上 下
81 / 229
フォールドーン帝国編

第81話 赤のオーラ

しおりを挟む
ここで死ぬわけにはいかない。

カナメルは目を開けた。

太陽が煌々とカナメルを照らしつける。

まだ俺にはやるべきことがある、、、、

カナメルは立ち上がった。

足元に奇妙な形をした短銃が転がっているのを発見した。
銃身にはアンチマジックと表記されている。



、、、、、、、




この銃には見覚えがある。

マスターリョウが撃った魔法封じの銃と同じ形状をしていた。

先端には針が一本仕込まれてあることが確認出来る。

カナメル「無駄遣いはしないさ、いつかゼウスに使う為に残しておいたんだろ?」

マスターリョウは魔力封じの短銃を二丁持っていたということだ。

もしカナメルを仕留めるつもりだったのならば、腕を切り落とした後にもう一度この銃を撃てばカナメルに勝ち目はなかった。

そもそも最初から声をかけずに首や頭に撃っていれば、、、、

カナメルはアンチマジックを静かに懐にしまった。

カナメル「ゴホっ、、、、」

多量の血液が口から流れる。

何故立っていられるのか、自分でも不思議である。
もしこの活力に訳があるとすれば、それは心の奥深くに潜む、復讐心と野望のおかげである。

カナメルはヨタヨタと階段を目指して歩き出した。




長い螺旋階段をグルグルと登り、一際目立つ機械室の扉に手をかける。










ヘイスレイブの四天王となり、秘密裏に入手したゴッドタワー内部の地図は全て暗記済みである。
カナメルは何度も何度もイメージトレーニングを重ねた。

全てはこの部屋に入るためである。

カナメルはゆっくりと扉を開けた。


ピッピ、、ピッピ、、、、


壮大な電子機器達がカナメルを出迎える。

ここは神の裁きのコアとなる動力室である。

広い部屋の真ん中には巨大なコアがギラギラと光り輝いていた。

ゼウスは更に数階上の玉座から、この部屋へ魔力を送り込み、一瞬で街を消し去る雷の大砲、神の裁きが放たれる。

大容量の魔力を凝縮し、何千里も先の街へ正確に撃ち放つこの機械はフォールドーンの科学力の凄まじさを物語っている。
しかし、何よりも凄いのはゼウスの魔力総量の多さである。

ゼウスには人並外れた魔力総量があり、魔力切れを起こしたことがないという伝説がある。

ゼウスの長所を存分に活かして作られた、この神の裁き。

この巨大な兵器が存在するだけで、その気になればいつでもお前の街を消し去れるということを知らしめているように思える。

カナメル「こんなものがあるから、、、こんなものがあるから!!!!!!!」

カナメルは怒りに身を任せ、右手をコアへと向ける。

しかし、マスターリョウとの戦いで全ての魔力を使い果たしたカナメルの右手は、虚しく震えているだけである。

カナメル「燃えろ、、、燃えろよ!!燃えろ!!!!!!!!!!!」

血を吐きながら叫び散らしても、何も起こらない。

ようやくここまで辿り着いた、何年も何年もこの忌まわしい兵器を破壊するために何度もイメージトレーニングをした。

しかし、この兵器を破壊するための炎は微塵も発現しない。

カナメル「、、、、、これが、、俺の最後なのか」

カナメルは膝をつき、手を下ろした。

頬を伝う涙は、静かにコンクリートを濡らしていく。

誰にもバレずに、静かに沁みていく。





見ているか?リナ





俺は何も、君に恩返しが出来なかったよ。




何も、何一つ、、、成し遂げられなかったよ。





それでもリナ、、、、




君の元へ行っても良いだろうか。




朦朧とする視界の中、ゆらゆらと揺れる赤いオーラが身体から溢れていることに気が付いた。




カナメル「これは、、、、」



本で読んだことがある、限界を超えた感情は色のついたオーラとなり様々な効果をもたらすことがある。

これは死ぬ前の幻覚なのか?

そうは思ったものの、身体中から魔力が溢れてくるのを感じてカナメルは立ち上がった。

魔力切れを起こしていたこの身体から、とんでもない量の魔力が溢れている。

それはカナメル自身ですら止めることが出来なかった。

止めどなく溢れ続ける魔力に、カナメルは望みを託す。

カナメル「、、、燃えろ」

小さく呟いた言葉が魔力に属性を付与し、一瞬にして部屋全体を炎が包む。

意図せずに身体中から炎が垂れ流れる。

視界は業火によって真っ赤になり、何も見えない。




数分間、勝手に地獄のような炎が渦を巻き、唖然とするカナメル。
しかし、自分の魔力であることは確かなため制御出来る筈だと考えた。

身体中に満ちている魔力を全て心臓に戻すイメージでゆっくりと深呼吸をした。

すると、炎の放出は収まり、メラメラと焼け焦げる広い部屋が露になった。
電子危機は跡形もなく黒くなり、中央のコアは溶けて無くなっていた。

数秒後、大きな爆発が起こり、部屋はガタガタと揺れ始める。

神の裁きが放たれる巨大な主砲が崩れ落ちていく。

カナメル「まだ俺を生かしてくれるんだろ?鳳凰」

巨大な魔法陣が出現し、神鳥が主人を助けるために馳せ参じた。

膨大な魔力を消費するSランク召喚魔法でさえ、全く魔力を消費している実感がない。

疑問は尽きないが、今はやるべきことをやるしかない。

鳳凰は熱線を放ち、崩れゆく壁に穴を開ける。

落下する瓦礫の隙間を縫うように飛び抜け、大空へと羽ばたいた。

この状態のままゼウスを消す。

カナメルは玉座の間を目指して上昇した。

すると


「ぐぁあぁああああ!!!!!!」


玉座の間がある場所から爆発音が鳴り、とんでもないエネルギー量の光線と共にゼウスが北ゲートの方向へと飛ばされていくのを確認した。

カナメル「誰がゼウスを?」

カナメルは鳳凰の背に乗ったまま、北ゲートへと向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

拾った子犬がケルベロスでした~実は古代魔法の使い手だった少年、本気出すとコワい(?)愛犬と楽しく暮らします~

荒井竜馬
ファンタジー
旧題: ケルベロスを拾った少年、パーティ追放されたけど実は絶滅した古代魔法の使い手だったので、愛犬と共に成り上がります。 ========================= <<<<第4回次世代ファンタジーカップ参加中>>>> 参加時325位 → 現在5位! 応援よろしくお願いします!(´▽`) =========================  S級パーティに所属していたソータは、ある日依頼最中に仲間に崖から突き落とされる。  ソータは基礎的な魔法しか使えないことを理由に、仲間に裏切られたのだった。  崖から落とされたソータが死を覚悟したとき、ソータは地獄を追放されたというケルベロスに偶然命を助けられる。  そして、どう見ても可愛らしい子犬しか見えない自称ケルベロスは、ソータの従魔になりたいと言い出すだけでなく、ソータが使っている魔法が古代魔であることに気づく。  今まで自分が規格外の古代魔法でパーティを守っていたことを知ったソータは、古代魔法を扱って冒険者として成長していく。  そして、ソータを崖から突き落とした本当の理由も徐々に判明していくのだった。  それと同時に、ソータを追放したパーティは、本当の力が明るみになっていってしまう。  ソータの支援魔法に頼り切っていたパーティは、C級ダンジョンにも苦戦するのだった……。  他サイトでも掲載しています。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

女神様から同情された結果こうなった

回復師
ファンタジー
 どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。

異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。

真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆ 【あらすじ】 どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。 神様は言った。 「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」 現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。 神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。 それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。 あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。 そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。 そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。 ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。 この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。 さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。 そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。 チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。 しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。 もちろん、攻略スキルを使って。 もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。 下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。 これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

処理中です...