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分裂のトルコネ編

第119話 怪物の役目

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リキッドから、ほんの少しの殺気を感じた。

ツグルは動くことが出来なかった。

リキッド「マイケルは成果を提出する義務があった、無の神に認められるためにな。そのためにあの黒の手を作った。触れることで自我失を起こす恐ろしい技だ。そして六大陸を蹂躙し、その中で最も優秀な六人に闇の魔力を集中させて、グレイス城を襲わせた。だがこれもマイケルの策略だった、セレスティア様はその術を解く術を持っていた、俺たち六人がグレイス城を落とすところまではセレスティア様も知っていたということだ。そしてその後俺たち六人を救い出し、無の神と闘うための駒とする予定だった。誤算だったのは、、、、」

リキッドは躊躇いながら言った。

リキッド「指輪だ、あの指輪は他の科学者が作った恐ろしい魔器具で、闇の魔力を上限なく溜め込むことが出来るらしい。声を失ったセレスティア様では聖属性の魔力を解放することが出来ず、指輪を破壊することが出来なかった。そうして俺たちは、無の神の囚われの身となったわけだ」

ツグル「無の神の行動を逆手に取ったつもりだったが、出来なかったんだな」

リキッド「無の神も馬鹿ではない、マイケルの裏切りに気付き、殺した。はずだった。だがマイケルは今も生きている、その存在は無の神にバレていない」

ツグル「何となくだけど、分かった。。。」

正直なことを言えば、責任の重さに今にも潰れてしまいそうだった。

リキッド「遠回りになったが、一つ目の助けるという意味は、お前の生命を救うためだ。そして二つ目が、マイケルが開発した黒の手の唯一の例外ということだ」

ツグル「どういうことだ?」

リキッド「黒の手は触れたものを自我失させる強力な魔法だ。あの魔法がある限り誰も無の神に近づく事が出来ない。そういう意味で、お前だけは唯一、無の神に使役される事が決してないということだ」

ツグル「確かに、一度その黒の手に捕われたが、何も起こらなかった」

ツグルはトルコネでの出来事を思い出した。

リキッド「そうだろうな、そしてさっき託されたと言ったが、もっと具体的な意味も含まれている」

ツグル「というと?」

リキッド「無の神にはあらゆる打撃、魔法、要するに全ての攻撃は通用しない。唯一通用するのがセリアの聖属性の魔法と、怪物であるお前の攻撃のみだ、闇属性に侵食されているお前の攻撃は無の神そのもの、無の神も自分を傷つける事は出来る」

ツグル「そうだったのか、、、、」

リキッド「世界を救うなんて大きな意味合いもあるが、そもそも無の神と対等に戦えるのはお前とセリアだけなんだ」

ツグル「待て、そもそも無の神の目的は何だ?無敵なのに何を悠長に構えてるんだ?」

リキッド「無の神は果てしない時を生きている。マイケルが言うには、彼は死者を蘇らせることに全てを懸けているらしい。どんな魔法を使っても、それだけは不可能だったという。それを可能にするのが聖属性だと考えている、しかし聖属性が蓄積された、成熟した身体でなければ意味がない。今のセリアでは死者を蘇らせるほどの力はないんだ。いや、そもそも聖属性も万能ではない、完全に死を迎えてしまった者を生き返らせることなんて出来ないとのことだ」

ツグル「どうして父はそんなことまで知っているんだ?」

リキッド「セレスティア様から聞いたらしい」

ツグル「なるほどな」

リキッド「無の神は、もはや人間に興味がないんだ。全ては娯楽の一種でしかない。成熟したセリアの身体を手にし、かつての友人達を蘇らせようと試みたい。それだけが彼が存在するためのモチベーションになっている。だからあと十年間は、セリアだけは殺されることはないだろう。実験をされて精神が崩壊することはあるだろうが、、、」

ツグル「それじゃダメだ、今すぐにセリアを救わなきゃ」

リキッド「よし、分かってきたなぁ。だが今すぐに無の神と戦うのは無理だと考える。弱りきっている無の神を相手にしても、お前とセリアの力では勝てない」

ツグル「じゃあ何のためにグレイス城に向かうんだよ」

リキッド「無の神は能力の低下に気付き、セリアの成熟を待つ十年間を過ごすための、新たな身体を手に入れようとしている。それが炎のマントことカナメルだ」

ツグル「そうなのか?だがカナメルは強い、あいつを捕らえることは不可能だろう」

リキッド「捕らえられたらしい、そこまでが俺の知る事実だ。目覚めてからは、マイケルとの会話が不可能になった」

ツグル「あのカナメルが、捕らえられた?、、、じゃあカナメルを救いに行くんだな?」

リキッド「カナメルは強いんだろ?そして赤のオーラを持っている。もしカナメルが無の神になったら、お前とセリアの勝ち目はなくなる。少しでも勝率を上げるため、お前が強くなる時間を作るため」

リキッドは遠慮なく、言葉を続けた。

リキッド「俺は、カナメルとやらを殺しに行く」

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