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マイケルの自空間編

第166話 夜に咲く者と朝焼けを待つ者

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とめどなく溢れる妖魔を斬りながら都中を動き回るトゥール。

その足取りは一つの場所を目指していた。

トゥール「無事でいてくれ、サクラ」

速さに自信のあるトゥールだったが、妖魔に襲われる民衆を助けながら進むのは時間がかかる。

そんな時、一人の侍が風の刃の男と向かい合うようにして刀を構えていた。

ショーヘイ「どうして風の刃が妖魔ではなく人を斬っているんだ!!」

風の刃の男は倒れる人間の心臓から禍々しい妖気を放つ刀を引き抜いた。

鮮血が噴き出し、その血を浴びながら前髪をかきあげた。

トゥール「ショーヘイ!!!」

ショーヘイ「トゥール!?奴は何者だ!同じ風の刃だろう」

トゥール「!?」

その男は紛れもなく、東風のタケルだった。

タケル「トゥールにしては遅かったな」

トゥール「タケルさん、単刀直入に聞きます。カミヤさんとキムキムを斬ったというのは本当ですか?」

タケル「ああ、斬った」

タケルは迷いなく即答した。

トゥール「どうして、そんなことを」

タケル「超大型妖魔のような強大な敵を滅するにはもっと力が必要だと改めて思ったからだ」

タケルが持つ刀は黒く疼いているように見える。

トゥール「その妖刀が斬った者を吸収しているというのか」

タケル「ああ、神刀朝焼けは無の神によって妖刀と成った。俺様は全ての妖魔を滅する。その為の犠牲は厭わない」

トゥール「そうかい」

ショーヘイは逃げ惑う民衆達を横目に見ながら、風の刃の二人の動向を窺っていた。

都に溢れているのは小型と中型の妖魔である。

今のトゥールなら民衆を助けながら妖魔を倒し続けることが出来るだろう。
しかし、目の前のタケルを何とかしなければならない。

小型の妖魔と言えど、風を扱えないショーヘイが戦うのは無理だろう。

武器を持ったとて、人は妖魔に勝てない。

風の刃は妖魔を倒す組織である。
今となってはその意味も分かる。

トゥール「ショーヘイ、動ける民を連れて都を出ろ。出来るだけ遠くに駆けるんだ。他の者達を助けて、俺もその後を追う」

ショーヘイ「ああ、分かった!!」

ショーヘイは走り出した。

タケル「さて、俺様はこの後も妖刀に血を吸わせる。都の民衆を喰らい尽くし、北を目指す。きっと北側には優秀な風の刃の諸君が血を流して寝ているだろうからな」

トゥール「それはどうかな、北にはコヘが向かった。もうじき巫女様は救出されている頃だろう。それに超大型妖魔を滅するには力が必要だと言ったな?俺とコヘはあの亀を倒したぞ!!タケルさんもカミヤさんと協力すれば倒せたはずだ!!あんたは自分の過去から逃げただけだろ」

タケルは盛大に笑い出した。

タケル「クック、、ハッハッハッ!!お前みたいな甘ちゃんがいるから!!風の刃はいつまでも妖魔討伐ごっこをしなければならないんだよ。いいか、このまま協力なんて戯言を吐いていればお前もいつか大切な人を失うことになるぞ?そして初めて気付くんだ。力さえあれば助けられた。と」

トゥール「人が簡単に死にゆく世界で力なんてあったって意味ないだろ」

タケル「世界でたった一人になったとしても、俺は妖魔を滅する。それがあいつへのせめてもの償いだ」

タケルは妖刀朝焼けを鞘へと収め、居合の構えをとった。

タケル「構えろ、俺様はこの世界に朝焼けを見せてやる。そのための錆落としとなれ」

トゥールは等しく居合の構えをとる。

トゥール「訪れた綺麗な朝焼けを一人で見たって虚しいだけだろ。その景色を共有したい誰かがいるから朝焼けを美しいと思えるんだ!!それなら朝なんて来なくたって良い、例え真っ暗闇の夜空でも、俺は皆と手をとり、暖をとり、共に笑い合えるようこの刀を抜く」

タケル「本当の正義を教えてやる」

「居合、、、旋風、、、」

周囲の風が渦巻いて、二人の鞘へと吸い込まれていく。

「獺祭!!!!!」

この世界に訪れるのは孤独な朝焼けか、絆の夜空か。



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