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フォールドーン帝国編
第74話 カナメルの思考
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数分前
カナメルはトゥールとマスターリョウの戦闘を霞む視界で眺めていた。
まだここで倒れるわけにはいかない、自分にはまだやるべきことがある。
そう自分に言い聞かせる。
立っているのがやっとの状態であることは我ながら理解していた。
初歩的な治癒魔術すら発動出来ない、発動の気配がない。
だがカナメルはマスターリョウの[半永久的]という言葉が引っかかっていた。
今自分が最優先すべきは、魔法を使えるようにすることだ。
もしトゥールがマスターリョウに勝てなかった場合は加勢が必須、勝った場合もその先にはゼウスがいる。
カナメルは状況を整理し始めた。
謎の銃弾は左腕に命中した。
そこから魔法が全く使えなくなった。
マスターリョウ曰く、魔法が使えないのは永久的にではなく"半"永久的にだそうだ。
針が命中した箇所を見ると、小さく出血があり、骨に痛みがある。
針を取り出せば魔法が使えるか、しかし取り出すのは無理な様子である。
もし時間経過で魔法が使える様になるとすれば、針の中に麻痺剤のような液体が入っていて、針が刺さったと同時に体内へ液体を流し込み、魔術回路を封鎖、または麻痺させるという構造であることが想像できる。
しかし、半永久的にという言葉にはマッチしない。
もちろん敵の言葉ではあるが、カナメルはその言葉が真実であると考えた。
そう思わせる、何かを感じた。
そもそも、鳳凰の背にて背後から声をかけなければ魔法を封じるどころか仕留めることも出来たのではないだろうか?
マスターリョウは試している、そう考えた、
思考を繰り広げてみたものの、全てにおいて確信がない。
ただ、ヘイスレイブの四天王用と言っていたことを考えると、時間経過で解除される代物ではないという可能性が高まる。
針に液体は入っていない、ならば何が魔法を使えなくさせている?
そもそも魔法を発動させるとはどういうことだったのだろうか、カナメルはふと昔を思い出していた。
~~~~~~~
9年前
ヘイスレイブ、樹海
ムー「何?魔力をどうやって身体の中で移動させているかって?」
カナメル「はい、焚き火の炎を変形させた際、左手に魔力を流してみたら成功したんです。でも放出の魔法はもっと掌に魔力を集めないと成功しない気がして、、」
ムー「普通はそんなこと考えなくても使えるもんなんだけどな。鳥はどうやったら飛べるかなんて考えないし、赤ん坊はどうやったら歩けるかなんて考えないだろ?慣れと練習で出来る様になる、魔法も同じだ。考え過ぎるな、それよりも集中しろ」
カナメル「はい」
返事をしてみたものの、ムーの言葉を聞かずにカナメルは魔力が身体を流れる感覚を研ぎ澄ませ、考え続けた。
身体の中で魔力を移動させ、どうしたら上手く発動出来るか仮説を立てて試した結果、様々な魔法を習得することが出来たのである。
ヘイスレイブ魔法アカデミーに入学した頃にはその感覚を感じなくても魔法を使える様になっていた。
~~~~~~~~~
トゥールの刀とマスターリョウの電磁ソードが火花を散らしている。
上手く魔法が発動しない時は、いつも身体の中に集中して魔力の流れを感じていた。
魔力というものが何なのか実際には未だ解明されていなかったが、魔力というものが心臓に貯蔵されていると仮定し、魔法を使うイメージを脳で作り上げ、そのイメージを心臓に伝え、心臓から掌に魔力を送り込む。
初心にかえり、カナメルはその感覚を試した。
まずは針の刺さった左腕だ。
手から炎を噴射するイメージを作り上げ、心臓から左腕へと魔力を流し込む、、、、
しかし、魔力は針に近づくほどに弱まり、掌に辿り着くまでに消滅した。
何度試しても結果は同じだった。
次は右腕で試す。
同じように心臓から右腕へと魔力を流し込む、、、
魔力が移動するほどに弱まり、細くなっていくのを感じた。
しかし、そのまま右の掌に到達するのも感じた。
それなのに魔法が発現しない。
魔力量が足りないのかと更に魔力を送り込む、すると針の刺さった左腕に強烈な痛みを感じ、骨全体に電気が走るのを感じた。
それでもカナメルは右の掌へと魔力を流し込んだ。
すると
ボッ、、、、、
マッチ棒の火のような弱い火が、右の掌から放出された。
しかしその火はすぐに消えた。
もう一度同じように試す。
無理矢理魔力を右の掌へと流し込むと左腕に強烈な痛みが走り、その次に骨全体に痺れを感じる。
同じく小さな火がプシュ、と放出されて消えた。
この針は電気を発している。
左腕を起点に骨を通し電気を伝え、魔力を遮断している。
いつかこの針の電力が無くなったとき、きっと魔法は使えるようになるのだろう。
それが半永久的にということなのだろうと推測した。
きっと数時間、数日の話ではない。もっと長い期間、この針は電力を保つことが出来る。
それが一時的に、ではなく、半永久的にという言葉のチョイスだ。
だが、そんな悠長に待っていられない。
今、目の前で戦友が全力で敵と対峙している。
後輩達がどこかで戦っている。
ナミチュが、アンチェアが、ヘイスレイブを救おうとしている。
そして、俺にはまだやるべきことが、、、、、
思考しながらも戦闘の一部始終を見て分析していたカナメルは、ひとつ疑問が生じた。
何故マスターリョウはトゥールに攻撃を仕掛けない?
周囲を感知して敵の動きを見破り、怒涛の攻撃を仕掛けることが出来るのであれば、自分から近づいて範囲内に敵を捉え、攻撃を見切ってカウンターを放てば良い。
しかしマスターリョウはわざわざその場で待ち構え、トゥールの攻撃を捌き続けている。
技を出し続け、トゥールは多量に汗をかき、その顔には疲れの色が見える。
マスターリョウ「サイボーグと生身の人間の違いを教えてやる。疲労度の蓄積だ。生身の人間はどうしても長時間の戦闘は出来ない、動き続ければ必ず動きは鈍くなっていく。だがサイボーグは、半永久的に最初から最後まで同じパフォーマンスを維持できる」
半永久的に、、、、
何故永久的に同じパフォーマンスが出来ないのか。
その理由をカナメルは知っていた。
どんなに優秀な機械も熱に弱い、大技を使えばクールタイムが必要で、サイボーグもそれは同じはずである。
神の裁きを裁くためにカナメルは機械についての知識を得ていた。
そうだ、マスターリョウはトゥールの攻撃を捌くので精一杯なのだ。
トゥールは間違いなく最速の剣士である。
捌くだけで熱が籠り、攻撃に転じるにはクールタイムが足りないのだ。
その根拠として全ての攻撃を捌ききったマスターリョウの身体からは大量に蒸気が噴射され、身体が熱で鈍ったからか、最後の獺祭を捌き切れず脇腹を損傷している。
その損傷箇所からはこれでもかというほど蒸気が吹き出していた。
チャンスだ、カナメルはそう思った。
もし魔法が使えたとしても、おそらく熱に対抗するように超耐熱用に身体が造られていると推測出来る。
しかし脇腹に穴が空いてしまった。
中身が弱点だと言わんばかりに蒸気が止まらない様子だ。
マスターリョウ「ほら、鈍っているぞ」
トゥールの疲弊はカナメルの目からでも明らかであった。
不意をつかれたトゥールの太腿から血が滲む。
今動かなきゃ、ここで二人ともやられる。
カナメルは針が埋め込まれている左腕を眺めた。
、、、、、、、、
腕の切断は、一度経験している。
試してみるか。
カナメル「はぁぁぁあああ!!!!!」
カナメルはニヤリと笑い、落ちていた鋭利な金属を突き刺し、腕を切断した。
カナメルはトゥールとマスターリョウの戦闘を霞む視界で眺めていた。
まだここで倒れるわけにはいかない、自分にはまだやるべきことがある。
そう自分に言い聞かせる。
立っているのがやっとの状態であることは我ながら理解していた。
初歩的な治癒魔術すら発動出来ない、発動の気配がない。
だがカナメルはマスターリョウの[半永久的]という言葉が引っかかっていた。
今自分が最優先すべきは、魔法を使えるようにすることだ。
もしトゥールがマスターリョウに勝てなかった場合は加勢が必須、勝った場合もその先にはゼウスがいる。
カナメルは状況を整理し始めた。
謎の銃弾は左腕に命中した。
そこから魔法が全く使えなくなった。
マスターリョウ曰く、魔法が使えないのは永久的にではなく"半"永久的にだそうだ。
針が命中した箇所を見ると、小さく出血があり、骨に痛みがある。
針を取り出せば魔法が使えるか、しかし取り出すのは無理な様子である。
もし時間経過で魔法が使える様になるとすれば、針の中に麻痺剤のような液体が入っていて、針が刺さったと同時に体内へ液体を流し込み、魔術回路を封鎖、または麻痺させるという構造であることが想像できる。
しかし、半永久的にという言葉にはマッチしない。
もちろん敵の言葉ではあるが、カナメルはその言葉が真実であると考えた。
そう思わせる、何かを感じた。
そもそも、鳳凰の背にて背後から声をかけなければ魔法を封じるどころか仕留めることも出来たのではないだろうか?
マスターリョウは試している、そう考えた、
思考を繰り広げてみたものの、全てにおいて確信がない。
ただ、ヘイスレイブの四天王用と言っていたことを考えると、時間経過で解除される代物ではないという可能性が高まる。
針に液体は入っていない、ならば何が魔法を使えなくさせている?
そもそも魔法を発動させるとはどういうことだったのだろうか、カナメルはふと昔を思い出していた。
~~~~~~~
9年前
ヘイスレイブ、樹海
ムー「何?魔力をどうやって身体の中で移動させているかって?」
カナメル「はい、焚き火の炎を変形させた際、左手に魔力を流してみたら成功したんです。でも放出の魔法はもっと掌に魔力を集めないと成功しない気がして、、」
ムー「普通はそんなこと考えなくても使えるもんなんだけどな。鳥はどうやったら飛べるかなんて考えないし、赤ん坊はどうやったら歩けるかなんて考えないだろ?慣れと練習で出来る様になる、魔法も同じだ。考え過ぎるな、それよりも集中しろ」
カナメル「はい」
返事をしてみたものの、ムーの言葉を聞かずにカナメルは魔力が身体を流れる感覚を研ぎ澄ませ、考え続けた。
身体の中で魔力を移動させ、どうしたら上手く発動出来るか仮説を立てて試した結果、様々な魔法を習得することが出来たのである。
ヘイスレイブ魔法アカデミーに入学した頃にはその感覚を感じなくても魔法を使える様になっていた。
~~~~~~~~~
トゥールの刀とマスターリョウの電磁ソードが火花を散らしている。
上手く魔法が発動しない時は、いつも身体の中に集中して魔力の流れを感じていた。
魔力というものが何なのか実際には未だ解明されていなかったが、魔力というものが心臓に貯蔵されていると仮定し、魔法を使うイメージを脳で作り上げ、そのイメージを心臓に伝え、心臓から掌に魔力を送り込む。
初心にかえり、カナメルはその感覚を試した。
まずは針の刺さった左腕だ。
手から炎を噴射するイメージを作り上げ、心臓から左腕へと魔力を流し込む、、、、
しかし、魔力は針に近づくほどに弱まり、掌に辿り着くまでに消滅した。
何度試しても結果は同じだった。
次は右腕で試す。
同じように心臓から右腕へと魔力を流し込む、、、
魔力が移動するほどに弱まり、細くなっていくのを感じた。
しかし、そのまま右の掌に到達するのも感じた。
それなのに魔法が発現しない。
魔力量が足りないのかと更に魔力を送り込む、すると針の刺さった左腕に強烈な痛みを感じ、骨全体に電気が走るのを感じた。
それでもカナメルは右の掌へと魔力を流し込んだ。
すると
ボッ、、、、、
マッチ棒の火のような弱い火が、右の掌から放出された。
しかしその火はすぐに消えた。
もう一度同じように試す。
無理矢理魔力を右の掌へと流し込むと左腕に強烈な痛みが走り、その次に骨全体に痺れを感じる。
同じく小さな火がプシュ、と放出されて消えた。
この針は電気を発している。
左腕を起点に骨を通し電気を伝え、魔力を遮断している。
いつかこの針の電力が無くなったとき、きっと魔法は使えるようになるのだろう。
それが半永久的にということなのだろうと推測した。
きっと数時間、数日の話ではない。もっと長い期間、この針は電力を保つことが出来る。
それが一時的に、ではなく、半永久的にという言葉のチョイスだ。
だが、そんな悠長に待っていられない。
今、目の前で戦友が全力で敵と対峙している。
後輩達がどこかで戦っている。
ナミチュが、アンチェアが、ヘイスレイブを救おうとしている。
そして、俺にはまだやるべきことが、、、、、
思考しながらも戦闘の一部始終を見て分析していたカナメルは、ひとつ疑問が生じた。
何故マスターリョウはトゥールに攻撃を仕掛けない?
周囲を感知して敵の動きを見破り、怒涛の攻撃を仕掛けることが出来るのであれば、自分から近づいて範囲内に敵を捉え、攻撃を見切ってカウンターを放てば良い。
しかしマスターリョウはわざわざその場で待ち構え、トゥールの攻撃を捌き続けている。
技を出し続け、トゥールは多量に汗をかき、その顔には疲れの色が見える。
マスターリョウ「サイボーグと生身の人間の違いを教えてやる。疲労度の蓄積だ。生身の人間はどうしても長時間の戦闘は出来ない、動き続ければ必ず動きは鈍くなっていく。だがサイボーグは、半永久的に最初から最後まで同じパフォーマンスを維持できる」
半永久的に、、、、
何故永久的に同じパフォーマンスが出来ないのか。
その理由をカナメルは知っていた。
どんなに優秀な機械も熱に弱い、大技を使えばクールタイムが必要で、サイボーグもそれは同じはずである。
神の裁きを裁くためにカナメルは機械についての知識を得ていた。
そうだ、マスターリョウはトゥールの攻撃を捌くので精一杯なのだ。
トゥールは間違いなく最速の剣士である。
捌くだけで熱が籠り、攻撃に転じるにはクールタイムが足りないのだ。
その根拠として全ての攻撃を捌ききったマスターリョウの身体からは大量に蒸気が噴射され、身体が熱で鈍ったからか、最後の獺祭を捌き切れず脇腹を損傷している。
その損傷箇所からはこれでもかというほど蒸気が吹き出していた。
チャンスだ、カナメルはそう思った。
もし魔法が使えたとしても、おそらく熱に対抗するように超耐熱用に身体が造られていると推測出来る。
しかし脇腹に穴が空いてしまった。
中身が弱点だと言わんばかりに蒸気が止まらない様子だ。
マスターリョウ「ほら、鈍っているぞ」
トゥールの疲弊はカナメルの目からでも明らかであった。
不意をつかれたトゥールの太腿から血が滲む。
今動かなきゃ、ここで二人ともやられる。
カナメルは針が埋め込まれている左腕を眺めた。
、、、、、、、、
腕の切断は、一度経験している。
試してみるか。
カナメル「はぁぁぁあああ!!!!!」
カナメルはニヤリと笑い、落ちていた鋭利な金属を突き刺し、腕を切断した。
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