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第六章 対決する物語とハッピーエンド
若菜姫とロースハム(前編)
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藍蘭兄さんの記憶の旅が終わり、僕は吐いた。
「ウォ、オッオェェェェェェェェー」
胃の内容物ばビシャビシャと地面に落下。
理由は明白、”真のブラッドソーセージ”。
「あら、お昼はラーメン?」
「橙依おにいちゃん、きたないよ」
「ちょ! なんてものを僕の心に食わせるのさ!!」
僕の心の舌には蛭を噛み潰したプチッという食感と、そこからあふれだす血の味。
「やーねー、別に普通じゃないの。珠子ちゃんだって『ヤマビルをケーシングに使った、牛血ソーセージですって! 食べてみたーい!』なんて言ってたわよ」
本当に言ってそうだから困る……
だけど、それを確かめるために藍蘭兄さんの心をもう一度読むのは御免。
「でもわかったでしょ。アタシがちゃんと理由があって彼女を殺したってことが」
「……それは理解した。兄さんは正しい」
「あったりまえじゃないの。やだもー、正しさと美しさを兼ね備えたパーフェクトボディだなんて、ちょっと照れちゃうわ」
パーフェクトボディなんて言ってないと僕は思ったけど、口にしないことにした。
「……それで、あの侍にはどう説明する?」
「別に説明なんてしなくていいわ。きっとわかってもらえないから」
”あやかし”を生まれ変わらせる権能。
そんな話は眉唾。
僕だって藍蘭兄さんの心を読んでなかったら、”そんなのありえない”って思う。
「……それは危険。いくら藍蘭兄さんでも万が一がある」
「だーいじょうぶよ。何度戦っても負けるっこないって。というか、アタシの心を読んだならわかるでしょ。アタシ、こーみえても、かなり強いのよ」
「藍蘭おにいちゃん、つよーい! すごーい!」
兄さんの言う通り、心を読んで初めて知った、その権能。
”活殺自在”
それは無敵ともとれる権能で、相手の長所を殺し、己の長所を活かす。
永遠に自分の土俵だけで相撲が取れるインチキ権能。
ひょっとしたら、蒼明兄さんより強いかも!?
「それじゃ、お城に行きましょ。あ、でもその前に何か食べたいわね。黒田藩とかどうかしら? うどんのチェーン店だけど、結構おいしいのよ」
そう言って紫君の手を引きながら、藍蘭兄さんは歩く。
ちょっと前の僕だったら、藍蘭兄さんの権能を信用して、あの侍のことは放っていたはず。
ピタッ
「どうしたの? うどんは嫌? だったら、かしわにぎりでも買って、お城でピクニックなんてどうかしら?」
僕の足が止まったのを見て、藍蘭兄さんが声をかける。
「……違う。うどんでいい」
「そう。じゃ、いきましょ」
兄さんはそう言うけど、僕の足は停止。
「ごめん、ちょっと待ってて! あの侍に事情を説明してくる!」
僕はそう言い残すと、あの侍が消えた防風林に向かって駆け出す。
「ちょっとー! ん、もう! ホテルの前で合流だからねー!」
ごめんよ、兄さん。
ちょっと前の僕だったら、藍蘭兄さんの権能を信用して、あの侍のことは放っていた。
だけど僕は知っているんだ。
あの”さまようのろい”のような、認識も出来ずに死をもたらすようなヤツがこの世には居ることを。
万が一にも負けないって言ってたけど、その万が一があるってことを。
◇◇◇◇
少し厚めの防風林の中に侍を発見。
ちょっと気はひけるけど、僕の友達の覚の妖力を使えば、心の声で位置は判明。
侍の位置は朽木の下の地面。
ポフッポフッ
「……おーい、入っていますかー?」
ザバァ!
「ここは雪隠じゃない!」
土を跳ね上げて、侍が僕の前に出現。
「なんだ……さっきの少年か」
「……君に言いたい事がある。藍蘭兄さんのこと」
「あの師匠の仇のことか。何だ?」
「……兄さんが君の師匠の絡新婦を殺したのには理由がある。彼女は人間に生まれ変わるために、その権能がある兄さんに自ら殺されることを望んで、そして死んだ。だから、君が兄さんを仇だと思うのは間違っている」
ハッ
鼻で笑われた。
「そんなの嘘だね。”あやかし”を人間に生まれ変わらせる能力なんて聞いたことがない」
「……嘘じゃない、信じて」
「じゃあ、証拠は?」
うっ、と僕は言葉に詰まる。
「ほら、証拠なんてないだろう」
「……証拠なら、僕には相手の心を読む能力があって、それで兄さんの心を確かめ……」
そこまで言いかけて、僕は言葉に詰まる。
僕は兄さんの心を読んで、それが真実だと知っている。
だけど、彼は僕の言葉が真実だと確かめる術を持ってない。
「やっぱり証拠なんてないんじゃないか」
「……いや、君だって僕の心を読めば」
「どうやって? そんな覚のような能力は俺にはないぞ」
「……お願い、信じて」
もう、そう言うしかなかった。
僕の真剣な表情が侍のつぶらな瞳に映る。
「出直してきな」
最後にそう言い残すと、侍はその掌から蜘蛛の糸を後方に伸ばし、そしてそれに引っ張られるような形で跳躍。
そして、その姿は降りようしている夜の帳に消えた。
◇◇◇◇
ズッ、ズズッ、ズズズー
ホテルの一室に広がってるのは、出汁の香りと、麺をすする音。
モムッモムッ
それに続くはおにぎりを食べる音。
『あああああ、いいなぁー! あたしも、あたしも黒田藩のお持ち帰りたべたーい!』
デデデデデデデン
そして、続くはタブレットから聞こえるテーブルを叩く音。
音の主はもちろん珠子姉さん。
ちょっと行儀悪い。
「……このうどんおいしい。それにのっているゴボ天も」
「まぜごはんのおにぎりもおいし~」
あの後、僕は藍蘭兄さんと紫君と合流。
兄さんは僕の顔を見ても何も言わず『じゃ、黒田藩でお持ち帰りうどんでも買ってホテルに行きましょ』って言ってくれた。
僕の顔が晴れてないのは明白で、きっとそれに気付いてたはずなのに。
「うーん、久しぶりだけどやっぱ美味しいわね。それに懐にも優しいわ」」
「チェーン店だからかな。このまぜごはんおにぎりだって100円しないもん」
紫君が食べているのは鶏肉の入った混ぜご飯のおにぎり。
お値段おどろき1個80円。
それなのに味は良好。
『紫君、それはね”かしわおにぎり”って言うのよ。九州では一般的な鶏が入った混ぜご飯のおにぎりよ。あー、でもいいなー、安くて美味しくて、かしわにぎりとゴボウ天ぷらが標準搭載されてるお店なんて、東京じゃあんまりないからなー』
バリリッとささがきゴボウのかき揚げを食べる音を聞きながら、モニター越しの珠子ねえさんがよだれをジュルリ。
けっこう行儀悪い。
「……でも、珠子姉さんの言った通り、このゴボ天おいしい。歯ごたえも香りもばっちり」
「ホント、九州は美味しいものがいっぱいなんだけど、特にここ、熊本の食事はおいしいわ。どうしてかしら?」
『ああ、それは水ですよ。なんと! 熊本市は上水に全て地下水、つまり湧き水を使っているんです。河川から採っているいるんじゃないんですよ! 人類のえい……ではなく、天然の恵み! 阿蘇の大カルデラの大自然の大勝利なんですっ!』
ふんす! と鼻息を荒くして、モニター越しの珠子姉さんが力説。
手には透明な液体の入ったコップ。
少しお酒が入っているみたい。
「へー」
「そうなんだー」
「……それってすごいの?」
…
……
『ちょっと、みなさん! これがどれだけすごいかわかっていないんですか!? 熊本市は50万の人口を抱える大都市ですよ! その人口をまかなえる湧き水が水道から供給される都市なんて他にありません! 蛇口をひねれば、おいしい水が出てくるんですよ!!』
「え~、ボクは水道からオレンジジュースが出てくる方がいいな~」
『それは愛媛県ですっ! ポンジュース!』
「……お酒が出ると、緑乱兄さんや珠子姉さんが喜ぶと思う」
『それは新潟県のイベントですっ! ポン酒!』
「ねぇ、もっとお腹のふくれるものは出ないの?」
『高松空港にはうどん出汁が出る蛇口がありますっ! うどん県、香川のうどんでおなかポンポン!』
ノリツッコミの要領で珠子姉さんが画面先でクルクルと表情を変化。
可愛い。
でも……人間ってちょっと頭がおかしくない? 蛇口からは水が出るものだよ。
ズズズーっと、そのおいしい水で作られたうどんをすすりながら、僕は思う。
「とまあ、各地の不思議蛇口はさておき、熊本の食べ物が美味しい秘密のひとつは”湧き水の水道水”ですね。麺を茹でるのも、出汁も、ご飯を炊く水も、全て天然のおいしい水で調理するんですから。コストも考えると、料理人にとっては憧れの地です」
「そうだったのね。同じ黒田藩うどんのチェーン店でも博多と熊本じゃ、熊本の方が美味しい気がしたのはそのためね」
『はい、そうだと思います。藍ちゃんさんは敏感な舌をお持ちですね』
「あら、アタシの下が敏感だなんて、珠子ちゃんたら、いやらしいわね」
ブッ
画面の向こうで珠子姉さんがお酒を噴く。
ブボッ
僕もうどんを噴いた。
紫君だけが、意味を理解していないような顔で、僕らを見ていた。
◇◇◇◇
「んふふ、よかったわ。少し橙依ちゃんの顔も明るくなったみたいね」
「ゴホッ……藍蘭兄さんの治療は少し荒療治過ぎ」
ちょっとむせちゃったじゃないか。
「あら、お腹をふくらまして笑えば、たいていの問題は心の中で解決するものよ」
だけど、おかげで心が少し軽くなった。
兄さんがあの侍に誤解されたままは嫌。
それに最期に彼は『出直してきな』との言葉。
僕の『信じて』という台詞を少しだけど信頼してくれた証。
僕の言葉を完全に信じていないなら、もう一度の機会なんて与えてくれるはずがない。
だから、僕はその少しの信頼に、大きな信頼で返したいと思う。
「……ねぇ、珠子姉さん」
『なあに? また、なにか作って欲しい料理でもあるの?』
「……うん。ねぇ”食べるだけで信頼が生まれる料理”ってない?」
『あいかわらず無茶をおっしゃる!』
「……ごめん」
『ああ、いいのよ。こっちこそごめんね。でも難しいわね……信頼ってのは積み重ねるものであって、一朝一夕に出来上がるものじゃないから』
頭に指を当てて、珠子姉さんは悩む。
『せめて、その相手の人となりというか、”あやかし”となりがわかると少しはアイディアが浮かぶかもしれないのですが……』
「うーん、あの子のことはアタシも良く知らないのよね。絡新婦ちゃんのお弟子ちゃんみたいなんだけど」
『そうなんですか。その絡新婦さんの好物とかってわかります?』
「えっと、ブラッドソーセージが好きっていってたわ」
ウッ
僕は兄さんの記憶の中で味わった、あの”真のブラッドソーセージ”を思い出し、ちょっとえづく。
『どうしたの橙依君? 顔が少し青いよ』
「……大丈夫。大した事ない」
『そう、身体に気を付けてね。んー、ブラッドソーセージですか。珍しいですね。昼に藍蘭さんともお話したんですけど、日本ではブラッドソーセージは中々ありませんでしたから。今でも通販か大都市の専門店か百貨店でないと買えないですしね』
うん、知ってる。
国産ブラッドソーセージが激レアで、藍蘭兄さんが買ったそのお土産を珠子姉さんが楽しみにしていることも。
『その絡新婦さんはどこでブラッドソーセージを知ったんでしょうか』
「んー、確か熊本に囚われたドイツ人ちゃんから学んだって聞いたわ」
『熊本に囚われたドイツ人? それって100年前のことですか?』
「ああ、なんかそんな事を言ってたわね」
…
……
『100年前、熊本、ソーセージ。だとすると、日ハムのヘルマン・ウォルシュケさんじゃありませんね。あの人の収容所は大阪と広島の似島でしたから……』
「なぁに、野球の話?」
『いえ、料理偉人の話です。おそらくですが、そのドイツ人とは”アウグスト・ローマイヤー”さんじゃないかしら。ローマイヤーハムの創始者です』
「……誰?」
ヘルマンもローマイヤーもドイツっぽい人名だとわかるけど、そんな人を僕は知らない。
学校の歴史の教科書にも出ていない。
ホント、誰?
『”アウグスト・ローマイヤー”さんはドイツ人で日本でロースハムを発明した方です。第一次世界大戦で青島で日本軍の捕虜となり、熊本の収容所に送られました。そこでドイツのハムやソーセージの作り方を日本人に教えてくれました。日本では需要の低かったロース肉でハムを作り、それをロースハムとして販売することで、日本のハム文化の広がりに貢献したのです』
「あら、戦争の捕虜になって収容所で無理やり働かされていたのかしら?」
『いえいえ、当時としては人道的な待遇だったみたいですよ。その証拠に戦後ローマイヤーさんは東京の帝国ホテルに勤め、間もなく大崎にローマイヤー・ソーセージ製造所という会社を設立しています。日本が好きになったみたいですね。日本人の妻も娶っていますし、今は横浜の外国人墓地で眠っています』
「……確かに、収容所でひどい目に遭わされたなら、戦後、ドイツに帰国するはず」
『その通りです。捕虜といっても、結構、自由もあったんじゃないんでしょうか、その絡新婦さんにブラッドソーセージを教えられるくらいには。きっと普通のハムやソーセージも教えたと思います』
「じゃ、絡新婦の弟子のあの子もそのローマイヤーって人のレシピで作ったハムやソーセージの味を知ってるかもしれないってわけね」
『はい、その味を再現してみせれば、信頼を得る鍵になるんじゃないでしょうか』
珠子姉さんの言う事には一理ある。
だって、”あやかし”が”あやかし”に料理を教えるなんてことは、まずないから。
その味を味合わせてみせれば、それは、その”あやかし”との仲が悪くなかった証拠。
「……わかった。そのローマイヤーのハムやソーセージを手に入れよう。どこに行けばいい? 東京?」
ローマイヤー銘柄のハムやソーセージは東京の百貨店で見た。
『それもいいですけど、やっぱ一工夫欲しいですね……。よしっ、ローマイヤーだけじゃなく別のメーカーも加えましょう! ちょうど九州土産に買って欲しいと思ってたんですよね』
チラッ
そう言って画面越しの珠子姉さんは僕に目線。
……あの侍の分だけでなく、珠子姉さんの分も買い出しに行かされる予感。
しかも大量に。
でも、珠子姉さんが喜んでくれるなら、それもいい。
「……わかった、どこに行けばいいの。僕の瞬間移動と異空間格納庫で買い出しに行く」
僕の瞬間移動は僕と特定の場所をつなぐ亜空間回廊を生成する能力。
特定の場所には、目印が必要。
というか、僕がハッキリと憶えている所だけ。
具体的には『酒処 七王子』とか『あやをかし学園』とか、東京駅みたいな移動に便利なターミナルとか。
一応、この九州旅行では博多駅に目印を付けた。
『あら、わるいわね~。んじゃあ、ちょっと北九まで買い出しに行ってくれない』
「……北九州だね、了解」
良かった、北九州なら博多から新幹線も特急もある。
『そこの八幡に直売所があるから。住所はメールしとくね』
「……はーい」
「ウォ、オッオェェェェェェェェー」
胃の内容物ばビシャビシャと地面に落下。
理由は明白、”真のブラッドソーセージ”。
「あら、お昼はラーメン?」
「橙依おにいちゃん、きたないよ」
「ちょ! なんてものを僕の心に食わせるのさ!!」
僕の心の舌には蛭を噛み潰したプチッという食感と、そこからあふれだす血の味。
「やーねー、別に普通じゃないの。珠子ちゃんだって『ヤマビルをケーシングに使った、牛血ソーセージですって! 食べてみたーい!』なんて言ってたわよ」
本当に言ってそうだから困る……
だけど、それを確かめるために藍蘭兄さんの心をもう一度読むのは御免。
「でもわかったでしょ。アタシがちゃんと理由があって彼女を殺したってことが」
「……それは理解した。兄さんは正しい」
「あったりまえじゃないの。やだもー、正しさと美しさを兼ね備えたパーフェクトボディだなんて、ちょっと照れちゃうわ」
パーフェクトボディなんて言ってないと僕は思ったけど、口にしないことにした。
「……それで、あの侍にはどう説明する?」
「別に説明なんてしなくていいわ。きっとわかってもらえないから」
”あやかし”を生まれ変わらせる権能。
そんな話は眉唾。
僕だって藍蘭兄さんの心を読んでなかったら、”そんなのありえない”って思う。
「……それは危険。いくら藍蘭兄さんでも万が一がある」
「だーいじょうぶよ。何度戦っても負けるっこないって。というか、アタシの心を読んだならわかるでしょ。アタシ、こーみえても、かなり強いのよ」
「藍蘭おにいちゃん、つよーい! すごーい!」
兄さんの言う通り、心を読んで初めて知った、その権能。
”活殺自在”
それは無敵ともとれる権能で、相手の長所を殺し、己の長所を活かす。
永遠に自分の土俵だけで相撲が取れるインチキ権能。
ひょっとしたら、蒼明兄さんより強いかも!?
「それじゃ、お城に行きましょ。あ、でもその前に何か食べたいわね。黒田藩とかどうかしら? うどんのチェーン店だけど、結構おいしいのよ」
そう言って紫君の手を引きながら、藍蘭兄さんは歩く。
ちょっと前の僕だったら、藍蘭兄さんの権能を信用して、あの侍のことは放っていたはず。
ピタッ
「どうしたの? うどんは嫌? だったら、かしわにぎりでも買って、お城でピクニックなんてどうかしら?」
僕の足が止まったのを見て、藍蘭兄さんが声をかける。
「……違う。うどんでいい」
「そう。じゃ、いきましょ」
兄さんはそう言うけど、僕の足は停止。
「ごめん、ちょっと待ってて! あの侍に事情を説明してくる!」
僕はそう言い残すと、あの侍が消えた防風林に向かって駆け出す。
「ちょっとー! ん、もう! ホテルの前で合流だからねー!」
ごめんよ、兄さん。
ちょっと前の僕だったら、藍蘭兄さんの権能を信用して、あの侍のことは放っていた。
だけど僕は知っているんだ。
あの”さまようのろい”のような、認識も出来ずに死をもたらすようなヤツがこの世には居ることを。
万が一にも負けないって言ってたけど、その万が一があるってことを。
◇◇◇◇
少し厚めの防風林の中に侍を発見。
ちょっと気はひけるけど、僕の友達の覚の妖力を使えば、心の声で位置は判明。
侍の位置は朽木の下の地面。
ポフッポフッ
「……おーい、入っていますかー?」
ザバァ!
「ここは雪隠じゃない!」
土を跳ね上げて、侍が僕の前に出現。
「なんだ……さっきの少年か」
「……君に言いたい事がある。藍蘭兄さんのこと」
「あの師匠の仇のことか。何だ?」
「……兄さんが君の師匠の絡新婦を殺したのには理由がある。彼女は人間に生まれ変わるために、その権能がある兄さんに自ら殺されることを望んで、そして死んだ。だから、君が兄さんを仇だと思うのは間違っている」
ハッ
鼻で笑われた。
「そんなの嘘だね。”あやかし”を人間に生まれ変わらせる能力なんて聞いたことがない」
「……嘘じゃない、信じて」
「じゃあ、証拠は?」
うっ、と僕は言葉に詰まる。
「ほら、証拠なんてないだろう」
「……証拠なら、僕には相手の心を読む能力があって、それで兄さんの心を確かめ……」
そこまで言いかけて、僕は言葉に詰まる。
僕は兄さんの心を読んで、それが真実だと知っている。
だけど、彼は僕の言葉が真実だと確かめる術を持ってない。
「やっぱり証拠なんてないんじゃないか」
「……いや、君だって僕の心を読めば」
「どうやって? そんな覚のような能力は俺にはないぞ」
「……お願い、信じて」
もう、そう言うしかなかった。
僕の真剣な表情が侍のつぶらな瞳に映る。
「出直してきな」
最後にそう言い残すと、侍はその掌から蜘蛛の糸を後方に伸ばし、そしてそれに引っ張られるような形で跳躍。
そして、その姿は降りようしている夜の帳に消えた。
◇◇◇◇
ズッ、ズズッ、ズズズー
ホテルの一室に広がってるのは、出汁の香りと、麺をすする音。
モムッモムッ
それに続くはおにぎりを食べる音。
『あああああ、いいなぁー! あたしも、あたしも黒田藩のお持ち帰りたべたーい!』
デデデデデデデン
そして、続くはタブレットから聞こえるテーブルを叩く音。
音の主はもちろん珠子姉さん。
ちょっと行儀悪い。
「……このうどんおいしい。それにのっているゴボ天も」
「まぜごはんのおにぎりもおいし~」
あの後、僕は藍蘭兄さんと紫君と合流。
兄さんは僕の顔を見ても何も言わず『じゃ、黒田藩でお持ち帰りうどんでも買ってホテルに行きましょ』って言ってくれた。
僕の顔が晴れてないのは明白で、きっとそれに気付いてたはずなのに。
「うーん、久しぶりだけどやっぱ美味しいわね。それに懐にも優しいわ」」
「チェーン店だからかな。このまぜごはんおにぎりだって100円しないもん」
紫君が食べているのは鶏肉の入った混ぜご飯のおにぎり。
お値段おどろき1個80円。
それなのに味は良好。
『紫君、それはね”かしわおにぎり”って言うのよ。九州では一般的な鶏が入った混ぜご飯のおにぎりよ。あー、でもいいなー、安くて美味しくて、かしわにぎりとゴボウ天ぷらが標準搭載されてるお店なんて、東京じゃあんまりないからなー』
バリリッとささがきゴボウのかき揚げを食べる音を聞きながら、モニター越しの珠子ねえさんがよだれをジュルリ。
けっこう行儀悪い。
「……でも、珠子姉さんの言った通り、このゴボ天おいしい。歯ごたえも香りもばっちり」
「ホント、九州は美味しいものがいっぱいなんだけど、特にここ、熊本の食事はおいしいわ。どうしてかしら?」
『ああ、それは水ですよ。なんと! 熊本市は上水に全て地下水、つまり湧き水を使っているんです。河川から採っているいるんじゃないんですよ! 人類のえい……ではなく、天然の恵み! 阿蘇の大カルデラの大自然の大勝利なんですっ!』
ふんす! と鼻息を荒くして、モニター越しの珠子姉さんが力説。
手には透明な液体の入ったコップ。
少しお酒が入っているみたい。
「へー」
「そうなんだー」
「……それってすごいの?」
…
……
『ちょっと、みなさん! これがどれだけすごいかわかっていないんですか!? 熊本市は50万の人口を抱える大都市ですよ! その人口をまかなえる湧き水が水道から供給される都市なんて他にありません! 蛇口をひねれば、おいしい水が出てくるんですよ!!』
「え~、ボクは水道からオレンジジュースが出てくる方がいいな~」
『それは愛媛県ですっ! ポンジュース!』
「……お酒が出ると、緑乱兄さんや珠子姉さんが喜ぶと思う」
『それは新潟県のイベントですっ! ポン酒!』
「ねぇ、もっとお腹のふくれるものは出ないの?」
『高松空港にはうどん出汁が出る蛇口がありますっ! うどん県、香川のうどんでおなかポンポン!』
ノリツッコミの要領で珠子姉さんが画面先でクルクルと表情を変化。
可愛い。
でも……人間ってちょっと頭がおかしくない? 蛇口からは水が出るものだよ。
ズズズーっと、そのおいしい水で作られたうどんをすすりながら、僕は思う。
「とまあ、各地の不思議蛇口はさておき、熊本の食べ物が美味しい秘密のひとつは”湧き水の水道水”ですね。麺を茹でるのも、出汁も、ご飯を炊く水も、全て天然のおいしい水で調理するんですから。コストも考えると、料理人にとっては憧れの地です」
「そうだったのね。同じ黒田藩うどんのチェーン店でも博多と熊本じゃ、熊本の方が美味しい気がしたのはそのためね」
『はい、そうだと思います。藍ちゃんさんは敏感な舌をお持ちですね』
「あら、アタシの下が敏感だなんて、珠子ちゃんたら、いやらしいわね」
ブッ
画面の向こうで珠子姉さんがお酒を噴く。
ブボッ
僕もうどんを噴いた。
紫君だけが、意味を理解していないような顔で、僕らを見ていた。
◇◇◇◇
「んふふ、よかったわ。少し橙依ちゃんの顔も明るくなったみたいね」
「ゴホッ……藍蘭兄さんの治療は少し荒療治過ぎ」
ちょっとむせちゃったじゃないか。
「あら、お腹をふくらまして笑えば、たいていの問題は心の中で解決するものよ」
だけど、おかげで心が少し軽くなった。
兄さんがあの侍に誤解されたままは嫌。
それに最期に彼は『出直してきな』との言葉。
僕の『信じて』という台詞を少しだけど信頼してくれた証。
僕の言葉を完全に信じていないなら、もう一度の機会なんて与えてくれるはずがない。
だから、僕はその少しの信頼に、大きな信頼で返したいと思う。
「……ねぇ、珠子姉さん」
『なあに? また、なにか作って欲しい料理でもあるの?』
「……うん。ねぇ”食べるだけで信頼が生まれる料理”ってない?」
『あいかわらず無茶をおっしゃる!』
「……ごめん」
『ああ、いいのよ。こっちこそごめんね。でも難しいわね……信頼ってのは積み重ねるものであって、一朝一夕に出来上がるものじゃないから』
頭に指を当てて、珠子姉さんは悩む。
『せめて、その相手の人となりというか、”あやかし”となりがわかると少しはアイディアが浮かぶかもしれないのですが……』
「うーん、あの子のことはアタシも良く知らないのよね。絡新婦ちゃんのお弟子ちゃんみたいなんだけど」
『そうなんですか。その絡新婦さんの好物とかってわかります?』
「えっと、ブラッドソーセージが好きっていってたわ」
ウッ
僕は兄さんの記憶の中で味わった、あの”真のブラッドソーセージ”を思い出し、ちょっとえづく。
『どうしたの橙依君? 顔が少し青いよ』
「……大丈夫。大した事ない」
『そう、身体に気を付けてね。んー、ブラッドソーセージですか。珍しいですね。昼に藍蘭さんともお話したんですけど、日本ではブラッドソーセージは中々ありませんでしたから。今でも通販か大都市の専門店か百貨店でないと買えないですしね』
うん、知ってる。
国産ブラッドソーセージが激レアで、藍蘭兄さんが買ったそのお土産を珠子姉さんが楽しみにしていることも。
『その絡新婦さんはどこでブラッドソーセージを知ったんでしょうか』
「んー、確か熊本に囚われたドイツ人ちゃんから学んだって聞いたわ」
『熊本に囚われたドイツ人? それって100年前のことですか?』
「ああ、なんかそんな事を言ってたわね」
…
……
『100年前、熊本、ソーセージ。だとすると、日ハムのヘルマン・ウォルシュケさんじゃありませんね。あの人の収容所は大阪と広島の似島でしたから……』
「なぁに、野球の話?」
『いえ、料理偉人の話です。おそらくですが、そのドイツ人とは”アウグスト・ローマイヤー”さんじゃないかしら。ローマイヤーハムの創始者です』
「……誰?」
ヘルマンもローマイヤーもドイツっぽい人名だとわかるけど、そんな人を僕は知らない。
学校の歴史の教科書にも出ていない。
ホント、誰?
『”アウグスト・ローマイヤー”さんはドイツ人で日本でロースハムを発明した方です。第一次世界大戦で青島で日本軍の捕虜となり、熊本の収容所に送られました。そこでドイツのハムやソーセージの作り方を日本人に教えてくれました。日本では需要の低かったロース肉でハムを作り、それをロースハムとして販売することで、日本のハム文化の広がりに貢献したのです』
「あら、戦争の捕虜になって収容所で無理やり働かされていたのかしら?」
『いえいえ、当時としては人道的な待遇だったみたいですよ。その証拠に戦後ローマイヤーさんは東京の帝国ホテルに勤め、間もなく大崎にローマイヤー・ソーセージ製造所という会社を設立しています。日本が好きになったみたいですね。日本人の妻も娶っていますし、今は横浜の外国人墓地で眠っています』
「……確かに、収容所でひどい目に遭わされたなら、戦後、ドイツに帰国するはず」
『その通りです。捕虜といっても、結構、自由もあったんじゃないんでしょうか、その絡新婦さんにブラッドソーセージを教えられるくらいには。きっと普通のハムやソーセージも教えたと思います』
「じゃ、絡新婦の弟子のあの子もそのローマイヤーって人のレシピで作ったハムやソーセージの味を知ってるかもしれないってわけね」
『はい、その味を再現してみせれば、信頼を得る鍵になるんじゃないでしょうか』
珠子姉さんの言う事には一理ある。
だって、”あやかし”が”あやかし”に料理を教えるなんてことは、まずないから。
その味を味合わせてみせれば、それは、その”あやかし”との仲が悪くなかった証拠。
「……わかった。そのローマイヤーのハムやソーセージを手に入れよう。どこに行けばいい? 東京?」
ローマイヤー銘柄のハムやソーセージは東京の百貨店で見た。
『それもいいですけど、やっぱ一工夫欲しいですね……。よしっ、ローマイヤーだけじゃなく別のメーカーも加えましょう! ちょうど九州土産に買って欲しいと思ってたんですよね』
チラッ
そう言って画面越しの珠子姉さんは僕に目線。
……あの侍の分だけでなく、珠子姉さんの分も買い出しに行かされる予感。
しかも大量に。
でも、珠子姉さんが喜んでくれるなら、それもいい。
「……わかった、どこに行けばいいの。僕の瞬間移動と異空間格納庫で買い出しに行く」
僕の瞬間移動は僕と特定の場所をつなぐ亜空間回廊を生成する能力。
特定の場所には、目印が必要。
というか、僕がハッキリと憶えている所だけ。
具体的には『酒処 七王子』とか『あやをかし学園』とか、東京駅みたいな移動に便利なターミナルとか。
一応、この九州旅行では博多駅に目印を付けた。
『あら、わるいわね~。んじゃあ、ちょっと北九まで買い出しに行ってくれない』
「……北九州だね、了解」
良かった、北九州なら博多から新幹線も特急もある。
『そこの八幡に直売所があるから。住所はメールしとくね』
「……はーい」
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