上 下
131 / 229
分裂のトルコネ編

第131話 リリパイセンの授業

しおりを挟む
リリは空間に地図を広げながら、進むべき道を模索していた。

リリ「リキッドは正面突破をするつもりで動いてるんだろうけど、良い作戦だとは思えないんだよねぇ。だってグレイス城周辺には多くの生体反応がある、多分自我を失った化け物達だと思うんだ」

ダイス「それは得策じゃねぇな、うん。合流したいのは山々だけどさ」

ダイスがすぐに同調した。

モモ「リリパイセンのヘリなら敵の攻撃を受けないんじゃない?」

リリ「いや、敵に空を飛ぶ奴がいてもおかしくない。やっぱ空じゃなかったかぁ~じゃ済まないからね。グレイス領に入れば、陸にはウジャウジャと化け物がいるわけだから」

モモ「確かに、、、リスクが大きいというわけですね」

リリ「行くとすれば、、、こっちからだね」

グレイス領とフォールドーン領の境目にある大きな川、その上に架かる巨大な橋。

リリ「別に敢えて橋を渡る必要は無いけど、退避出来る状況を作っておいた方が今後のためになるはず。この橋を占拠しちゃおう、実際この橋にはまだ誰もいないようだしね」

ダイス「誰もいないなら、行くしかねぇじゃん!よし、行こう!!」

リリ「よし、決まりだね。じゃあ道中暇だろうし、創造魔術の真髄を教えてあげようか。二人とも運良く木と鉄っていう創造魔術を手にしているわけだし!」

モモ「マジっすか!!お願いします!!」

ダイス「よっしゃー!!!待ってました!!多分リリパイセンは俺の目指す戦闘スタイルの最終地点だと思うんだ!!」

モモとダイスは目をキラキラとさせてリリを見つめた。

リリ「うーん、それは少し違うかなぁ。私のは鉄と雷と油とその他色々な魔術を組み合わせて出来上がる複合魔術だから。主に鉄を使っているとはいえ、モモちゃんが私の魔法を使えるようになるには、軽く見積もっても20年はかかる。ダイス君は木だから、、、複合魔術には向いていないね」

ダイス「え!?リリさん、そんな複数の魔法を使えるの?」

リリ「そうだよ~、鉄の塊を作り上げるだけなら鉄魔法だけで良いけど、機械として動かすにはそれ以外にも魔法を使えるようにならなくちゃダメだからね。まぁ、とはいえほんの少し扱えるようになるだけで良いから、そんなにハードルは高くないけど。あと、ダイス君なら分かると思うけど、リアルに創造するためには、その創造する物の構造を熟知していなきゃダメなんだ」

ダイス「ほぉぉ、、、、なるほど。確かに、頭の中で細部まで組み立てられるものしか作ることが出来ないな。だからこそムー様の授業でヘイスレイブの樹海で過ごした日々は俺にとって重要な経験となったわけだ」

モモ「獣達も獰猛だったけど、あそこは何よりも草木が厄介だったからね、、、、ああ、思い出したくない!」

モモとダイスは当時の辛い日々を思い出し、震え出した。

リリ「流石はムーの指導を受けているだけあるね。ムーは創造魔術専門じゃないだろうけど、きっとよく言っていたと思うよ。オリジナリティを出しやがれってね」

ダイス「お!言ってた言ってた!!俺には猿知恵を搾り出せって言っていたなぁ」

リリ「ダイス君はさ、見た事あるもの以外作ったことある?」

ダイスはポカンとしていた。

ダイス「いやいや、リリパイセン~何言ってるんすか。細部まで分からなきゃ作ることが出来ないってさっき言ってたじゃないっすか。要するに、見たことがあるものしか作れないって事ですよね?実際俺も色々作ってみようと試したけど、鮮明に記憶にあるものしか作れなかったから、あ~見たことあるものしか作れないんだなと思っていました」

リリ「チッチッチ」

リリは得意げに人差し指を揺らしている。

リリ「勿体ないよ、お猿君。木属性はね、複合魔術に向かない代わりに、創造魔術の中では最も自由度の高い魔法なんだ。作りたいモノは何でも作れるよ」

ダイス「え!?そうなの!?」

ダイスはニヤニヤが止まらない様子である。

リリ「鉄は単品じゃ自由度が低いんだ、でもね、モモちゃんの硬化魔術にはピッタリ!!形を保つという点においては鉄以上に優秀な魔術はないよ」

モモ「そうなんですか!?」

モモはヨダレを垂らしている。

リリ「本当二人とも、運命的な適正魔法だよね。その適正はムーが見たんだよね?きっと」

モモ「そうです!鉄って言われた時はがっかりしましたけど、、、」

リリ「とりあえずヘリに乗って、授業を開始しまーす」

リリは一瞬でヘリコプターを作り上げ、起動した。

ダイス「数種類の魔術を構築して、尚且つこの速度でモノを作り上げる。。。。俺は決して複雑じゃないバリスタを作るだけで数分はかかるってのに」

創造魔術を使うダイスにとって、リリの魔法は信じられない境地に達していることが理解できた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【文庫化】室長を懲らしめようとしたら、純愛になりました。

ひなの琴莉
恋愛
同棲中の恋人が親友と浮気をして、子供を作っちゃいました。結婚のために貯金していたのに、出産費用に当てると言われお金がないヒロイン。札幌で暮らしているのが辛すぎて、大好きな仕事をやめて、心機一転北海道から東京へやってきた。お金がないので、とりあえずボロボロの安いアパートに住んだが、隣からは甘い声が夜な夜な聞こえてくる。しかも、いつも違う女の人が出てきて、取っ替え引っ替えしているらしい……。チャンスがあれば、お隣さんを懲らしめたい!!! お隣さんは、なんと……! 浮気が絶対に許せないちょっぴり暴走気味のヒロインと、真面目な上司の不器用な恋模様をお楽しみください。 書籍化していただき、本当にありがとうございました。 応援してくださった皆様のおかげです。 この感謝の気持ちを忘れずに、これからも精進してまいります。 2022/9/7 『室長を懲らしめようとしたら、純愛になりました。』がタイトルも新たになって、 文庫化されました。 ★御曹司を懲らしめようとしたら、純愛になりました。 文庫には、番外編が付いているので ぜひ買って読んで頂けるとすごく嬉しいです。

婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生
恋愛
婚約破棄されまして(笑)の主人公以外の視点での話。 主人公の見えない所での話になりますよ。多分。 基本的には本編に絡む、過去の話や裏側等を書いていこうと思ってます。 後は……後はノリで、ポロッと何か裏話とか何か書いちゃうかも( ´艸`)

我関せずな白蛇の亜人が恋に落ちる

伊織愁
恋愛
15歳の成人の儀式で、アンガスの手の甲に番の刻印が刻まれた。 15歳までに番に出会っていれば、儀式の時に現れるらしい。 期待もせず、我関せずな態度で儀式に参加していたが、アンガスの番は幼馴染のローラだった。 今まで友達以上に思ったことがない相手で、アンガスは困惑するばかりだった。 しかも、アンガスは15歳まで異性と触れ合って来なかった為、ローラにどう接すればいいか分からずにいた。 一方、ローラの方も思ってもいない相手で、同じように困惑していた。 周囲が盛り上がり、アンガスが周囲から置いてきぼりになっている中、ローラのいとこが番の話を聞きつけ乗り込んで来た。 自身の気持ちを自覚する前に、物事がもの凄い速さで進んで行く。 周囲に流されまいと足掻くアンガスだが……。 

妹に寝取られたら……婚約破棄、じゃなくて復讐!!!

tartan321
恋愛
いいえ、私は全て知っていますので……。 許しませんよ????????

ごめんなさい、全部聞こえてます! ~ 私を嫌う婚約者が『魔法の鏡』に恋愛相談をしていました

秦朱音@アルファポリス文庫より書籍発売中
恋愛
「鏡よ鏡、真実を教えてくれ。好いてもない相手と結婚させられたら、人は一体どうなってしまうのだろうか……」 『魔法の鏡』に向かって話しかけているのは、辺境伯ユラン・ジークリッド。 ユランが最愛の婚約者に逃げられて致し方なく私と婚約したのは重々承知だけど、私のことを「好いてもない相手」呼ばわりだなんて酷すぎる。 しかも貴方が恋愛相談しているその『魔法の鏡』。 裏で喋ってるの、私ですからーっ! *他サイトに投稿したものを改稿 *長編化するか迷ってますが、とりあえず短編でお楽しみください

ここは会社なので求愛禁止です!

森本イチカ
恋愛
中途採用で入社してきたのは喫茶店で女性に水をぶっかけられてたあの男性だった。 瞬く間に唇を奪われて!? ☆.・*・.☆.・*・.☆.・*・.☆ 真面目に仕事をしてたらいつの間にか三十歳。 恋の仕方を忘れました。 水野真紀 × 好きになると一途で重すぎる男。 俺、水野さんが好きです。 松田大雅 ☆.・*・.☆.・*・.☆.・*・.☆

もう一度人生をやり直し中のおばあちゃんの恋の物語

ももね いちご
恋愛
95歳で幸せに亡くなった木村多恵子は、天国に行く途中にブラックホールに巻き込まれて、小学生に転生しました。懐かしい人々と、多恵子のちょっと甘くて切ないラブストーリー 木村多恵子 95歳で亡くなり、もう一度人生を謳歌中 佐々木次郎丸 多恵子の前世の旦那で、幼馴染 花田美津子 多恵子の親友。次郎丸が好きで好きでたまらない

地味すぎる私は妹に婚約者を取られましたが、穏やかに過ごせるのでむしろ好都合でした

茜カナコ
恋愛
地味な令嬢が婚約破棄されたけれど、自分に合う男性と恋に落ちて幸せになる話。

処理中です...