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ヘイスレイブ奪還編

第104話 私、エリートですから

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ナミチュ「風発!!」

ホーリーの大鎌を避けるために風の爆発を起こし、後ろへと飛び退く。

しかしホーリーはペチャペチャと足音をたてながら素早い追撃を繰り出す。

ナミチュ「水で地面との摩擦を低減することで速さを手に入れているようね、それなら」

ナミチュは大きな藁箒でサッと床を掃いた。

ナミチュ「ライトニングカーペット!!」

前方広範囲の床に電撃が走る。

危険を察知したホーリーは高く跳び、そのままナミチュを目掛けて降下してくる。
その目は血走り、口角は上がっていた。

ナミチュ「そんな簡単に的になってはダメじゃないかしら?」

ホーリーを取り囲むように赤い魔法陣が出現する。

ホーリー「これは、、、カナメルの!!」

ナミチュ「ええ、カナメルさん直伝、設置型炎系魔法陣」

全ての魔法陣から火柱が上がり、ホーリーは四方八方からの炎撃に襲われる。

ナミチュ「炎を鎮火するために得意の水魔法を使うでしょうね」

ナミチュの言葉通り、ホーリーは水の球体の中にいた。

ナミチュ「残念ながら、チェックメイトですの」

先程のライトニングカーペットが一箇所に集まり、大きな槍の形へと変形していく。

ナミチュ「雷系A級魔法、グングニール」

大きな槍は高速回転をしながらホーリーの水球を貫いた。

ホーリー「あぁぁぁああ!!!!!!」

真っ二つになったホーリーが空から落ちてくる。

しかし、地面につく前にホーリーの身体は薄赤い水となって床に広がった。

ナミチュ「、、、、流石、元四天王ですわね」

ホーリーは四天王の椅子に腰掛けていた。

ナミチュ「水を血と混ぜ、新たな個体を作り出す。並大抵の魔術師では成しえない高等魔術ですわね」

ホーリーはゆっくりと立ち上がった。

ホーリー「あなたが只者ではないことは分かっていました。だから、まずは様子見をする必要があったのです」

ナミチュ「様子見の結果をお聞かせ願おうかしら?」

ホーリー「やはり貴方は只者ではない。あのカナメルが副官に任命するだけの実力がある」

オダルジョーは椅子に座ったまま、ニヤリと笑った。

オダルジョー「カナメルってさ、心の中では誰一人として信頼していないような男なんだよ。そんな彼が副官をつけると言い出した時は正直驚いた。でも今見て確信した、貴方は四天王と大差ない実力がある」

ナミチュ「あら、それはとても光栄ですわね、でも一つだけ訂正させて頂いてもよろしくて?」

ナミチュは藁箒で床を掃きながら、オダルジョーへと言葉をかける。

ナミチュ「カナメルさんはね、人を信頼しているからこそ、自分を貫くことが出来るんですよ」

オダルジョー「ふーん、私には分からない感情だね」

ナミチュ「そんなことより、もう私の攻撃準備は整いましたが、仕掛けてもよろしくて?」

ホーリー「いつの間に」

ナミチュが先程掃いた床を起点に岩の壁が姿をあらわし、空間を分断する。

ホーリー「逃げる気ですか?」

ホーリーが岩を切り裂こうと前へ出た。

オダルジョー「いや、違う」

すると、岩に大きな青い魔法陣が出現し、そこから滝のように水が溢れ出す。

オガリョ「おい!!なんだよこれは!!」

岩の向こう側はあっという間に水没してしまった。

ナミチュ「窒息死なんてそんな甘い死に方させませんよ。新王を殺してしまう可能性もありますが、致し方ないですよね?」

ナミチュは岩の壁目掛けてライトニングカーペットを放った。

バチバチと音を立て、水の中に強烈な電撃が走る。

ナミチュ「チェックメイトです」

ナミチュは藁箒に腰掛け、風術で身体ごと宙へと浮かせた。

岩がゴロゴロと崩れると、大量の水が流れ込み、扉から外へと流れ出た。

しかし、玉座のあたりを薄い膜のようなものが包み込み、オダルジョー、ホーリー、オガリョ、アンチェアは無傷の状態でその場にいた。

ナミチュ「これもダメでしたか」

オダルジョー「悪くないけどね、魔法のバリエーションなら私の方が上なんじゃないかな」

ナミチュ「それは木属性か何かですか?」

オダルジョー「ご名答。水も電気も通さない、ゴムの木で創造した防護膜」

ナミチュ「覚えておきますね。でもこれで終わりだと思ったら大間違いですわよ」

転がっている岩がガチャガチャと組み合わさり、岩の巨人へと姿を変えた。
流れ出す水もひとつに集まり、水の巨人へと姿を変える。

ナミチュ「変形型召喚魔法、デクノボウとアメボウズですわ」

ホーリー「立て続けに高度な魔術の無詠唱発動、久々に殺しがいがありそうです、、うふ、、うう、うふふふふうっ、、苦しい、、、胸が、、、」

オガリョ「おい!!大丈夫か!?敵の攻撃か!?」

ホーリー「違います、、ドキドキで、、苦しい!!!」

オガリョ「なんなんだあんたは」

オダルジョー「水龍召喚があるからスカポンを椅子から降ろすことは出来ないだろうけど、五つ目の席があったとしたら間違いなく君が選ばれていただろうね」

ナミチュは髪をかき上げ、見下すようにオダルジョーを見た。

ナミチュ「ええ、そうでしょうね。あなた方を椅子から引きずり降ろすのも時間の問題でしたのよ。だって私、エリートですから」

オダルジョー「その生意気さ、カナメルそっくりだよ」

オダルジョーはニヤリと笑い、立ち上がった。
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