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マイケルの自空間編
第154話 初陣
しおりを挟む修行によってボロボロになった身体を自室で休める。
それを繰り返すだけの日々は地獄のようだったが、トゥールの戦闘力は著しく上昇していた。
その成長速度には指導していたタケルも驚いており、自分が五年かけて到達した領域にたった半年で踏み込んで来ているとのことだった。
修行の間、トゥールは花の城から出ることがなかった。
もちろん修行の後に街へと出る元気がなかったということもあるが、正式に風の刃として認められるまでは自分の力を高めることだけに集中したかったのだ。
そんなトゥールの学ぶ姿勢も含め、タケルはトゥールを高く評価していた。
トゥールはもう既に城を出て妖魔を倒す力を十分手にしていた。
しかし、タケルはトゥールの熱意に応え、全てを託すまでは修行を続ける意向でいたのだった。
そんなある日。
タケル「もはや俺様から教えられる技は残り一つだけとなった。よくここまでついてきたな」
トゥール「我ながら頑張りましたわ」
トゥールは爽やかな笑顔をタケルへと向けた。
タケル「正直、お前は風の刃の戦い方に最も向いている人間だ。その驚異的な身体能力、何よりも強靭な足のバネがこの戦術を味方につけている。こう見えても俺様は足が遅くてな、風の刃としては見込み無しと言われたものだ。だがその悔しさが逆に自分を強くした。風迅速を疎かにして、剣技を磨き続けた。その結果、東風となった。そして今から教える技は俺様のオリジナルだ」
剣技でタケルの右に出る者はいなかった。
最初は嫌な奴だと思っていたが、今となっては最強の剣士として崇められるのも頷ける。
タケルが師匠で良かったと心から思った。
トゥール「俺がここまで強くなれたのはタケルさんのおかげですわ」
タケル「そりゃそうだ。俺様直々の指導を受けておきながら強くなれませんでした~じゃ面目丸潰れだ。まだまだ強くなって、そしてこのまま北風を目指せ。お前ならなれる」
その時
ポォオォ~~~~~
法螺貝の音が都中に響き渡り、花の城にいる全ての者の顔色が変わった。
タケルは刀に手をかけている。
トゥール「この音はなんですか?」
タケル「覚えておけ、この音が鳴った時。それは都内への妖魔の侵入を許した時だ」
トゥール「え!?まぁでも、すぐに誰かが倒してくれるんですよね?」
タケル「いや、俺様が知る限り、妖魔の都への侵入を許したことは一度もない。これは緊急事態だ」
風の刃の一人がタケルの元へと馳せ参じた。
「タケル様!!!都内に複数の妖魔を確認、妖魔は外からではなく内側から出現している模様!!」
タケル「内側からだと!?そんな馬鹿な話があるか!!妖魔は海からやってくるものだ。いや、今はそうも言ってられないか」
トゥール「俺はどうしましょうか」
タケル「トゥール、お前も出ろ。都内の妖魔を殲滅する」
そう言い残し、タケルはその場から消えた。
トゥール「あ、、、、まぁ行くしかねぇか!!」
トゥールは花の城を出た。
都内はパニック状態に陥っていた。
多くの風の刃が都を駆け回っている。
しかし妖魔の数が減っているようには見えない。確かに湧き出ているようにも見える。
トゥール「皆さん!!落ち着いて!!建物の中へ!!」
逃げ惑う民衆に声をかけながら、トゥールは街を駆ける。
その中に一際落ち着いている老人がいた。
トゥール「ここは危険です、建物の中へ避難を!」
老人はニヤリと不気味に笑いながら答えた。
老人「クックック、さて、、、どこまで足掻けるか見ものよのぅ」
トゥール「、、、、、?」
老人はのそのそと歩き、近くの建物の中へと入った。
トゥール「まぁいいか、とにかく妖魔を倒さねば」
その時、トゥールの周りに突然妖魔が現れた。
それらは言葉の通り、湧き出てきたのである。
トゥールは何度も練習を重ねた風迅速を使い、一瞬で複数の妖魔を斬り伏せた。
トゥール「戦える、、、今度こそ、本当に」
遠くに中型の妖魔が民衆を襲っているのが見えた。
トゥール「抜刀、、、突風、、、」
トゥールは狙いを定め、大きく地面を蹴った。
トゥール「真澄!!!!」
次の瞬間には刀が妖魔の心臓を貫き、妖魔は霧のように消えた。
間一髪助かった女性だったが、隣に倒れ込む男性の胸に顔を埋めて泣いていた。
トゥール「間に合わなくて、申し訳ない、、、、、辛いでしょうけど、今は建物の中へ、、、生きることを諦めないでください」
女性は静かに頷いた。
強くなっても、これじゃ意味がない。
タケルは妖魔を倒すのが風の刃の仕事だと言っていた。
しかしトゥールはそれに異を唱え続けた。
妖魔を倒すのは人を救うための過程に過ぎない。
これがトゥールの信念だった。
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