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始まりの歌声編

第18話 一宿一飯の恩義

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ズミ「お前ら、草円から出てないだろうな?」

ツグル「出てない」

ズミ「そうか、まぁグレイスが闇に堕ちてから一週間だ。タイムリミットってわけか」

ダイス「タイムリミットって、どういうことだよ」

ズミ「武装しろ、そして突き当たり右の非常口を真っ直ぐ進め、違う場所から外に出られる」

モモ「え!?どういうことですか!?」

ズミ「言う事を聞け、時間がない。武装してとにかく走れ、そして外に出たらそのまま北に真っ直ぐ行くんだ。ずっと真っ直ぐだ、そこにミナトゥ村がある。トゥールとフルネスと合流しろ、いいな?」

セリア「ズミさんも行きましょう!」

ズミ「悪いな、この身体だ。俺はもう走ることすら出来ないんだ。ツグル、皆を頼むぞ」

ツグル「分かった」



入り口の機械音は更に大きくなる。
石が削れる音よりも、機械音の方が大きくなってきた。

ゴロゴロと墓標の石が階段を転がり落ちる。



ツグル「モモ、早くしろ」

モモ「そんなこと言ったって、しょうがないでしょ!」

ダイス「なぁ、本当に行くのか?ズミさんは、ズミさんはどうなるんだ?」

ツグル「、、、、」

ズミ「俺は大丈夫だ。この身体は死ぬことはない」

ダイス「で、でもよ、、、」

ツグル「早くしろ。。。セリア、非常口前まで行ってろ」

セリア「、、、、、」

セリアは唇を噛み締めている

ツグル「セリア!!」



セリア「私は、戦います」


ツグル「お前、何言ってんだ!」

ズミ「バカか、お前達は自分の力量を分かっちゃいない。それに拠点がバレた、その時点でトゥールとフルネスがいない今、お前達は何よりも生き延びることを優先すべきだ。人間は死んじまう生き物なんだぜ」

セリア「それでも!!私を守るために誰かが犠牲になるのは嫌です!」

ズミ「俺は死なないってーの」


大きな石が転がる音と共に、何者かが階段を降りてくる。

ブィーーーーーーン!!
機械音は未だに鳴り続け、徐々に近づいてくる。

モモ「よし、装着完了!」

ツグル「行くぞ」

モモ「ねぇツグル、私も逃げる気はないよ」

ツグル「お前まで!!」

ダイス「なんつーか、一宿一飯の恩義ってやつ?んならやるっきゃねーな。あ、一宿じゃねぇな」

ツグル「。。。。。」

ズミ「お前らなぁ。。。」

ツグル「あぁもう、どうにでもなれ!」

漆黒の短剣を手に取った。





ブィーーーーーーン!!!!!!

機械音がすぐそこまで来た。

全員の息が静まる。。。


だが現れたのはまだ十代であろう女の子だった。
フリフリのドレスを着ていて、手にはチェーンソーを携えている。

女の子「こんにちわ~」

ダイス「こ、、、こんちわ~」

モモ「女の子?、、、」



チェルシー「私ね、チェルシー!!再生の女神の手足を切り落として頭を持ってくるように言われているの」

ズミ「構えろ!!来るぞ!!」

チェルシー「どれが再生の女神?ま、いっか~皆持って帰っちゃえば良いよね?」


チェルシーと名乗る女の子は、チェーンソーを高々に鳴らせながら、飛び上がった。


ダイス「悪いけど、敵なら容赦しないぜ!」

ダイスが即座に矢を放つ、その矢は見事チェルシーの額に命中し、血を吹き出しながら彼女は後ろに吹き飛んだ。

ダイス「うっひょ~流石の威力だな、この弓」

モモ「やるじゃん!ダイス」

セリア「ふぅ~、、、、」

安心するのも束の間、チェルシーはムクッと起き上がり

チェルシー「いったーーーーい!!!痛いよぉ。。。。仕返し、しちゃうもんね」

そう言いながら額の矢を引き抜き、ニヤリと笑った。
傷はみるみるうちに癒えていく。

ダイス「嘘、、だろ、、」

モモ「どーなってるの?ねぇ、どーなってるの?」

ツグル「、、、、くそ」

セリア「分かりません。。。」

ズミ「なるほど、成功作、、なのか」



チェルシー「それじゃ、行くよ~!!」



ズミ「逃げろ、勝ち目がない」

ズミは聞こえるか聞こえないか分からないような声で呟いた。











そして、飛びかかるチェルシーに、身を差し出した。








テーブルはひっくり返り、豪勢な料理は全て床に広がる、その上からズミの体液と血液が降り注ぐ。

ズミの下半身は上半身と別れ、二つは料理の上に落ちた。



ダイス「クソガァぁぁぁぁー!!!」

ダイスは一心不乱に矢を放つ、そのうち数発は命中したが、彼女は蹌踉めくだけで、痛いと言いながら笑っていた。

モモ「ズミさん、、、、」

モモは兜で顔を確認することが出来ないが、その声は震えている。

ツグル「来い!!!」

ツグルは咄嗟にセリアの手を掴み、T字の廊下へと続く扉をこじ開けた。

長く続く廊下を一目散に駆ける。

セリア「ツグル!!待ってよ、ズミさんが!」

ツグル「お前がリバイバルボイスを使えば!!ここに王が来るんだぞ!?それこそ全滅だ!!」

セリア「でも!!!、、、、」

ツグル「いいから、、、頼むから、、、今は俺の言う事を聞いてくれ。。。」

セリア「ツグル。。。」



ツグルは悔しかった、戦っても勝ち目がないことも、また仲間を守ることが出来なかったことも。
またこうして、セリアを連れて逃げ出してしまったことも。

弱い、弱すぎる。







いつかセリアすらも守れない気がして、怖かった。







ツグルに続いてダイスとモモも走り出す。

チェルシー「鬼ごっこぉ?良いよ~じゃあ私が鬼ね」

チェルシーも同時に走り出そうとした時。

何かにつまづき、転倒した。

彼女の踝をズミが掴んでいた。


チェルシー「真っ二つになっても生きてるなんて、あなたも私と同じなの?でも元に戻っていないようだけど、、、、」

ズミ「悪いな、俺は失敗作なのさ」

チェルシー「あら、可哀想。じゃあ私がすぐに殺してあげる、もう再生出来ない程にズタズタにね♡」


チェルシーはチェーンソーで踝を掴んでいるズミの手を切断した。

チェルシー「予定が狂っちゃったけど、ま、良いわ~。私は自由を許されてるからね」

そう言ってチェルシーはズミの心臓部分にチェーンソーを突き刺した。


床に散らばった料理は、ズミの体液と血と混ざり合い、もう原形をとどめていない。


ズミ「お嬢ちゃん、、、、殺戮が好きなのかい?悪趣味だね」

チェルシー「ええ、そうよ。だから死なないあなたは殺りがいがあるのよ」

ズミ「そりゃ、、、良かった、、ぐっ!!」

チェーンソーはズミのもう片方の腕を切断した。

チェルシー「そうだ失敗作さん、私のための実験台になってくれてありがとう!おかげで私は不死身の身体を手に入れたの」

ズミ「まぁ、俺なんかより君みたいな若い子が成功した方が、、、、世のためだろうさ。。」

チェルシー「あの子たちも若いように見えたけど?誰が再生の女神なの?あなたを殺してから、またあの子たちを追わなくちゃいけないの、私」

ズミ「、、、、言ってなかったか、俺が再生の女神さ」

チェルシー「ふーん、でもあなた全然再生しないみたいね」

そう言ってチェルシーはズミの頭部にチェーンソーを突き刺した。


ズミ「ふっ、俺のユーモアを台無しにするなよ。。。。。。。追わなくちゃいけないか、そりゃ無理かもな」

チェルシー「どうして?」

ズミ「お前はここで、俺と一緒に、、、、生き埋めになるからさ」

チェルシー「あら、もう腕も足もないあなたに何が出来るのかしら」

ズミ「、、、ふっふっふっ、、、ショータイムの始まりだぜ、嬢ちゃん。ゾンビはゾンビらしく、仲良く埋められようや」

ズミはそう言って口を大きく開いた。

そして、舌をベーっと出すと、そこには魔法陣が描かれてある。

チェルシー「何をする気?」

ズミ「チェックメイトさ」


ズミは思いっきり自分の舌を噛み千切った。

すると同時に壁に掛けられていた蝋燭が一気に爆発して、土砂崩れが起きた。

みるみるうちに壁が崩れて、天井は落ちていく。

チェルシー「こんなの、時間稼ぎにしかならないわよ」

ズミ「まぁ、こんくらいしか出来な、、、、」

ズミは頭を真っ二つに割かれ、もう何も話せなかった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

長い長いトンネルのような廊下を走り続けると、階段が見えた。

階段を駆け上がると入り口のように何かで蓋がされてあり、突き破ると外に出ることが出来た。

そこは完全に森の中で、草が生い茂っている。
どうやら地下道を隠していた様子だ。

少ししてからダイスとモモも地下道を脱出した。



モモ「はぁ、はぁ、、、、行こう」

ダイス「、、北だよな、北」

ツグル「ああ、行こう」

セリア「、、、、」


あえてズミのことを触れないようにしている空気がヒシヒシと伝わる。

それでも進むしかない、振り返っている余裕はないんだ。

走り出そうとした時、地震が起きた。

ダイス「なんだなんだぁ!!」


地下道へ周辺の土が流れ込んでいき、今まで走ってきた道の地上が全て陥没した。

あっという間に地下道は埋め立てられ、何もなかったかのように静かになった。





ツグルたちは、もう振り返らなかった。



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