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熱風の闘技場編
第46話 再再戦、黒化の身体vs見切りの技術
しおりを挟む遂にこの時がやってきた。
ムー「魔法が使えないカナメルに対して、そもそも身体能力の高さが際立つツグルに黒化を付与するとすれば、カナメルは絶体絶命だろうな。だって君は魔法の方は認めてやるけど、肉弾戦は不得意だろ?」
カナメル「まぁね」
トゥール「どんな時でも勝機はある。だろ?」
カナメル「まぁね」
ダイス「カナメルさん、華麗に決めちゃってください!!」
カナメル「まぁね」
ズミ「いや、君面倒くさくなってるでしょ」
カナメル「バレたかい」
タチキ「だってそれまでのまぁねは会話として成り立つけど、金髪ボーイの言葉に対して、、」
カナメル「本気で来なよ、ツグル」
タチキが言い終えるのを遮りカナメルは炎の鳥の背に乗って闘技場上空を滑空した。
それに呼応するように観客は歓声をあげる。
タチキ「ちょっと!!あんた!!人の話は最後まで、、、」
ダイス「やべぇ、かっけぇぇえええ!!!」
トゥール「魅せるバリエーション豊かだな、彼は」
フルネス「俺もあのような登場をすれば、、、」
モモ「いえ!!あれはカナメルさんだから許されるような気がします」
フルネス「そうか、、、」
ツグルはストレッチを済ませ、観客席の手すりに足をかけた。
ツグル「行ってきます!!」
恐怖と興奮が入り混じった感情を置いていくように、観客席から飛び出した。
10m程の高さを落下し、受け身を取って着地する。
先に地表に辿り着いていたカナメルが笑っていた。
ツグル「魔法の使用は禁止だぞ、カナメル」
カナメル「分かっているさ、ツグルも変形禁止なんだからハンデは無しだろ?」
ツグル「ああ、この戦い、俺は黒化も使わない。正々堂々戦いたい」
カナメル「使いなよ、俺としては全力を出してもらわなきゃ、やり甲斐がない」
ツグル「、、、後悔するなよ?」
ツグルの四肢が黒く染まる。
「準決勝、ツグルvsカナメル スタート!!」
ゴングの音と共にツグルが壁を垂直に走りだした。
円形の闘技場をグルリと走り、カナメルの背後へと移動する。
カナメルはそれを横目で見ながら直立不動である。
背後に回り込んだツグルは、思い切り壁を蹴ってカナメルへ一直線に飛んでいく。
触れる寸前にカナメルは後ろへバク宙し、ツグルの背中に乗る、そして頭部を掴み地面に叩きつけた。
壁を蹴った勢いをそのままに、ツグルは顔面を地面につけたまま数メートル前方へ身体もろとも削られる。
血が滲み動かなくなったツグルの頭部を踏みつけようとした瞬間、ツグルは体を捻り立ち上がる。
体勢を崩したカナメルの顔面に黒化したストレートを叩き込む。
カナメルは鼻から血を吹き出しながらすぐに立ち上がり、袖で血を拭った。
カナメル「やるじゃん」
ツグル「黒化させたことを後悔させてやる」
カナメル「やってみな」
人間とは思えないスピードでツグルはカナメルの目の前まで走り、凄まじいパンチの乱撃を放つ。
カナメルは全て見えているかのようにそれを弾き、遂にはカナメルの拳がツグルの鳩尾を捉えた。
ツグル「ごほっ!ごほ、、、、、」
苦しい、だがしかし隙を与えるわけにはいかない。
ツグルはすぐに駆け出し、フェイントをかけながら距離を詰める。
連続した攻撃を繰り出しながらも足を止めずカナメルを翻弄する。
防いでいたカナメルだが、顎に強烈なアッパーが入り、身体が浮いた。
そして先の戦いで見せたトゥールの回し蹴りを見様見真似でやってみる。
黒化のパワーの乗った回し蹴りはカナメルの小さな身体をボールのように吹き飛ばし、カナメルは壁に衝突し地に落ちた。
フラフラとしながらカナメルは立ち上がり、かかって来いと言わんばかりの手招きをしている。
お望みならばとツグルは一直線に駆け出し、全体重が乗ったストレートを弱ったカナメルの顔面目掛けて放つ。
ニヤリと笑ったカナメルの顔がスローモーションで目に刻まれる。
カナメルが素早く身体をずらすと、ツグルの右ストレートは壁にめり込んだ。
引き抜こうとするも肩付近までめり込んだ腕は動かない。
焦るツグルだが、腹部に激痛が走り倒れ込んだ。
カナメルの膝蹴りをモロに受け、黒化が一時的に解かれてしまっていたことに気付く。
立ち上がらなければと思うが身体が言うことを効かない。
「勝者!!カナメル!!!」
カナメルは魔法で壁を破壊し、倒れ込むツグルと共に転送魔法でその場から消えた。
ツグル「くそ、、、、浅はかだったか、、」
闘技大会の医療班の治療を受けたツグルが悔しそうに客席へ戻る。
セリア「ツグル!!大丈夫??」
心配そうなセリアの表情を見て、負けた自分に憤慨した。
トゥール「いや~ナイスファイト」
モモ「やるじゃん!!ツグル!!見応えあったよ」
ダイス「カナメルさん相手によくあそこまで戦ったな!!お前もすげぇわ」
ツグル「また負けた」
肩を落とすツグルにカナメルがポンと手を置く。
その目には承認の眼差しがある気がした。
カナメル「余裕だったわ」
そう言うカナメルの小さな背中が、とても大きく見えたツグルだった。
数分の後
[カナメル棄権により、勝者ツグル!!!]
突然のアナウンスに一同は驚く。
当のカナメルは清々しい顔をしていた。
ツグル「おい、どういうことだ?」
カナメル「さっきツグルに殴られたところが痛いんだよ、治療を受けたって痛いもんは痛い。こんな状態であんなバケモノかトゥールの蹴りを食らったら死んでしまうだろ?」
そう言ったカナメルはツグルの背中を押した。
ムー「てめぇ、まさかとは思うが、この大会に飽きちまっただけだな?」
ムーとカナメルは静かに笑った。
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