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フォールドーン帝国編

第73話 猛攻

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トゥールは神速の動きでマスターリョウと対峙していた。

瀕死の状態のカナメルは、その様子をじっと見つめている。

マスターリョウ「速いな、今まで幾千もの強者と戦ってきたが、こんなに速い相手は初めてだ」

トゥールは瞬時にその場からいなくなり、見えない速さで刀を振るう。
しかし、その全ての動きを見切っているかのように、マスターリョウは超高圧電磁ソードで受け流している。
動力室の蒸気の揺らめきが、トゥールが高速で移動していることを物語っていた。

離れた場所から眺めているカナメルには、マスターリョウが一人で剣を振り回しているように見える。

トゥール「一太刀も通らない、、、一応速さには絶対の自信があったんだけどなぁ。こんな相手はこちらこそ初めましてだっての」

トゥールは刀を鞘に納め、居合の構えをとる。

マスターリョウ「悪いが、この世の全ての物理攻撃および物理魔法は俺の前では無力だ。君は相性が悪い」

トゥール「試してみるか、、、」

トゥールの周りを風が渦巻き、蒸気がグルグルと回転している。

トゥール「居合、、突風、、浦霞!!」

言葉と共にトゥールは姿を消し、突風がマスターリョウを襲う。
瞬きをすると、トゥールは地滑りをしながら元いた場所へ戻ってきていた。

トゥール「これでもダメか、、」

マスターリョウ「正面から右脇を通り抜けざまに一太刀、空中を蹴り、折り返し、背後から左脇を通り抜けざまに一太刀。見えていなければ一瞬で真っ二つってわけか、怖いな」

マスターリョウは静かに拍手をしている。

マスターリョウ「俺はサイボーグだ、この身体には帝国最新鋭の科学技術が盛り込まれている。まずこの目だ、俺の目は周囲を360度見ることが出来る、正確には感知すると言った方が正しいか、半径3m以内に入ってきた物体は全くの誤差なく認識することが出来る」

トゥール「なるほど、今の技も、正面からと背後からの二回、その3m以内に入った瞬間に分かったということか」

マスターリョウ「そうだ、そして俺の身体はその目に追いつく速度で動くことが可能だ、そしてこの全てを焼き切る超高圧電磁ソードで無力化が可能というわけだ」

トゥール「あんたの目を上回る動きをしなきゃ、勝てないってわけか」

マスターリョウ「まぁ、そうなる。でも嫌なことを教えてあげよう、俺の身体は砲弾でもギロチンでも傷一つつけることが出来ない特殊装甲で出来ている。仮に俺の目を上回ったとしても、その刀が俺の硬度を上回らなけば、ノーダメージだ」

トゥール「嫌な相手を引いちまったなぁ、俺の魔法は基本的に属性付与と放出のみだから、、、、ムーなら苦労せずに突破出来るんだろうなぁ」

トゥールは深く溜息をつき、あからさまに落胆している。

マスターリョウ「知っているよ、この目には全て映っている。どんな魔法が使えるか、身体能力、魔法威力、残魔力、動きの癖から骨の位置まで全てお見通しだ。それを踏まえて、君は俺と相性が悪いんだ。使える魔法は風属性の付与、刀への付与は切れ味の強化、足への付与はスピードの強化、弾丸を消し飛ばす程の風の放出も可能だが、それ以外は何も出来ない。いわば物理に特化している剣士だ」

トゥール「その流れで、俺の過去も見通してほしいもんだ」

マスターリョウ「残念だが記憶までは介入出来ない」

トゥール「冗談だっての」

トゥールは静かに刀を鞘へ納め、居合の構えをとる。

マスターリョウ「居合の構えは技を繰り出す前兆、神速の技の予備動作のようだな。そして、、」

トゥール「説明は不要さ、今から全部見せてやるから」

先程とは段違いの強風が吹き荒れる。

マスターリョウ「その技、受けて立とう」

マスターリョウは電磁ソードを構える。

トゥール「居合、、、暴風、、、天狗舞!!!」

刀を抜くと同時に凄まじい暴風があたりを襲う。
よく見ると動力室の機材がスパスパと斬られているのが見てとれる。
マスターリョウも高速で動き、生身の人間では到底不可能な手の動きで剣を振り回す。

刀と電磁ソードが擦れ合う音がバチバチと鳴っている。

数秒の後、バラバラになった機材が散乱し、床には幾つもの斬跡が刻まれていた。

トゥール「まだだ!!、、抜刀、爆風、、、」

構えながらマスターリョウの元へと駆け出すトゥール。

トゥール「八海山!!!」

刀が電磁ソードに触れた瞬間、風の爆発が起こり、その衝撃で吹き飛ぶマスターリョウ。

トゥール「ノーダメージなんだろ?まだまだ行くぞ!!居合、曲風、菊姫!!!」

刀を抜くと風を伴う螺旋状の斬撃が、壁際のマスターリョウを追撃する。

トゥール「全部見せるって言ったからな、抜刀、突風、真澄!!」

地面を蹴り上げると一瞬でマスターリョウの目の前にトゥールが現れ、その勢いのまま強烈な突きを繰り出すも、マスターリョウは電磁ソードでそれをかわし、強烈な蹴りを繰り出す。
両腕でガードしたトゥールが反動で後ろへと飛び退き、空中でクルクルと回転している。

トゥール「居合、、、旋風、、、」

着地をしたトゥールの刀は、鞘に納められている。

マスターリョウ「いつの間に!、、居合か!!」

風も全て鞘に納められ、一瞬の静けさが訪れる。

トゥール「獺祭!!!」

抜刀と共に横薙ぎの一太刀がマスターリョウを襲った。
マスターリョウは風の斬撃を電磁ソードで切り裂く。
高速の動きで一瞬のうちに何度も何度もそれを繰り返している。



、、、、、、、




沈黙の後、マスターリョウの後ろの壁には真横に亀裂が入り、ガラガラと音を立ててタワーの一部が崩壊する。

開けた空をバックに、マスターリョウは身体から蒸気を発しながら仁王立ちしている。

マスターリョウ「危うく、真っ二つにされるところだった」

マスターリョウは横腹の小さな亀裂を確認し、安堵している。
そして静かにトゥールへと歩み寄る。

トゥール「ふぅ~、、、さーて、どうするか」

トゥールは多量に汗をかき、その顔には疲れの色が見える。

マスターリョウ「サイボーグと生身の人間の違いを教えてやる。疲労度の蓄積だ。生身の人間はどうしても長時間の戦闘は出来ない、動き続ければ必ず動きは鈍くなっていく。だがサイボーグは、半永久的に最初から最後まで同じパフォーマンスを維持できる」

トゥール「確かに、相当疲れたよ」

とは言いつつもその場から姿を消し、攻撃を試みるトゥール。

マスターリョウ「ほら、鈍っているぞ」

しかし、マスターリョウは電磁ソードで刀を受け止めた後、もう片方の手の小さなナイフでトゥールの太腿を突き刺していた。

トゥール「くっ、、、」

思わず飛び退くトゥール、太腿から血が滲んでいる。

マスターリョウ「これで少しは静かになるか、足は君の強みであり、弱点だ」

明らかに余裕を失ったトゥールが苦渋の表情をしていた。

一部始終を眺めていたカナメルがニヤリと笑い、落ちていた鋭利な金属を突然片腕に突き刺し、腕を切断した。









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