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最終章 ここから始まる理想郷

その2 俺とブラジャーの最終決戦

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 といっても、今までのミッションに比べれば化粧水も石鹸も簡単だ。
 開発に数日も掛からないだろう。
 今回は世代交代は不要だ、化粧水が完成して数か月もすれば彼女たちのシミも消えるだろう。
 これが……若さだ!
 ここは宴を楽しむとしよう、夜の部もあるらしいしな。
 ここは腹を満たすとしよう。
 炭を用いた焼き肉は塩だけの単純な味付けだが味は最高だ。
 空は快晴で、夜には絶好の花火日和になるだろう。
 空には雲ひとつなく、丸い影がくっきり地面に映って……
 丸い影!?

 ドカーン!

 爆発音が響く、花火の暴発じゃない、空から落ちて来た何かが爆発したのだ。
 くそっ!
 俺は空を見上げる、あれは……鳥!?
 大型の鳥が丸い爆弾と思われる物を抱えて飛んでいる。

 「空襲だ―! みんな神殿に逃げこめ!」

 俺は叫び、みなが逃げ出す。
 「バス―、あの鳥を何とかするぞ!」
 「は、はい! でも、どうやって!?」
 「こうやってだ!」
 
 俺は懐かしの秘密兵器その4、スコップを使って焼き肉台に炭を投入する。

 バチバチバチッ!

 大量の炭が赤熱する。

 「そして、これだ!」
 「あっ、それは廃油……」

 揚げ物に使われ、くすんだ色になった廃油を俺は口に含み、そして噴き出す!

 ジュジュ―

 火を吹くわけじゃない、ガソリンじゃなければ大道芸人のようにはならない。
 焼き肉をしている時に肉の脂が垂れた時と同じだ。
 結果は、煙が出る! 大量にな!
 うむ、よく考えてみれば、口に含む必要はなかったな。
 この火力なら普通にかけても大丈夫だ。

 じゅわじゅわー!

 もくもくと煙が立ち昇る。
 これで少しは目くらましにはなるだろう。
 俺は煙の中から空を見る。
 空の鳥は西に向かって飛んで行った。
 煙を浴びたくなかったのか、それとも目的を果たしたのか、理由は定かではない。
 だが、これは本命じゃない、きっと本命は次に来るはずだ。

 「バス―、避難した民の中から、戦える者を選抜してくれ、町の守りを固めるぞ」
 「はっ、はい!」

 俺は町の西端に向かう、だいぶ広くなったなー、この町。
 おっと、一応確認しておくか。
 俺は左手と右手の数字を確認する。
 左手は365、右手は834591。
 左手は相変わらず俺がこの世界に居られる日。
 右手は80万を超えたか。
 相変わらず、わからん!
 だが、それよりも目先の問題だ。
 西の方角に砂ぼこりが見える、そしてそれは、だんだん大きくなってくる。
 あれが、敵の本体だ。

 「はぁ、はぁ、神様! 兵を集めました。間もなく、武装してこちら集合します」
 「そうか、数と装備は?」

 フリントロック銃は禁断の武器としちゃったからなー。

 「はい、数は約1000、うち、500がヒトで、がるーとちょろーが200ずつ、ぎょーが100です。装備は四角盾スクトゥムと槍と弓と網です」

 うん、やっぱり装備は前と変わっていない。
 だが、今回は建物という地の利がある。
 人類とトカゲ人の部隊で道を塞ぎ、機動力のある獣人弓兵たちと、町の水路が使える魚人の強襲という形での市街戦に持ち込めば、たとえ敵の数が万を超そうと何とかなる! と思う……

 「バス―、望遠鏡を」
 「はい、ここに」

 俺は望遠鏡を覗き、敵を確認する。
 さあ、今度は二足歩行する何だ?
 豚か? 意表をついてエルフか? 今までのパターンだとすると鳥かな?
 
 「……」

 俺の予想は当たっていた。
 それは鳥だった。
 そいつが、二足歩行するのは元からだ。
 くそっ! これだからファンタジー世界ってのは!
 襲って来ているのは腕の生えたダチョウだった。

 「はえてるー!」

 ◇◇◇◇◇

 いや、落ち着け、別に不思議じゃない。
 問題はそこではなく、相手の装備と速度だ。
 矢筒を持っている所を見ると、弓兵だろうだが、その速さだ。
 あれって、時速60kmくらい出てね!?
 前回の転移で獣人の足の速さを体感したが、それと同じかそれ以上だ。

 「かみさまー、盾をおもちしました」

 むくつけきブラジャー男たちが集合する。
 その中には獣人もいた。

 「なあ、そこのがるー」
 「はい、何でしょうか?」
 「あれを見てくれ、あの足の速さはどう思う?」
 「速いですが、あれなら何とか俺の方が速いと思います」
 「そうか、実はな、あいつら、ずっと走りっぱなしなんだ」
 「へっ!? そんなに長い間は走れません、数分が精々です」

 そう、あのダチョウ人は10分以上あの速度で走っている。
 そういえば、ダチョウは持久力が高く1時間くらいは走り続けられると聞いたな。
 と、すると、あのダチョウ人は数分でここに到着する!?
 さっきまで豆粒だったダチョウ人は、シルエットがはっきり見えるくらい近づいている。
 
 「やばい! 楯を置け―! 道をふさげー」
 「はいっ!」

 ゴインと大きな音がする、今回の四角楯スクトゥムは鉄製だ。
 これなら矢は貫けないだろう……だが、あの脚力ならばジャンプで飛び越えてしまうかも!?
 
 「緊急事態だ! バス―! ブラジャーをよこせ!」
 「はっ! はいっ! どうぞ!」

 バス―は後ろに手を回すと、ブラの紐をほどき、それを俺に渡す。

 ぷるん

 心にだけ聞こえる柔らかな音を立てて、ブラジャーから解放されたおっぱいが揺れる。
 くそっ! 緊急事態でさえなければ!
 そして! 俺のバカ! 羞恥心を教えるのを忘れてた!!

 「よし、おまえもだ! ブラジャーをよこせ!」
 
 俺は、さっきの獣人にも命令する。

 「えっ、いくら神様の命令でも、みんなに胸を見られるのは恥ずかしいし……」

 男が羞恥心を身に着けるんじゃねぇ!
 俺は奪い取るように、そいつからブラジャーをゲットした。

 「お前らも俺の真似をして武器を作るんだ!」

 男どもは顔を赤らめながら後ろを向いてブラジャーを外す。

 「よし、それをふたつ結んで両端には石かレンガを結べ。半数は盾で、半数がこの武器ボーラだ。使い方はは分かるな?」

 俺の声にみなは首をフルフルと振る。
 くそっ! これが時代の流れか!
 
 「時間がない! 見て覚えろ!」

 足音は大きくなり、ダチョウ人が矢をつがえているのがはっきりと見える。

 ガンガンガン!

 盾に矢が当たり、音が響く、そして……

 ガゴォン!

 重たい何かが盾にぶつかる音がして、空が暗くなった。
 ダチョウ人が跳んで影を落としているのだ。

 「初期装備なめんな!」

 俺は精一杯の声を張り上げ、手にしたボーラを、その脚へ投げつける。
 くるんとブラジャーが脚に巻き付き、二本の脚を拘束する。
 
 「グゲァー!」

 着地したダチョウ人はバランスを崩し転ぶ。
 
 「今だ! 捕らえよ!」

 転んでしまえば怖くはない。
 ダチョウ人は男どもに押さえつけられた。

 「神様に続け―!」

 天空にブラジャーが舞い、ダチョウ人が何人も地面に倒れこむ。

 「くっ! ブラジャーが足りない! 民間人からブラジャーを徴収するのだー!」

 うわぁ、字面だけ見ると、俺たちって悪役そのもじゃないか。
 しかし、この初期装備の話が兵たちに広まると、町中に突入してきたダチョウ人は次々と捕らえられていった。
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