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ヘイスレイブ奪還編

第111話 狙われたカナメル

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視界がスローモーションになる。

割れた防護膜の先に強敵がいる。

倒すなら今しかない、瞬雷を繰り返していたのはホーリーの分身を倒す為だけではない。

限界まで身体に雷を溜め込むためであった。

存分に身体に溜めた雷を全て放出し、このまま四天王二人を焼き切る!!

マツは緑のオーラを纏い、限界に達している筋肉に鞭を打つ。

マツ「私が、討ち取る!!!!!!!」

マツの矛先がオダルジョーを捉える直前。

マツの身体から多数の腕が生え、絡み付き、身体の自由が奪われた。

マツ「どうなっているの!?、、」

よく見ると身体が湿っている。

ホーリーの分身を粉砕する度に浴びていた水分が、肉体を宿し、その分身達の腕がマツの身体を止めていた。

そしてその腕の一つがマツの目へと伸びる。

何も見えなくなったのと同時に、腹部に強烈な痛みを感じた。

マツ「ぐぁはぁ!!、、、、」

口から血が溢れ出る。

視界が広がった時には、マツは鉄の支柱に身体を貫かれていた。
溜めていた雷は全てその支柱を伝って床へと流された。

オダルジョー「惜しかったなぁ」

オダルジョーは余裕の笑みを浮かべている。

マツ「、、、まだ、、まだ!、、」

緑のオーラはまだ消えていない。

マツは鉄の支柱を蹴り上げる。
支柱はパキン!と真っ二つに折れた。

マツは槍をオダルジョーへと向けた。
しかし、オダルジョーの魔法により槍は弾かれ、身体は後方へと吹き飛ばされてしまう。

身体を酷使し過ぎた、瞬雷が使えない。

マツは腹部に刺さっている鉄の支柱を引き抜き、オダルジョーへと投げつけた。

重い支柱が物凄い速度でオダルジョーへと向かう。

しかし支柱はオダルジョーの元へ辿り着く前にホーリーによって微塵切りにされてしまった。

ホーリー「あっぱれ、しかし死にたくなければ、もう動かない方が良い。腹部の支柱を引き抜いたのはミステイクだ、出血が加速してしまう、だがしかしその根性は見事、私は貴方を称賛する」

身体が動かない。

マツは腹部を抑えながら、床にへばりつくことしか出来なかった。

オダルジョー「十分だね、あとはカナメルが帰って来れば」

空間に暗闇が溢れ、オガリョとカナメルが姿をあらわした。

オダルジョー「噂をすれば、だね」

オガリョはすぐにアンチェアの拘束を解き、跪いた。

オガリョ「すまない、、、俺は、、なんてことを、、」

オダルジョー「あれ、君生きてるの?カナメルに殺される予定だったんだけど」

オガリョ「お前達は最初から俺を利用していたってわけか」

オガリョは歯を食いしばり、オダルジョーを睨みつけた。

ホーリー「お互いにメリットがあった、Win-Winの関係だったのでは?いや、都合の良い関係と言うべきか、都合の良い関係って響き、、、、エロい」

オガリョ「くそ、、、俺は、、愚か者だな、、」

オガリョは床に頭を打ち付け、涙を流している。

倒れ込むマツの姿を見て、カナメルの目の色が変わった。

カナメル「ナミチュとドラはどこにいる?」

マツ「二人は、、無事です!!、、でもドラが竜化してしまい、、、今は多分、ナオティッシモ先生のところへ、ナミチュも瀕死の状態でしたが、、、、」

カナメル「分かった、もう喋るな。んで、その様子だと、お前達は俺に用があるように見えるが?」

オダルジョーがニヤリと笑った。

オダルジョー「流石の状況判断能力だね。そう、カナメル。君に用がある」

カナメル「手短に頼む」

カナメルはマツの状態を確認した。

オダルジョー「私達はオガリョを利用してヘイスレイブを掌握しに来た、でも途中で状況が変わった。赤のオーラの発現が確認されて、無の神の新たな身体として君が選ばれた。どう、手短でしょ?」

カナメル「なるほど、じゃあ俺がお前達と一緒に魔の巣窟に行けば、お前達もここからいなくなるんだな?」

オダルジョー「うん、別にそれでも良いよ。ヘイスレイブ王国なんて、無の神の準備が整えば簡単に無くなってしまうんだし。それに今ここで私達が退かなければ、君は私達と戦うんでしょ?それは結構面倒くさいし」

ホーリー「部下と新王を思っての決断か、カナメルって意外と熱い男だよね。いや、決して変な意味ではない。勘違いはやめてほしい、いや、でもここで訂正してしまうと逆に変な風に思われるかもしれないが」

カナメルはアンチェアに向けて声をかけた。

カナメル「アンチェア、オガリョの処罰は任せる。マツの治療を最優先に頼む」

アンチェアは衰弱しきっているようだが、静かに頷いた。

カナメル「じゃあさっさと行こうか」

オダルジョー「話が早くて助かるよ」

オダルジョーが怪しげな石をかざすと、空間に大きな穴が出現した。

オダルジョー「これで真っ直ぐグレイス城まで行けるってわけ、長旅なんかさせないよ。大切なお客様なんだから」

カナメル「はいはい、どーもです」

カナメルは足早に穴の中へと入っていく。

マツ「ダメです!!カナメルさん!!!戻ってきてください、私はまだ戦えます!!、、、、私なら大丈夫ですから、一緒に戦いましょう!、、ごほっ、、、」

マツは吐血しながら叫んだ。

カナメル「マツ、アンチェアを頼んだぞ。あーあと、ナミチュとドラのことも頼む」

マツ「カナメルさん!!!!!」

カナメルはオダルジョーとホーリーと共に穴の中へと消えた。

穴は閉じ、オガリョの啜り泣きが響き渡った。

マツは瞼が重くなり、そのまま意識を失った。
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