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マイケルの自空間編
第149話 北の村
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お婆さんの手紙を握りしめ、トゥールは自慢の足をフル回転させて北方向へと向かっていた。
北方向には初めて訪れたトゥールだったが、その寂れ様に驚いた。
都から一つ隣の町ならば東も西も南も華やかな町が広がっているものである。
北の町へと辿り着いたトゥールは宛名の部分に書かれている小さな家の扉を叩いた。
トゥール「足運びです、お届け物になります」
出てきたのは柄の悪い若い男である。
男「、、、、」
男は汚れた手紙をぶんどり、その場で読み始めた。
そして、その男の目から大粒の涙が流れた。
男「、、、ありがとう」
トゥール「なんもなんも、仕事ですから~」
男「嘘をつくな、これはうちのお婆からだろ?今のお婆が小判を支払って仕事を依頼出来るような状況じゃないのは俺がよく分かっている。昔は夜の仕事で一攫千金を果たした身だったが今はただのお婆さんだ。いつ都から追い出されるかも分からない。うちは複雑でね、俺には弟がいるんだが親は幼い頃に妖魔にやられて、お婆が育ての親みたいなもんなのさ」
都には大金持ちしかいないと思っていたが、実はそうでもないらしい。
男「俺は北のこの無法地帯で生きていく術を持っているが、ひ弱な弟には難しかった。でもそんな弟が結婚するらしい、茶屋の娘をもらったらしく、これからは都に住めるんだそうだ。良かった、、、良かったよ」
トゥール「家族なのに、あなたは都には住めないのか?」
男「結婚をすれば、世帯から外れるのさ。この国は結婚に関してはシビアでね。風の刃の輩なんかは結婚する相手を決められていると聞くぞ。華々しく見える組織だが、崇められるのと引き換えに妖魔を倒すだけの人形になるみたいなもんだ。住む場所も結婚相手も自由時間も全て管理されるんだからな」
トゥール「そうなのか~、厳しい世界だなぁ」
男「俺も一度は都に住むために風の刃を目指した身だが、今はこの北の無法地帯で生きていく方が楽で良いな。そうだ、大したお礼は出来ないが、これを持って行け」
男は干された肉を差し出した。
トゥール「いや、いいよいいよ。生きていくための稼ぎは間に合ってるんでね。貴重な話を聞けて良かった、次に北方向に来た時には一緒に飯でも食おうや」
男「粋な足運びもいたもんだな。都に行くことがあれば、お婆にありがとうと言っておいてくれ。それに弟におめでとうと」
トゥール「了解!!したらな!」
トゥールは振り返って走り出そうとした。
「助けてくれぇ!!!!」
寂れた村に叫び声が響き渡った。
男「妖魔だ、扉を閉めるぞ!!死にたくなきゃ中に入れ!」
男はトゥールに声をかけたが、トゥールは叫び声がした方へと駆け出した。
男は扉をバタンと閉めた。
叫び声がしたのはすぐ近くからだった。
小さな畑の上で獣のような妖魔が人を喰らっていた。
「助け、、、て、、」
叫び声をあげた男の首が食いちぎられた。
トゥール「都に近づき過ぎて久しく見ていなかったが、見たくない光景だな」
東の端の村出身のトゥールには人が妖魔にやられる姿は見慣れた光景だった。
獣の妖魔は男を喰らい尽くし、トゥールへと標的を変えた。
トゥールは転がっているクワを手にした。
トゥール「、、、かかって来い!!!」
「グァアア!!!」
獣はトゥールへと飛びついた。
しかしトゥールは鮮やかな身のこなしでその攻撃を交わし、すれ違い様にクワを獣へと叩きつけた。
妖魔の鮮やかな鮮血が飛び散る。
トゥール「、、、よし、、戦える!」
運動神経には自信があった。
こんな獣の妖魔一頭ならば倒す自信があった。
しかし、妖魔は一頭ではなかった。
「グァアア!!!」
後ろから更に二頭の妖魔が襲いくる。
トゥールは一頭の噛みつきを転がり避けたが、もう一頭の攻撃を避けることは出来ず、クワでその鋭い牙を防いだ。
トゥール「くっ、、、、」
そして後ろから先ほどの一頭が襲いくる。
その牙が肩に突き刺さった。
トゥール「いっ、、、たぁぁ!!!!」
その時、突風が吹いた。
瞬きをすると、獣達は木っ端微塵に切り刻まれていた。
ユラユラと揺れる衣服を纏う者が後ろに立っていた。
トゥール「、、、風の刃?」
その格好は噂に聞く風の刃の者の装いだった。
風の刃「この妖魔は狼型と呼ばれていて、戦闘訓練を受けていない者は首を食いちぎられて即死してしまうほどのスピードとパワーを持ち合わせている。三頭の狼型を相手にクワで生き延びるとは、貴様その戦術、どこのものだ?」
風の刃と思われる男は問いかけた。
トゥール「東の端の村出身のトゥールです。ただの足運びですわ。風の刃の方ですよね?助けてくれてありがとうございました。そこに倒れている方が瀕死状態なので、救助をお願いします!」
トゥールは叫び声をあげていた男を指差した。
首付近の肉が食いちぎられているが、まだ息はある様子だった。
風の刃「風の刃には妖魔を倒すという重要な役目がある。死にかけた人間を助けるという役目はない」
トゥール「でも、あなたは俺を助けてくれたじゃないですか」
風の刃「妖魔を倒しただけだ。いや、嘘だな。クワで三頭の狼型に相対する人間に興味があったと言っておこう」
トゥール「それは、、ありがとうございます。でも本当にその方は今にも死んでしまいそうなんです」
風の刃「そうだな。苦しかろう」
風の刃の男は眼にも止まらぬ刀捌きで、倒れ込む男の首を刎ねた。
血がピューピューと噴き出ている。
トゥール「!!!」
トゥールはクワを握りしめ、風の刃の男へと立ち向かった。
男はその場で立ち止まっているだけに見えた。
しかし、トゥールのクワは真っ二つ、いや、粉々に切り刻まれた。
トゥールは勢いそのままに男の顔を目掛けて蹴りを繰り出した。
男は驚いた表情をしながらも足払いをしながらトゥールの蹴りを避けた。
トゥールは軸足を払われ、身体が宙に浮いてしまう。
そのまま地面に叩きつけられ、噛みつかれた肩から多量に血が流れた。
風の刃「ふん、見込みがあるな。お前を推薦しておいてやる。仕事の途中だったんだろ?お互いに仕事を続行した方が良いな。妖魔の匂いがする」
風の刃の男は一瞬でその場から消えた。
トゥール「風の刃ってのは、、、とんでもねぇ奴等だな」
その強さよりも、その残忍さにトゥールはガッカリしていた。
トゥール「、、、ごめんよ」
トゥールは首のない死体から目を逸らし、荷物を背負った。
トゥール「確かに、時間を使い過ぎた。急がなきゃ」
血が滲む肩をおさえながら、トゥールは走り出した。
北方向には初めて訪れたトゥールだったが、その寂れ様に驚いた。
都から一つ隣の町ならば東も西も南も華やかな町が広がっているものである。
北の町へと辿り着いたトゥールは宛名の部分に書かれている小さな家の扉を叩いた。
トゥール「足運びです、お届け物になります」
出てきたのは柄の悪い若い男である。
男「、、、、」
男は汚れた手紙をぶんどり、その場で読み始めた。
そして、その男の目から大粒の涙が流れた。
男「、、、ありがとう」
トゥール「なんもなんも、仕事ですから~」
男「嘘をつくな、これはうちのお婆からだろ?今のお婆が小判を支払って仕事を依頼出来るような状況じゃないのは俺がよく分かっている。昔は夜の仕事で一攫千金を果たした身だったが今はただのお婆さんだ。いつ都から追い出されるかも分からない。うちは複雑でね、俺には弟がいるんだが親は幼い頃に妖魔にやられて、お婆が育ての親みたいなもんなのさ」
都には大金持ちしかいないと思っていたが、実はそうでもないらしい。
男「俺は北のこの無法地帯で生きていく術を持っているが、ひ弱な弟には難しかった。でもそんな弟が結婚するらしい、茶屋の娘をもらったらしく、これからは都に住めるんだそうだ。良かった、、、良かったよ」
トゥール「家族なのに、あなたは都には住めないのか?」
男「結婚をすれば、世帯から外れるのさ。この国は結婚に関してはシビアでね。風の刃の輩なんかは結婚する相手を決められていると聞くぞ。華々しく見える組織だが、崇められるのと引き換えに妖魔を倒すだけの人形になるみたいなもんだ。住む場所も結婚相手も自由時間も全て管理されるんだからな」
トゥール「そうなのか~、厳しい世界だなぁ」
男「俺も一度は都に住むために風の刃を目指した身だが、今はこの北の無法地帯で生きていく方が楽で良いな。そうだ、大したお礼は出来ないが、これを持って行け」
男は干された肉を差し出した。
トゥール「いや、いいよいいよ。生きていくための稼ぎは間に合ってるんでね。貴重な話を聞けて良かった、次に北方向に来た時には一緒に飯でも食おうや」
男「粋な足運びもいたもんだな。都に行くことがあれば、お婆にありがとうと言っておいてくれ。それに弟におめでとうと」
トゥール「了解!!したらな!」
トゥールは振り返って走り出そうとした。
「助けてくれぇ!!!!」
寂れた村に叫び声が響き渡った。
男「妖魔だ、扉を閉めるぞ!!死にたくなきゃ中に入れ!」
男はトゥールに声をかけたが、トゥールは叫び声がした方へと駆け出した。
男は扉をバタンと閉めた。
叫び声がしたのはすぐ近くからだった。
小さな畑の上で獣のような妖魔が人を喰らっていた。
「助け、、、て、、」
叫び声をあげた男の首が食いちぎられた。
トゥール「都に近づき過ぎて久しく見ていなかったが、見たくない光景だな」
東の端の村出身のトゥールには人が妖魔にやられる姿は見慣れた光景だった。
獣の妖魔は男を喰らい尽くし、トゥールへと標的を変えた。
トゥールは転がっているクワを手にした。
トゥール「、、、かかって来い!!!」
「グァアア!!!」
獣はトゥールへと飛びついた。
しかしトゥールは鮮やかな身のこなしでその攻撃を交わし、すれ違い様にクワを獣へと叩きつけた。
妖魔の鮮やかな鮮血が飛び散る。
トゥール「、、、よし、、戦える!」
運動神経には自信があった。
こんな獣の妖魔一頭ならば倒す自信があった。
しかし、妖魔は一頭ではなかった。
「グァアア!!!」
後ろから更に二頭の妖魔が襲いくる。
トゥールは一頭の噛みつきを転がり避けたが、もう一頭の攻撃を避けることは出来ず、クワでその鋭い牙を防いだ。
トゥール「くっ、、、、」
そして後ろから先ほどの一頭が襲いくる。
その牙が肩に突き刺さった。
トゥール「いっ、、、たぁぁ!!!!」
その時、突風が吹いた。
瞬きをすると、獣達は木っ端微塵に切り刻まれていた。
ユラユラと揺れる衣服を纏う者が後ろに立っていた。
トゥール「、、、風の刃?」
その格好は噂に聞く風の刃の者の装いだった。
風の刃「この妖魔は狼型と呼ばれていて、戦闘訓練を受けていない者は首を食いちぎられて即死してしまうほどのスピードとパワーを持ち合わせている。三頭の狼型を相手にクワで生き延びるとは、貴様その戦術、どこのものだ?」
風の刃と思われる男は問いかけた。
トゥール「東の端の村出身のトゥールです。ただの足運びですわ。風の刃の方ですよね?助けてくれてありがとうございました。そこに倒れている方が瀕死状態なので、救助をお願いします!」
トゥールは叫び声をあげていた男を指差した。
首付近の肉が食いちぎられているが、まだ息はある様子だった。
風の刃「風の刃には妖魔を倒すという重要な役目がある。死にかけた人間を助けるという役目はない」
トゥール「でも、あなたは俺を助けてくれたじゃないですか」
風の刃「妖魔を倒しただけだ。いや、嘘だな。クワで三頭の狼型に相対する人間に興味があったと言っておこう」
トゥール「それは、、ありがとうございます。でも本当にその方は今にも死んでしまいそうなんです」
風の刃「そうだな。苦しかろう」
風の刃の男は眼にも止まらぬ刀捌きで、倒れ込む男の首を刎ねた。
血がピューピューと噴き出ている。
トゥール「!!!」
トゥールはクワを握りしめ、風の刃の男へと立ち向かった。
男はその場で立ち止まっているだけに見えた。
しかし、トゥールのクワは真っ二つ、いや、粉々に切り刻まれた。
トゥールは勢いそのままに男の顔を目掛けて蹴りを繰り出した。
男は驚いた表情をしながらも足払いをしながらトゥールの蹴りを避けた。
トゥールは軸足を払われ、身体が宙に浮いてしまう。
そのまま地面に叩きつけられ、噛みつかれた肩から多量に血が流れた。
風の刃「ふん、見込みがあるな。お前を推薦しておいてやる。仕事の途中だったんだろ?お互いに仕事を続行した方が良いな。妖魔の匂いがする」
風の刃の男は一瞬でその場から消えた。
トゥール「風の刃ってのは、、、とんでもねぇ奴等だな」
その強さよりも、その残忍さにトゥールはガッカリしていた。
トゥール「、、、ごめんよ」
トゥールは首のない死体から目を逸らし、荷物を背負った。
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