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フォールドーン帝国編
第82話 サチヨの決意
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トゥール「痛、、たたた、、、」
マスターリョウを助けるべく飛び降りたものの、魔力切れにより風迅速を使うことが出来ず、そのまま落下した。
そしてその衝撃で気を失っていた。
爆発に巻き込まれなかったのはマスターリョウが咄嗟の判断でトゥールを投げ飛ばしたからである。
重力に逆らうことなく落ちたトゥールだったが、マスターリョウの機転によりコンクリートの地面ではなく、露店がクッションとなったため助かった。
トゥール「助かった、とはいえだろ、痛っ!」
ナレーションにツッコミを入れながら、恐らく折れている肋骨を摩る。
さて、これからどうしたものか。。。
立ち上がろうとした時、一人の女性が手を差し伸べた。
「君が東洋の剣士だね」
トゥール「君は?」
サチヨ「フォールドーン帝国大将、サチヨです」
トゥール「、、、、戦う気はなさそうだな」
サチヨは微笑んだ。
サチヨ「そうね、、、この戦、帝国の負けよ」
トゥールはマスターリョウの言葉を思い出す。
マスターリョウとサチヨはゼウスの王としての在り方に疑問を感じていた。
トゥール「正義の立ち位置なんてものは、ほんの少しのキッカケでガラリと変わる。今の君の正義は、俺とはぶつからないと判断しても良いんだろう?」
トゥールはサチヨの手を取り、さっと立ち上がった。
トゥール「痛ってぇ、、、、」
脇腹を抑えるトゥール。
サチヨ「マスターリョウと戦ってその程度の怪我なら大したものだよ」
そう言って、サチヨはトゥールに肩を貸した。
トゥール「お、サンキュー。初対面なのにめちゃめちゃ優しいやんけ」
サチヨ「今まで敵だった反乱軍が帝国内の人々を避難させているんだ、推測だけど反乱軍は君の味方なんでしょ?それなのに帝国の大将である私が君に手を差し伸べないわけにはいかないでしょ?」
サチヨはニッコリと笑う。
こんなに輝かしい笑顔が出来る人間はそういないとトゥールは思った。
その時、ふと一人の女性の笑顔が浮かぶ。
口元しか見えないが、右下のホクロがとても印象的だ。
サチヨ「今の私の正義はね、怪我人及び逃げ遅れた住人を避難させることなの。ゼウっちゃんが帝国内に神の裁きを放った瞬間、自分の正義を改めたよ」
サチヨは高く聳え立つゴッドタワーを見上げた。
トゥール「神の裁きを放ったのか!?皆無事だろうか。。。戦況はどうなってるんだ?」
サチヨ「ゼウっちゃんが何者かと戦って、北ゲートの方に飛ばされるのを見たよ。流石にあの高さから飛ばされたら即死だろうけどね。不安要素があるんだ」
トゥール「不安要素?」
トゥールの頭には無の神の姿がよぎった。
サチヨ「謎の老人がね、ゼウっちゃんと密会しているのを何度も見かけているんだ。再生の女神がどうのこうのとか怪しい話をしていて、、、そもそもゼウっちゃんが客人を招き入れること自体、一度も無かったんだよ。再生の女神はどんな傷も癒せると聞くし、もしかしたら、、、」
トゥール「無の神だな」
サチヨ「無の神?」
トゥール「国なんてレベルじゃない、この大陸を我が物にしようとしている奴だ。俺は奴を追って十年になる。手を組んでいるとしたら、ゼウスはまだ生かされる可能性がある」
サチヨの眉間に皺がよる。
サチヨ「私も加勢すべきだよね」
サチヨの身体が震えているように見えた。
トゥール「サチヨさんの正義は、民間人の救助でしょ?そっちを優先した方が良いさ。もし途中で倒れている俺の仲間がいたら、よろしく頼むよ。俺はゼウスを追って北ゲートへ行ってみる」
トゥールはサチヨの肩から手を避け、気張って真っ直ぐに歩き出す。
サチヨ「ちょっと待って!ゼウっちゃんと戦うつもりなら、そんな姿じゃ勝ち目なんてないよ!」
トゥール「ちょっと待って、さっきから普通に聞いてたけど、ゼウっちゃんってゼウスのこと?」
サチヨ「そうだけど」
トゥール「ゼウスってそんな親しみやすい相手なのか?」
サチヨ「いや、親しみづらいから皆に親しまれるように私が勝手に呼んでるだけ」
トゥール「、、、、いや、センスよ。。」
サチヨはクスクスと笑っている。
サチヨ「そんなことより!!腕出して」
トゥールは言われるがままに腕を差し出す。
すると、サチヨは何やら怪しい液体の入った注射器でトゥールの腕を刺し始めた。
トゥール「おっと、、、、あの~説明が欲しいです」
サチヨ「あ、これはね。魔力補強剤だよ。君もう魔力無いでしょ?これを投入すれば、多少だけども魔力が回復するんだ」
トゥール「説明してから打ってよね!!」
サチヨ「ごめんって!!そういえば、君名前は?」
トゥール「トゥールと申します」
サチヨ「そっか、トゥール君。この国を救ってくれて、ありがとう。マスターリョウの分もお礼を言います」
トゥール「いやいや、ゼウスを倒したのは俺じゃないし、マスターリョウは、、、、俺がというか、まぁ俺が殺してしまったとも言えるし。なんて言うか、、、」
サチヨ「良いんだよ、マスターリョウは満足して死んでいったと思う。なんてたって死に際のメッセージに絵文字が入っていたんだから」
ケラケラとサチヨは笑っている。
しかしその笑顔はどこか悲しそうである。
サチヨ「またどこかで会おう!!絶対だよ」
トゥール「なんか色々と世話になった、ありがとう!!またどこかで!」
トゥールは北ゲートへ走り出した。
マスターリョウを助けるべく飛び降りたものの、魔力切れにより風迅速を使うことが出来ず、そのまま落下した。
そしてその衝撃で気を失っていた。
爆発に巻き込まれなかったのはマスターリョウが咄嗟の判断でトゥールを投げ飛ばしたからである。
重力に逆らうことなく落ちたトゥールだったが、マスターリョウの機転によりコンクリートの地面ではなく、露店がクッションとなったため助かった。
トゥール「助かった、とはいえだろ、痛っ!」
ナレーションにツッコミを入れながら、恐らく折れている肋骨を摩る。
さて、これからどうしたものか。。。
立ち上がろうとした時、一人の女性が手を差し伸べた。
「君が東洋の剣士だね」
トゥール「君は?」
サチヨ「フォールドーン帝国大将、サチヨです」
トゥール「、、、、戦う気はなさそうだな」
サチヨは微笑んだ。
サチヨ「そうね、、、この戦、帝国の負けよ」
トゥールはマスターリョウの言葉を思い出す。
マスターリョウとサチヨはゼウスの王としての在り方に疑問を感じていた。
トゥール「正義の立ち位置なんてものは、ほんの少しのキッカケでガラリと変わる。今の君の正義は、俺とはぶつからないと判断しても良いんだろう?」
トゥールはサチヨの手を取り、さっと立ち上がった。
トゥール「痛ってぇ、、、、」
脇腹を抑えるトゥール。
サチヨ「マスターリョウと戦ってその程度の怪我なら大したものだよ」
そう言って、サチヨはトゥールに肩を貸した。
トゥール「お、サンキュー。初対面なのにめちゃめちゃ優しいやんけ」
サチヨ「今まで敵だった反乱軍が帝国内の人々を避難させているんだ、推測だけど反乱軍は君の味方なんでしょ?それなのに帝国の大将である私が君に手を差し伸べないわけにはいかないでしょ?」
サチヨはニッコリと笑う。
こんなに輝かしい笑顔が出来る人間はそういないとトゥールは思った。
その時、ふと一人の女性の笑顔が浮かぶ。
口元しか見えないが、右下のホクロがとても印象的だ。
サチヨ「今の私の正義はね、怪我人及び逃げ遅れた住人を避難させることなの。ゼウっちゃんが帝国内に神の裁きを放った瞬間、自分の正義を改めたよ」
サチヨは高く聳え立つゴッドタワーを見上げた。
トゥール「神の裁きを放ったのか!?皆無事だろうか。。。戦況はどうなってるんだ?」
サチヨ「ゼウっちゃんが何者かと戦って、北ゲートの方に飛ばされるのを見たよ。流石にあの高さから飛ばされたら即死だろうけどね。不安要素があるんだ」
トゥール「不安要素?」
トゥールの頭には無の神の姿がよぎった。
サチヨ「謎の老人がね、ゼウっちゃんと密会しているのを何度も見かけているんだ。再生の女神がどうのこうのとか怪しい話をしていて、、、そもそもゼウっちゃんが客人を招き入れること自体、一度も無かったんだよ。再生の女神はどんな傷も癒せると聞くし、もしかしたら、、、」
トゥール「無の神だな」
サチヨ「無の神?」
トゥール「国なんてレベルじゃない、この大陸を我が物にしようとしている奴だ。俺は奴を追って十年になる。手を組んでいるとしたら、ゼウスはまだ生かされる可能性がある」
サチヨの眉間に皺がよる。
サチヨ「私も加勢すべきだよね」
サチヨの身体が震えているように見えた。
トゥール「サチヨさんの正義は、民間人の救助でしょ?そっちを優先した方が良いさ。もし途中で倒れている俺の仲間がいたら、よろしく頼むよ。俺はゼウスを追って北ゲートへ行ってみる」
トゥールはサチヨの肩から手を避け、気張って真っ直ぐに歩き出す。
サチヨ「ちょっと待って!ゼウっちゃんと戦うつもりなら、そんな姿じゃ勝ち目なんてないよ!」
トゥール「ちょっと待って、さっきから普通に聞いてたけど、ゼウっちゃんってゼウスのこと?」
サチヨ「そうだけど」
トゥール「ゼウスってそんな親しみやすい相手なのか?」
サチヨ「いや、親しみづらいから皆に親しまれるように私が勝手に呼んでるだけ」
トゥール「、、、、いや、センスよ。。」
サチヨはクスクスと笑っている。
サチヨ「そんなことより!!腕出して」
トゥールは言われるがままに腕を差し出す。
すると、サチヨは何やら怪しい液体の入った注射器でトゥールの腕を刺し始めた。
トゥール「おっと、、、、あの~説明が欲しいです」
サチヨ「あ、これはね。魔力補強剤だよ。君もう魔力無いでしょ?これを投入すれば、多少だけども魔力が回復するんだ」
トゥール「説明してから打ってよね!!」
サチヨ「ごめんって!!そういえば、君名前は?」
トゥール「トゥールと申します」
サチヨ「そっか、トゥール君。この国を救ってくれて、ありがとう。マスターリョウの分もお礼を言います」
トゥール「いやいや、ゼウスを倒したのは俺じゃないし、マスターリョウは、、、、俺がというか、まぁ俺が殺してしまったとも言えるし。なんて言うか、、、」
サチヨ「良いんだよ、マスターリョウは満足して死んでいったと思う。なんてたって死に際のメッセージに絵文字が入っていたんだから」
ケラケラとサチヨは笑っている。
しかしその笑顔はどこか悲しそうである。
サチヨ「またどこかで会おう!!絶対だよ」
トゥール「なんか色々と世話になった、ありがとう!!またどこかで!」
トゥールは北ゲートへ走り出した。
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