせていただきますわ」
ガチャ
緊張感漂う大広間に何者かが入ってきた。
トゥール「あ~、えーーーと。お取込み中ですか?」
数十分前に城を出たトゥールが戻って来た。
ナミチュ「いいえ、今からお取込もうといったところです」
トゥール「そうかそうか、なら良かった」
兵達は皆杖を手に警戒体制に入っている。
アンチェア「トゥール様、何用でしょう?」
トゥール「いや~お恥ずかしい話ではございますが、わたくしヘイスレイブの土地勘がなく、樹海を彷徨ってしまいまして、、、、気付いた時にはここに辿り着いていたというわけで、、、えーと」
アンチェア「グレイス城に戻れないというわけですか?」
トゥール「簡単に言えばそうです。迷子です」
アンチェア「そうですか。残念ですが罪人のオガリョが脱獄しました、よってヘイスレイブはグレイス城へと兵力を割くことが出来ません。残念ですが今回はお力になれそうにありません」
トゥール「そうですか、、、」
マツ「トゥールさん、お久しぶりです」
隊列の先頭にいたマツがトゥールの姿を見て駆け寄ってきた。
トゥール「お!マツ!!元気だったかい?っておい何だよその腹の傷は!!」
腹部に巻かれている包帯には血が滲んでいる。
マツ「ちょっと色々ありまして、、、力になれなくてすみません」
トゥール「どちみち国としても協力は出来ないとのことだし、まぁその傷じゃ~まずは静養だな」
マツ「そうさせて頂きます」
トゥール「そっかー、、、残念ですが仕方ないですね。ちょっとお願いなんですけど、樹海を抜けるまでの道案内だけお願いしたいんですけど、何とかなりませんか?」
アンチェア「それならば兵を一名案内役としてお貸ししましょう」
トゥール「お、マジっすか!!助かります!!」
ナミチュ「じゃあその役、私がやらせて頂きますわ」
アンチェア「あなたはそのままグレイス城へと向かうでしょう?ダメです」
ナミチュ「この方が噂のトゥールさんなのでしょう?カナメルさんとも親交が深いとか」
トゥール「お!君はカナメルの知り合いなのか?」
ナミチュ「知り合いも何も、私はカナメルさんの副官のナミチュです。今からカナメルさんを助けに行こうとしていたところなのです」
トゥール「おおお!!!あいつの副官なら強いに決まってるな。心強い!!一緒に行こう!」
アンチェア「それはなりません。トゥール様、あなたが来るまでその問答を繰り返していたのですよ」
トゥール「そうなのかぁ、、、ダメらしいぞ、ナミチュ。まぁキングがそう言うなら言うことを聞いておいた方が良いんじゃないか?この先も組織に属するんだとしたら、関係性ってのは大事だろ」
ナミチュ「さぁ、知ったことではありませんわ。私は私のやりたいようにやる。何故なら炎のマントの副官ですから」
トゥール「まぁ、カナメルも似たようなことを言いそうだけどさ」
ナミチュ「さて、行きましょう?トゥールさん」
立ち去ろうとするナミチュをマツが止めた。
ナミチュ「何をするの?マツ」
マツ「待って、ここはアンチェア様に従うべきだよナミチュ。ヘイスレイブには私達の家族もいる、ドラもいる。もしナミチュがいない間にオガリョがまた悪さをして大切な人達に何かあったら、きっと後悔する」
ナミチュ「、、、、、、」
マツ「それにカナメルさんも追って来るなと言っていた。きっとカナメルさんは自分で」
言葉を遮ってナミチュが話し始めた。
ナミチュ「マツ、あなたは何も分かっていないわね。カナメルさんの[来るな]は[来い]ってことなのよ」
マツ「どういうこと?」
トゥール「お、良いこと思いついた!!」
トゥールが晴れやかな顔で手を叩いた。
トゥール「実はここに来たのは道に迷ったんじゃなくて、戦力を奪いに来たんだ。きっとアンチェア様は兵を出してくれないと思ってね」
アンチェア「何を言い出すのかと思えば、、、」
アンチェアは呆れている。
トゥール「そう!俺はヘイスレイブの兵力を奪いに来た。この中で一番強いのはきっとカナメルの副官であるナミチュだろうな。さぁ俺は今から罪人だ、ナミチュの命が惜しければ俺を追って来るが良い!!」
トゥールはナミチュを抱き抱え、瞬時に姿を消した。
大広間の扉は開いていた。
アンチェア「転移石!?、、、じゃない、なんて速さなの」
「アンチェア様!!どうしましょう!?ナミチュ様が連れ去られてしまいました」
アンチェア「連れ去られた、というか。。まぁ良いでしょう、魔法陣を展開してもきっと逃げ切られてしまう。それよりもオガリョの悪巧みを警戒すべきでしょうね」
マツ「、、、、、」
アンチェア「マツ、城の防衛はあなたに任せますよ」
マツ「、、、はい」
マツは胸の内に燻る何かを感じていたのだった。
アンチェア「オガリョが脱獄した今、国の安定化を重視する他ありません。グレイス城への援軍要請はお断り致します」
国王アンチェアの言葉に異を唱える者がいた。
ナミチュ「カナメルさんが戦ってるなら、私が行かないわけにはいかないでしょ」
ナミチュは隊列から外れ、扉へと歩き出した。
アンチェア「待ちなさい、ナミチュ。私の友であった有力領主達はオガリョの反乱で皆死んでしまいました。元四天王の皆様も今となってはカナメルのみ、そのカナメルも国を離れています。現状あなたはこの国での最高戦力であることを自覚してほしいのです」
ナミチュ「そうでしょうね、私エリートですから。でも私の道は私が決める。例え王様の命令だとしても、私を止めることは出来ないわ」
アンチェア「私は亡き友人達に代わってこの国を守る使命があります。そのためならどんなことでも致します」
ナミチュ「いいわ、なら私もどんな手を使ってでもグレイス城へ向かわせていただきますわ」
ガチャ
緊張感漂う大広間に何者かが入ってきた。
トゥール「あ~、えーーーと。お取込み中ですか?」
数十分前に城を出たトゥールが戻って来た。
ナミチュ「いいえ、今からお取込もうといったところです」
トゥール「そうかそうか、なら良かった」
兵達は皆杖を手に警戒体制に入っている。
アンチェア「トゥール様、何用でしょう?」
トゥール「いや~お恥ずかしい話ではございますが、わたくしヘイスレイブの土地勘がなく、樹海を彷徨ってしまいまして、、、、気付いた時にはここに辿り着いていたというわけで、、、えーと」
アンチェア「グレイス城に戻れないというわけですか?」
トゥール「簡単に言えばそうです。迷子です」
アンチェア「そうですか。残念ですが罪人のオガリョが脱獄しました、よってヘイスレイブはグレイス城へと兵力を割くことが出来ません。残念ですが今回はお力になれそうにありません」
トゥール「そうですか、、、」
マツ「トゥールさん、お久しぶりです」
隊列の先頭にいたマツがトゥールの姿を見て駆け寄ってきた。
トゥール「お!マツ!!元気だったかい?っておい何だよその腹の傷は!!」
腹部に巻かれている包帯には血が滲んでいる。
マツ「ちょっと色々ありまして、、、力になれなくてすみません」
トゥール「どちみち国としても協力は出来ないとのことだし、まぁその傷じゃ~まずは静養だな」
マツ「そうさせて頂きます」
トゥール「そっかー、、、残念ですが仕方ないですね。ちょっとお願いなんですけど、樹海を抜けるまでの道案内だけお願いしたいんですけど、何とかなりませんか?」
アンチェア「それならば兵を一名案内役としてお貸ししましょう」
トゥール「お、マジっすか!!助かります!!」
ナミチュ「じゃあその役、私がやらせて頂きますわ」
アンチェア「あなたはそのままグレイス城へと向かうでしょう?ダメです」
ナミチュ「この方が噂のトゥールさんなのでしょう?カナメルさんとも親交が深いとか」
トゥール「お!君はカナメルの知り合いなのか?」
ナミチュ「知り合いも何も、私はカナメルさんの副官のナミチュです。今からカナメルさんを助けに行こうとしていたところなのです」
トゥール「おおお!!!あいつの副官なら強いに決まってるな。心強い!!一緒に行こう!」
アンチェア「それはなりません。トゥール様、あなたが来るまでその問答を繰り返していたのですよ」
トゥール「そうなのかぁ、、、ダメらしいぞ、ナミチュ。まぁキングがそう言うなら言うことを聞いておいた方が良いんじゃないか?この先も組織に属するんだとしたら、関係性ってのは大事だろ」
ナミチュ「さぁ、知ったことではありませんわ。私は私のやりたいようにやる。何故なら炎のマントの副官ですから」
トゥール「まぁ、カナメルも似たようなことを言いそうだけどさ」
ナミチュ「さて、行きましょう?トゥールさん」
立ち去ろうとするナミチュをマツが止めた。
ナミチュ「何をするの?マツ」
マツ「待って、ここはアンチェア様に従うべきだよナミチュ。ヘイスレイブには私達の家族もいる、ドラもいる。もしナミチュがいない間にオガリョがまた悪さをして大切な人達に何かあったら、きっと後悔する」
ナミチュ「、、、、、、」
マツ「それにカナメルさんも追って来るなと言っていた。きっとカナメルさんは自分で」
言葉を遮ってナミチュが話し始めた。
ナミチュ「マツ、あなたは何も分かっていないわね。カナメルさんの[来るな]は[来い]ってことなのよ」
マツ「どういうこと?」
トゥール「お、良いこと思いついた!!」
トゥールが晴れやかな顔で手を叩いた。
トゥール「実はここに来たのは道に迷ったんじゃなくて、戦力を奪いに来たんだ。きっとアンチェア様は兵を出してくれないと思ってね」
アンチェア「何を言い出すのかと思えば、、、」
アンチェアは呆れている。
トゥール「そう!俺はヘイスレイブの兵力を奪いに来た。この中で一番強いのはきっとカナメルの副官であるナミチュだろうな。さぁ俺は今から罪人だ、ナミチュの命が惜しければ俺を追って来るが良い!!」
トゥールはナミチュを抱き抱え、瞬時に姿を消した。
大広間の扉は開いていた。
アンチェア「転移石!?、、、じゃない、なんて速さなの」
「アンチェア様!!どうしましょう!?ナミチュ様が連れ去られてしまいました」
アンチェア「連れ去られた、というか。。まぁ良いでしょう、魔法陣を展開してもきっと逃げ切られてしまう。それよりもオガリョの悪巧みを警戒すべきでしょうね」
マツ「、、、、、」
アンチェア「マツ、城の防衛はあなたに任せますよ」
マツ「、、、はい」
マツは胸の内に燻る何かを感じていたのだった。
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