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第十二章 到達する物語とハッピーエンド
八稚女と七王子と珠子と一期一会の料理(その4) ※全7部
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◇◇◇◇
「つまり、ここは現世や天津神界とは隔絶された母上たち八稚女の世界という事ですね。そして母上たちは”まつろわぬ神”となっていると」
”まつろわぬ神”
それは地上の国津神や天上の天津神にも従わず、さりとて討伐されて黄泉の国のイザナミの下に封じられもしなかった神々の総称。
その神々が棲む世界は、まつろわぬが故にどこの世界からも隔絶されていると聞く。
なるほど、緑乱が現世から黄泉まで探し尽くしても見つからぬわけだ。
「そうです。そして、よくぞ皆をここまで導きました。わたくしの愛しい黄貴。母は誇らしく思います」
「我も母上に再会出来て至上の喜び。今日は我にとって忘れられない日となりましょう」
板の間、その中に草で編んだ一段高い高座に座る女性を我は正面から見つめる。
あれが我が母、王権の権能を備える八稚女の長姉。
それは、あの日、我が封印された日に見た姿と全く同じ。
その高貴さは神代の頃より少しも色褪せることはない。
我も自然と身が引き締まるというもの。
「母上、今日は手土産に懐石弁当をお持ちしました。是非ともお召上がり下さい」
「これは良いもの。見ればふたつあるではありませんか。よろしい、久しぶりに共に食べましょう」
「はい」
我が女中に作らせた懐石弁当。
その蓋を我と母上は開く。
「これは美しい。今の現世の食事はいつもこうなのですか?」
「いえ、これは特別な席の料理。普段はもっと質素です」
蓋の中には鯛の小毬寿司が白梅のように並べられ、その周囲には様々な季節の料理が並ぶ。
山芋としし唐の天ぷら、賀茂茄子の田楽に鴨のロースト、高野豆腐と里芋の煮物、瓜の浅漬けと瓜の奈良漬け。
デザートにはちょこんと橘の皮の細切りが乗った小豆寒天。
「なるほど、母は嬉しいです。このような良いものを頂けて」
「喜んで頂いて我も嬉しく思います。どうぞ」
母は背筋をピンと伸ばし、上品な箸使いで懐石を食べ始める。
続けて我も箸を伸ばし、ひとつ天ぷらを食べると、パリッとした衣の歯ざわりと、中のホクホクシャキッとした山芋のほのかな甘さが広がる。
熱を中心まで通さぬことで残った山芋のシャキシャキ感が実に美味。
女中は相変わらず良い仕事をする。
「美味です。これは良いものですね」
「母上の好きだった酒も用意しております。幼き時は共に飲むことはありませんでしたが、今なら酌み交わすことが出来ます」
「それはよいですね。母は黄貴と酒を共にするのが夢でした」
神代の時、母も父も酒が好きだった。
『父と母はこれからお酒を飲みます。子供の貴方は先に休んでいなさい』
『はい、母上』
そういうやりとりもしばしば。
今になって思えば深い意味もあったのかもしれぬが……、いや、要らぬ詮索であるな。
「これは、面白い装飾ですね」
「はい、この王紋酒造の”王紋”のラベルは西洋の王家やそこに納入するワイン蔵の影響を受けたという話です。王にふさわしい酒であることを画で示すとは、なんともはや我らのためにあるようなもの」
トポポと我が注ぐ酒を母上は嫋やかな所作でキュッと飲む。
「甘く、優しく、それでいて凛とした味。いいものです。母はこれを気に入りました」
「それは重畳。我も頂くとしましょう」
「では次は母から」
母上から注がれた酒は女中の酌で呑む酒とは、また味わいが違う。
女中の酌は心が熱くなるようだったが、母上の酒は心が温かくなるようだ。
このような日が来るとは、女中には感謝とボーナスを与えねばならぬな。
「母上、ひとつお尋ねしてもよろしいでしょうか」
「何でしょう?」
「我ら兄弟が封印されることとなった経緯をです」
「何故に」
「それがわかれば、母上や叔母上たちをここから開放することが出来るやもしれませぬ」
これは我が密かに考えていた計画。
もし、もしも女中が我を母上の下へ導いてくれたなら、我はその先を考えねばならぬ。
王とは常に一歩先んじるものであるからな。
「時に黄貴、そなたは既に父の名を継いで妖怪王となって……、いないようですね」
「お恥ずかしながら、我は未だ王道の道程にあります」
その姿を見た誰もが”あの方が妖怪王”と心に思い浮かべる、それが妖怪王の特権。
やはり母上もそれを知っているようであるな。
「他に妖怪王を目指すものは?」
「ご安心下さい母上。妖怪王の座を狙う”あやかし”たちは数多くおりましたが、今や候補は我ら大蛇の兄弟のみ。我の他は蒼明と橙依を残すのみです」
「あのふたりの子ですか!?」
ふむ、妙であるな。
母上がこのように取り乱すとは。
「母上は、蒼明と橙依の母と仲がよろしくないのですか?」
「い、いえ、そうではありません」
コホンとひとつ咳払いをして、再び母上は背をピンと伸ばす。
「いいでしょう。全てではありませんが、経緯を教えましょう。そなたの父、八岐大蛇が須佐之男に敗北してから、そなたたちが封印されるまでのことを」
そして母上は少し困った顔をして溜息を吐いた。
「まず最初に言わなければならないことは、あの男は、王の器ではなかったということです」
「父上がですが!? 我は妖怪王への道程で数々の強大な敵と事を構えましたが、どれも父上には遥かに及ばぬ者たちでありましたが」
「強さであれば、そなたの言う通りです。あの須佐之男でさえも、平時なら相手にならかったでしょう。黄貴、貴方には話しておきます。わたくしたち八稚女の、”高千穂の乙女”の使命のことを」
クッと飲み干された猪口が差し出され、我はそこに次の酒を注ぐ。
「”高千穂の乙女”の使命とは、この日ノ本を統べるにふさわしい者を選定し、それを助け、王へと導くこと。ここに来れたということは、黄貴はわたくちたちの司る権能を知っていますね」
「はい、我ら兄弟が継いだ、王権、太極、架橋、迷廊、得心、祝詞、鎮魂、そして櫛名田叔母上の豊穣でありますね」
「そうです、その全ての加護を得た者は、日ノ本を平和に治めることが出来るでしょう。ですが、神代の日ノ本は騒乱の時代、天津神、国津神、そして”あやかし”が互いの縄張りを主張し、争う時代です。ですが、わたくちたちには欠けているものがありました」
「……武力、ですね」
我も時に思うことがあった。
父上ほどの武力がこの身に備わっていたらならと。
「その通りです。ですから日ノ本最強の妖怪王”八岐大蛇”から『女が欲しいと』の要求があった時、わたくちたちの父母、脚摩乳・手摩乳は迷った末にわたくしを差し出すことに決めたのです。最強の妖怪王に王権の権能の加護が合わされば日ノ本を統べるに相応しい王が誕生するに違いないと思ったからです。ですが!」
グイッっと杯をあおり、フゥーと大きく息を吐いて母は言葉を続ける。
「あの男は男としてはともかく! 王としてはダメ! 『王? なにそれおいしいの?』と言い出す始末、あまつさえ『オーゥ! 君はとってもおいしい!』と言ってわたくしを寝所に引き込む始末! 何も考えてない! というか、酒と飯と女のことしか考えていない! わたくしが、他の女に手を出されないよう、あの男にどんなに尽くしたか! あんなことやそんなことまで! 酒! ついで!」
「ちょ、母上!?」
そんな我の言葉を意に介さず、母上は酒瓶を奪い取ると、それを自らの手で器に注ぐ。
「寝所では『凛とした君が乱れるのが見たいな』なーんて甘くささやく始末! 王権が乱れたら国が乱れるんじゃい!! あの時、気丈に振る舞うのがどんなに大変だったか!!」
「ど、どうどう、母上、どうか落ち着いて下さい。酔いも回っているようですし、もう控えたほうが……」
「こんなチビチビとした酒で酔ったりするもんですか! それでね、わたくしの惨状を聞いた下の妹たちがね、わたくしを救い出そうとしてくれたんだけど、返り討ちに遭うならともかく、返り手籠めにされてしまう始末! しかもまんざらじゃないような雰囲気で子作りまでしてるじゃない!? わたくしの立場ってのはどーなってんの!? ここまで王権がないがしろにされたのは初めてだわ!」
……聞きたくなかった、母上の口から『子作り』なんて台詞は。
「でもね、わたちは頑張ったのよ。妹の大半が手籠めにされたり、最後の方には妹自らが身を差し出すようになってしまって、こうなったらあの男を王に相応しいように教育するしかないって! 少しずつだけど、あの男にも理性と教養が生まれてきたのです。ふふーん、どんなもんさ!」
「く、苦労されたのですね。母上は」
「そう! 苦労したの! だけど! そんあ時! 末の櫛名田が天津神の須佐之男と組んであの男を倒しちゃうんじゃない。なにやってんの!? わたくしの苦労がパーじゃない!! あじゃぱー!!」
まずい、かなり話が脱線している。
というか進んでおらぬ。
「ねえ、黄貴、聞いてる!? 安心しなさい、わたくしは貴方を愛してますし、あの男との間に愛が無かったわけじゃないの。男としての魅力はともかく、王としての資質がなかっただけ! 最悪、あの男が酒と飯と女しか頭になくっても、頭のまともな貴方が妖怪王を継いでくれれば、丸く収まると思ってたの!」
「ご、ご安心下さい。いずれ我が妖怪王を継いで日ノ本を……」
「ちっがーう! もう日ノ本を統べるって話はどうでもいいの、そんな時代じゃなくなったんだから。そうそう、全てわたくしの計画通り。ぐふふ、げへへ」
普段の凛とした表情と姿勢とは180度違う態度で、ぐでぇと母上は我の膝に倒れ込む。
母には逢いたかったが、母のこんな姿は見たくなかった。
ああ……、このような日が来るとは、女中には感謝の気持ちしかないが、今日のところは早く帰りたい。
珠子の下へ。
「つまり、ここは現世や天津神界とは隔絶された母上たち八稚女の世界という事ですね。そして母上たちは”まつろわぬ神”となっていると」
”まつろわぬ神”
それは地上の国津神や天上の天津神にも従わず、さりとて討伐されて黄泉の国のイザナミの下に封じられもしなかった神々の総称。
その神々が棲む世界は、まつろわぬが故にどこの世界からも隔絶されていると聞く。
なるほど、緑乱が現世から黄泉まで探し尽くしても見つからぬわけだ。
「そうです。そして、よくぞ皆をここまで導きました。わたくしの愛しい黄貴。母は誇らしく思います」
「我も母上に再会出来て至上の喜び。今日は我にとって忘れられない日となりましょう」
板の間、その中に草で編んだ一段高い高座に座る女性を我は正面から見つめる。
あれが我が母、王権の権能を備える八稚女の長姉。
それは、あの日、我が封印された日に見た姿と全く同じ。
その高貴さは神代の頃より少しも色褪せることはない。
我も自然と身が引き締まるというもの。
「母上、今日は手土産に懐石弁当をお持ちしました。是非ともお召上がり下さい」
「これは良いもの。見ればふたつあるではありませんか。よろしい、久しぶりに共に食べましょう」
「はい」
我が女中に作らせた懐石弁当。
その蓋を我と母上は開く。
「これは美しい。今の現世の食事はいつもこうなのですか?」
「いえ、これは特別な席の料理。普段はもっと質素です」
蓋の中には鯛の小毬寿司が白梅のように並べられ、その周囲には様々な季節の料理が並ぶ。
山芋としし唐の天ぷら、賀茂茄子の田楽に鴨のロースト、高野豆腐と里芋の煮物、瓜の浅漬けと瓜の奈良漬け。
デザートにはちょこんと橘の皮の細切りが乗った小豆寒天。
「なるほど、母は嬉しいです。このような良いものを頂けて」
「喜んで頂いて我も嬉しく思います。どうぞ」
母は背筋をピンと伸ばし、上品な箸使いで懐石を食べ始める。
続けて我も箸を伸ばし、ひとつ天ぷらを食べると、パリッとした衣の歯ざわりと、中のホクホクシャキッとした山芋のほのかな甘さが広がる。
熱を中心まで通さぬことで残った山芋のシャキシャキ感が実に美味。
女中は相変わらず良い仕事をする。
「美味です。これは良いものですね」
「母上の好きだった酒も用意しております。幼き時は共に飲むことはありませんでしたが、今なら酌み交わすことが出来ます」
「それはよいですね。母は黄貴と酒を共にするのが夢でした」
神代の時、母も父も酒が好きだった。
『父と母はこれからお酒を飲みます。子供の貴方は先に休んでいなさい』
『はい、母上』
そういうやりとりもしばしば。
今になって思えば深い意味もあったのかもしれぬが……、いや、要らぬ詮索であるな。
「これは、面白い装飾ですね」
「はい、この王紋酒造の”王紋”のラベルは西洋の王家やそこに納入するワイン蔵の影響を受けたという話です。王にふさわしい酒であることを画で示すとは、なんともはや我らのためにあるようなもの」
トポポと我が注ぐ酒を母上は嫋やかな所作でキュッと飲む。
「甘く、優しく、それでいて凛とした味。いいものです。母はこれを気に入りました」
「それは重畳。我も頂くとしましょう」
「では次は母から」
母上から注がれた酒は女中の酌で呑む酒とは、また味わいが違う。
女中の酌は心が熱くなるようだったが、母上の酒は心が温かくなるようだ。
このような日が来るとは、女中には感謝とボーナスを与えねばならぬな。
「母上、ひとつお尋ねしてもよろしいでしょうか」
「何でしょう?」
「我ら兄弟が封印されることとなった経緯をです」
「何故に」
「それがわかれば、母上や叔母上たちをここから開放することが出来るやもしれませぬ」
これは我が密かに考えていた計画。
もし、もしも女中が我を母上の下へ導いてくれたなら、我はその先を考えねばならぬ。
王とは常に一歩先んじるものであるからな。
「時に黄貴、そなたは既に父の名を継いで妖怪王となって……、いないようですね」
「お恥ずかしながら、我は未だ王道の道程にあります」
その姿を見た誰もが”あの方が妖怪王”と心に思い浮かべる、それが妖怪王の特権。
やはり母上もそれを知っているようであるな。
「他に妖怪王を目指すものは?」
「ご安心下さい母上。妖怪王の座を狙う”あやかし”たちは数多くおりましたが、今や候補は我ら大蛇の兄弟のみ。我の他は蒼明と橙依を残すのみです」
「あのふたりの子ですか!?」
ふむ、妙であるな。
母上がこのように取り乱すとは。
「母上は、蒼明と橙依の母と仲がよろしくないのですか?」
「い、いえ、そうではありません」
コホンとひとつ咳払いをして、再び母上は背をピンと伸ばす。
「いいでしょう。全てではありませんが、経緯を教えましょう。そなたの父、八岐大蛇が須佐之男に敗北してから、そなたたちが封印されるまでのことを」
そして母上は少し困った顔をして溜息を吐いた。
「まず最初に言わなければならないことは、あの男は、王の器ではなかったということです」
「父上がですが!? 我は妖怪王への道程で数々の強大な敵と事を構えましたが、どれも父上には遥かに及ばぬ者たちでありましたが」
「強さであれば、そなたの言う通りです。あの須佐之男でさえも、平時なら相手にならかったでしょう。黄貴、貴方には話しておきます。わたくしたち八稚女の、”高千穂の乙女”の使命のことを」
クッと飲み干された猪口が差し出され、我はそこに次の酒を注ぐ。
「”高千穂の乙女”の使命とは、この日ノ本を統べるにふさわしい者を選定し、それを助け、王へと導くこと。ここに来れたということは、黄貴はわたくちたちの司る権能を知っていますね」
「はい、我ら兄弟が継いだ、王権、太極、架橋、迷廊、得心、祝詞、鎮魂、そして櫛名田叔母上の豊穣でありますね」
「そうです、その全ての加護を得た者は、日ノ本を平和に治めることが出来るでしょう。ですが、神代の日ノ本は騒乱の時代、天津神、国津神、そして”あやかし”が互いの縄張りを主張し、争う時代です。ですが、わたくちたちには欠けているものがありました」
「……武力、ですね」
我も時に思うことがあった。
父上ほどの武力がこの身に備わっていたらならと。
「その通りです。ですから日ノ本最強の妖怪王”八岐大蛇”から『女が欲しいと』の要求があった時、わたくちたちの父母、脚摩乳・手摩乳は迷った末にわたくしを差し出すことに決めたのです。最強の妖怪王に王権の権能の加護が合わされば日ノ本を統べるに相応しい王が誕生するに違いないと思ったからです。ですが!」
グイッっと杯をあおり、フゥーと大きく息を吐いて母は言葉を続ける。
「あの男は男としてはともかく! 王としてはダメ! 『王? なにそれおいしいの?』と言い出す始末、あまつさえ『オーゥ! 君はとってもおいしい!』と言ってわたくしを寝所に引き込む始末! 何も考えてない! というか、酒と飯と女のことしか考えていない! わたくしが、他の女に手を出されないよう、あの男にどんなに尽くしたか! あんなことやそんなことまで! 酒! ついで!」
「ちょ、母上!?」
そんな我の言葉を意に介さず、母上は酒瓶を奪い取ると、それを自らの手で器に注ぐ。
「寝所では『凛とした君が乱れるのが見たいな』なーんて甘くささやく始末! 王権が乱れたら国が乱れるんじゃい!! あの時、気丈に振る舞うのがどんなに大変だったか!!」
「ど、どうどう、母上、どうか落ち着いて下さい。酔いも回っているようですし、もう控えたほうが……」
「こんなチビチビとした酒で酔ったりするもんですか! それでね、わたくしの惨状を聞いた下の妹たちがね、わたくしを救い出そうとしてくれたんだけど、返り討ちに遭うならともかく、返り手籠めにされてしまう始末! しかもまんざらじゃないような雰囲気で子作りまでしてるじゃない!? わたくしの立場ってのはどーなってんの!? ここまで王権がないがしろにされたのは初めてだわ!」
……聞きたくなかった、母上の口から『子作り』なんて台詞は。
「でもね、わたちは頑張ったのよ。妹の大半が手籠めにされたり、最後の方には妹自らが身を差し出すようになってしまって、こうなったらあの男を王に相応しいように教育するしかないって! 少しずつだけど、あの男にも理性と教養が生まれてきたのです。ふふーん、どんなもんさ!」
「く、苦労されたのですね。母上は」
「そう! 苦労したの! だけど! そんあ時! 末の櫛名田が天津神の須佐之男と組んであの男を倒しちゃうんじゃない。なにやってんの!? わたくしの苦労がパーじゃない!! あじゃぱー!!」
まずい、かなり話が脱線している。
というか進んでおらぬ。
「ねえ、黄貴、聞いてる!? 安心しなさい、わたくしは貴方を愛してますし、あの男との間に愛が無かったわけじゃないの。男としての魅力はともかく、王としての資質がなかっただけ! 最悪、あの男が酒と飯と女しか頭になくっても、頭のまともな貴方が妖怪王を継いでくれれば、丸く収まると思ってたの!」
「ご、ご安心下さい。いずれ我が妖怪王を継いで日ノ本を……」
「ちっがーう! もう日ノ本を統べるって話はどうでもいいの、そんな時代じゃなくなったんだから。そうそう、全てわたくしの計画通り。ぐふふ、げへへ」
普段の凛とした表情と姿勢とは180度違う態度で、ぐでぇと母上は我の膝に倒れ込む。
母には逢いたかったが、母のこんな姿は見たくなかった。
ああ……、このような日が来るとは、女中には感謝の気持ちしかないが、今日のところは早く帰りたい。
珠子の下へ。
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