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第六章 対決する物語とハッピーエンド
瀬戸大将とシフォンケーキ(中編)
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◇◇◇◇
ふわり
『酒処 七王子』にとっては日常の、一般の家庭にとっても日常かもしれぬ香りが祭りの会場に流れていく。
それは真夏の日差しを受け、大通りへと流れ込む。
「ご休憩所はこちらじゃぞー。今なら握り飯と茶が無料サービスなのじゃー!」
讃美の声が響き渡り、その声と匂いに釣られた人々が集まってくる。
これだけの品を売りさばくとなると、それなりの手が要る。
その助力として、我は我の臣下である三尾の狐である讃美と、鉄鼠である頼豪を呼び寄せた。
ここは陶器市の大通りからは外れておるが、その分、広めに場所が確保出来る。
我はそれを利用し、ここを販売スペースと調理スペースと休憩スペースに分けて設営したのだ。
「まったく、俺に飯炊きをさせるなど……」
「そうは言っておりますが、見事な調理の腕前ではございませんか、頼豪殿」
調理スペースで土鍋で米を炊いているのが頼豪と鳥居。
女中には遠く及ばぬが、まあまあの腕である。
その土鍋が我が瀬戸大将の庵で見つけた品。
「護摩を焚くのも、こまめに飯を炊くのも早々にってね。僧だけに」
……隣で店員に化けている瀬戸大将も張り切っておる。
化けた姿は美形とは言い難いが丸くて愛嬌のある顔だ。
あれならば親しみ易いであろう。
あとは、客が集まれば良いのだが……
「なにあれ? 休憩所だって。ちょっと休んでいきましょう」
「ああ、おむすびと茶がサービスだってさ」
そんな我の心配をよそにふたりの人間が飯の匂いに誘われやってくる。
「いらっしゃいなのじゃ! ゆるりと休むがよい! ほれ、茶と握り飯じゃ」
さささ、と讃美が客を和傘付きの縁台に案内し、煎茶碗に入れた緑茶と、四角い付出皿にのった握り飯を給する。
「あっ、ここ涼しい。お茶も冷たくって嬉しいわ」
縁台に座るなり客のひとりが茶を飲み、一息をつく。
木漏れ日と和傘の効果で、この休憩所はいくぶんか涼しいのだ。
「おや? この握り飯はひょっとして……おこげご飯の握り飯か!?」
「そうじゃ、この米は土鍋炊きでの。ほれ、あそこで握っている通り、おこげの部分も抱き込んで握り飯にしているのじゃ」
讃美の指さす先では瀬戸大将がジャリッ、ジャリッっと杓子で土鍋より飯をすくい、熱々な米を三角に固めている。
ジャリッという音がしているのは、土鍋の下に焦げたご飯がこびりついているからだ。
「へー、土鍋炊きなんて珍しいわね。でも、このおこげご飯って美味しいの?」
「なんだ、知らないのか。おこげご飯のお握りはな、軽く焦げ目のついたご飯が混ぜ込まれてて美味いんだぜ」
そう言って男は握り飯にかぶりつく。
パリッ
煎餅状になった米が軽快な音を立て、男の口に消えていく。
「うん、いける。君も食ってみなよ」
「へぇ、おいしそうね。それじゃ、あたしも」
バリッ
「あっ! おいしい! これって香ばしさとお米の甘さが出ていて、それでいて塩味が効いてて、塩で甘さが引き立っているわ!」
「なっ、うまいだろ。こいつは焼きおにぎりに似ているけど、それとは違っておこげを抱き込んで握ってるから、柔らかい米の中からバリッとした食感が楽しめるんだぜ」
早々にひとつを平らげた男が、二個目のおこげご飯のお握りに手を出していた。
「それにこの黒が基調で白地の模様が入った付出皿もいいわね。お米の白さとおこげの茶が混じったお握りとマッチしているわ」
「そうだな……、すみませーん。この皿と同じ物はありますか?」
「はい、ございますよ。こちらになります」
いそいそと瀬戸大将が客を販売スペースの角皿エリアに案内する。
瀬戸大将の庵で眠っていた焼き物の数々は食器などの日用品が多かった。
焼き物の中には飾るのが目的の物もある。
だが、少なくともここにある大多数は日常使いの物なのだ。
『瀬戸物は庶民の暮らしに密着していました故』
鳥居はそう説明していたが、まったくその通りである。
皿というものは使ってみてこそ価値があると我は思うのだ。
「それじゃあ、これを3セット頂けますか」
「はい! まだサンライズでありますが、3セットまいどあり!」
…
……
………
「あー、コホン、彼が言いたいのはですね……今は午前中でSunriseの時刻ですが、お買い上げ頂いた3セットと日没のSunsetを掛けた……」
最初の客は笑ってくれた。
次の客は『うわっ、さむっ』とか言っていたが。
まあ、笑顔だったから良しとしよう。
◇◇◇◇
カンパーイ!
昨日よりちょっと広さの増した店舗の中に一門の声が響き渡る。
広くなっているのは今日の販売が好調だった故。
「しかし見事でしたな黄貴様。一週間の陶器市の初日に3割ほどが売れてしまうとは」
「この調子ならば最終日も待たずに完売なのじゃ。これも妾の魅力の賜物」
ふふん、と胸を張り讃美が自らの働きをアピールする。
「讃美殿の魅力もさることながら、鳥居殿の慧眼も見事でございましたぞ。まさに鶏眼! 鳥居だけにっ!」
……これは、鳥居の鳥と鶏とかけて、慧眼を鶏眼としたのであろうな。
鳥居は気付くと思うが、他の者は気付かぬかもしれぬ。
ここは我が解説してやるとするか。
「みなの者、瀬戸大将が言うのは……」
「慧眼を鶏眼を掛けるなんて洒落ておるのじゃ」
「鵜の目、鷹の目のみならず、鶏の目までお持ちとは、流石は南町奉行まで昇りつめた鳥居殿であるな」
あれ? みんな気付いておるのか!?
「黄貴様、頼豪殿は平安の世より言葉遊びを嗜んだ高僧。讃美殿は傾国を企てる千年妖狐なれば機知や洒落に富むのは当然かと」
我の表情より何かを読み取ったのか、鳥居が口を開く。
「ええい、我の心情の解説はよい! まあ、今日の鳥居の働きは見事であったぞ。褒めてつかわす」
「殿の言ってみたい王道台詞、その三十二『褒めてつかわす』ありがとうございます」
……こいつ、まだ我の王道ノートの内容を忘れておらぬようだな。
まあ、確かに見事であった。
土鍋で飯を炊き、その香りにつられて来た人間におこげご飯の握り飯と茶を振舞うのが我の策。
だが、鳥居は『王道はそれでよろしいです。ですが、この鳥居が少々肉付けいたしましょう』ともう一品追加したのだ。
小皿に盛られた香の物。
人参の赤、胡瓜の緑、大根と蕪の白、茄子の紫。
皿の釉薬の色に映えるように用意された鮮やかな野菜が、食彩を鮮やかにし、器の魅力を十二分に引き立てた。
結果、店舗用にと和食の店からの大口の注文が何件も入ったのだ。
「鳥居殿の漬物と器の策は見事であった」
「香の物で飯を食べるのは庶民の、倹約の基本でございました故」
鳥居の政策の基本は過度の贅沢を禁止し、質実剛健に暮らすことにあった。
現代は飽食の時代であるがゆえ、その粗食の道が逆に珍しく、衆目を集めるのも当然であるな。
「しかし、最初にこの店の在庫を売り尽くすと聞いた時は『無理ゲーじゃ』とも思ってみたが、何とかなるもんじゃのう」
ウンウンとにこやかな顔で讃美がうなずくが、鳥居の顔は晴れない。
「なんだ、鳥居。何か心配事でもあるのか?」
我の問いに、鳥居は少し考える。
「殿、珠子殿と電話は出来ましたかな? ここは珠子殿の意見も汲んでおくべきかと……」
「なんだ、今の策だけでは不足だというのか?」
「左様、勝ち馬に乗っている時こそ、周囲をよく見つめ、兜の緒を締めるべき所でございます」
女中は昨日は『電波が届かない所……』に居たせいで連絡が付かなかった。
今日はどうであろうか。
我はピポパとスマホを鳴らし、登録してある女中の連絡先をタップする。
『おかけになった電話番号は現在電波の……』
「やはり通じぬな。だが、心配は要らぬぞ、女中は息災でやっているようであるからな」
そう言って我はスマホのSNS画面を見せる。
直接の連絡は付かぬが、女中のSNSに書き込みはある。
今朝は『徹夜明けの駅弁なう』とか書き込んでおった。
「なるほど、どこかの駅のようでありますな。有休を満喫しているのは結構ですな。ですが、ここは状況だけでも伝えておくべきかと……」
「鳥居殿は心配性じゃの。じゃが大丈夫じゃ、これから妾のスカート丈を日ごとに切り詰めていくのでな、それに合わせて客も増えること受け合いじゃ」
讃美が笑ってスカートの裾をパタパタさせるが、鳥居は一瞥するだけ。
「伝えておくべきかと……」
「まったくお堅いのじゃから」とそっぽを向く讃美を横目に鳥居は我の目をじっと見つめる。
部下の真摯な意見には応えねばならぬな。
「わかった。メールで女中に状況を伝えておく。だが、女中は休暇中なのだ、過度な働きは期待してはならぬぞ」
「はい、それでよろしいかと」
我のその言葉を聞くと、鳥居は安心したように酒に手を伸ばした。
◇◇◇◇
「あ、あしたこそがんばろー」
4日後、陶器市も残すところ2日。
だが、初日とは裏腹に我が一門の目は暗い。
理由は明白、売り上げが全く伸びていないのだ。
この時点で売りさばけたのは全体の4割ほど。
初日に3割売れたのに、続く4日で売れたのは1割程度に留まっている。
土鍋炊きのおこげご飯の握り飯は好評で、茶も香の物もすこぶる評判が良い。
客足は確実に増えておるのだが、肝心の売上につながらぬ。
なに悪いのか、わからぬ。
「なあ、主殿、ここは一気に値引き大バーゲンセールを行うしかないと思うのじゃが……」
もはや讃美のスカートの丈は営業停止になりかねない程に短くなっている。
それでも売上が伸びぬ原因が価格にあるとみたのか、讃美が値下げ提案してくる。
「駄目だ。価格はこのままでいく」
だが、我はそれに賛同しなかった。
「え~、なんでじゃ、このままじゃと陶器市が終了してしまうのじゃぞ」
「それはだな……」
ピロロロ……ピロロロ……
「しばし待て、女中からだ」
あの日、女中にはメールで連絡を入れたが返事は来なかった。
おそらく休暇を満喫していたのだろう。
それが、やっと来た。
「我だ」
『あー、黄貴様、やっとつながりました。すみません、ご返事が中々出来なくて。電波悪いんですよ、この列車』
「いや、よい。女中は休暇中なのだから」
『お気遣いありがとうございます。状況はメールで理解しています。それで、どうですか? ひょっとして客足は良いのに売上が下がってたりしません?』
「わかるのか!?」
我がメールしたのは大口の買い付けがあった初日。
売上が非常に好調な時だった。
『あー、やっぱり。あの写真を見て、そうじゃないかと思ったけど、あたしの心配が当たってしまいましたか』
何かを理解したような声で女中が言う。
いや、女中は理解しているのだ、この売上減少の原因を。
「なあなあ、主殿、その写真を妾にも見せてたもれ」
『あっ、讃美さんもいらっしゃるのですか』
「うむ、TV会議モードに切り替えよう。しばし待て」
我はスマホをスタンドに置き、通話モードからTV会議モードに切り替える。
『あー、みえました! みなさーん、お元気ですかー! あたしは死出の旅路の帰り道ですけど、元気でーす!』
モニタ越しに女中が手を振る。
その血色は良く、顔も朗らか。
死出の旅路の復路とか言いおったが、きっと冗談なのであろう。
「初めまして珠子殿。拙者は瀬戸大将と申します」
『あっ、初めまして。黄貴様の臣下で『金の亡者』を務めさせて頂いています。珠子でーす』
金の亡者は務めるものじゃないだろ……
そんなツッコミを入れたくなったが、我はその言葉を押し留めた。
「それで写真はどれじゃ?」
「ああ、これだ」
我はスマホを操作し、珠子に送った写真を表示させる。
「これは、初日の設営時の写真と、終了時の写真じゃな。大口の売上があったので記念に撮ったのじゃ」
「そうですね。何の変容もない写真ですが、窯変がある写真でございます。焼き物だけにっ」
『あははー、おもしろーい』
…
……
………
「殿、これは変化の意味の変容と窯の焼成の中で陶器の色が変わるという意味の窯変を掛けたものでございます。変容と窯変で漢字の読みの並びを逆にして、変容のないの逆、つまり窯変がある、とどのつまり変化のない焼き物がある写真という洒落で」
「ややこしいぞ! 鳥居!」
解説ありがとう、鳥居。
『あははー、江戸時代の言葉遊びは奥が深いですから。例えば”鷹がいなくて小鳥が遊ぶ”、だから小鳥遊、鷹がなしってやっちゃうくらいですからねー』
「左様」
モニタ越しに女中と鳥居がにこやかに笑いあう。
「洒落はいい。女中、この写真から何かわかったのか?」
『洒落は良いというのに、洒落が要らないとは何ぞや!? 洒落は必要です! とまあ、不思議日本語講座はさておき、お客さんが来ているのに売上が下がっているのにはちゃんと理由があります』
「ほほう、それは何故だ?」
『理由は簡単ですよ。初日の和食の店の大量購入された方は、年配の方ばかりじゃありませんでしたか?』
「女中の言う通りだが、それが何か?」
陶器市の年齢層は高い。
若者もいるが、やはり年配の者が多いのは当然のこと。
この程度は驚くべき予想ではない。
『その方々は目利きの優れた方ですよ。だから、良い物を買っていったのです。つまりですね、全商品の中で和食に合う質の良い上位3割を買っていっちゃったんですよ。今、残っているのは中の下、よくて中の中の商品です。これじゃあ、売上が下がるのは自明の理です』
あ!
我ら一門は理解した。
そして気付いた、初日の浮かれようが落とし穴であったことに。
「流石ですな珠子殿。ならば、ここは人類の叡智とやらの出番であろう。ここは愛知だけに」
鳥居……無理するな。
堅物のお前の洒落はきつい。
『おまかせ下さい! へっへっへ、あたしは写真で見つけてしまったのですよ。今や完全に骨董品と化した焼き物を。この写真の右下にあるこれ!』
女中が差す物は真ん中に穴の開いた筒のある凸凹の鉢。
「これは、百年ほど前からの在庫ですな。全く売れる気配がなかった物でございますが、これが役に立つのでございますか?」
女中が示した陶器を持ち、瀬戸大将がそれを眺めながら言う。
『それが焼きに立つのですよ。あたし”洒落は必要ですっ”て言ったじゃないですか。今回の話は”資本主義をぶったおす!” なら、それを食い倒しましょう! 名づけて! ”シフォン主義を食い倒せ!” 作戦ですっ!」
なんだ、その洒落は……
ふわり
『酒処 七王子』にとっては日常の、一般の家庭にとっても日常かもしれぬ香りが祭りの会場に流れていく。
それは真夏の日差しを受け、大通りへと流れ込む。
「ご休憩所はこちらじゃぞー。今なら握り飯と茶が無料サービスなのじゃー!」
讃美の声が響き渡り、その声と匂いに釣られた人々が集まってくる。
これだけの品を売りさばくとなると、それなりの手が要る。
その助力として、我は我の臣下である三尾の狐である讃美と、鉄鼠である頼豪を呼び寄せた。
ここは陶器市の大通りからは外れておるが、その分、広めに場所が確保出来る。
我はそれを利用し、ここを販売スペースと調理スペースと休憩スペースに分けて設営したのだ。
「まったく、俺に飯炊きをさせるなど……」
「そうは言っておりますが、見事な調理の腕前ではございませんか、頼豪殿」
調理スペースで土鍋で米を炊いているのが頼豪と鳥居。
女中には遠く及ばぬが、まあまあの腕である。
その土鍋が我が瀬戸大将の庵で見つけた品。
「護摩を焚くのも、こまめに飯を炊くのも早々にってね。僧だけに」
……隣で店員に化けている瀬戸大将も張り切っておる。
化けた姿は美形とは言い難いが丸くて愛嬌のある顔だ。
あれならば親しみ易いであろう。
あとは、客が集まれば良いのだが……
「なにあれ? 休憩所だって。ちょっと休んでいきましょう」
「ああ、おむすびと茶がサービスだってさ」
そんな我の心配をよそにふたりの人間が飯の匂いに誘われやってくる。
「いらっしゃいなのじゃ! ゆるりと休むがよい! ほれ、茶と握り飯じゃ」
さささ、と讃美が客を和傘付きの縁台に案内し、煎茶碗に入れた緑茶と、四角い付出皿にのった握り飯を給する。
「あっ、ここ涼しい。お茶も冷たくって嬉しいわ」
縁台に座るなり客のひとりが茶を飲み、一息をつく。
木漏れ日と和傘の効果で、この休憩所はいくぶんか涼しいのだ。
「おや? この握り飯はひょっとして……おこげご飯の握り飯か!?」
「そうじゃ、この米は土鍋炊きでの。ほれ、あそこで握っている通り、おこげの部分も抱き込んで握り飯にしているのじゃ」
讃美の指さす先では瀬戸大将がジャリッ、ジャリッっと杓子で土鍋より飯をすくい、熱々な米を三角に固めている。
ジャリッという音がしているのは、土鍋の下に焦げたご飯がこびりついているからだ。
「へー、土鍋炊きなんて珍しいわね。でも、このおこげご飯って美味しいの?」
「なんだ、知らないのか。おこげご飯のお握りはな、軽く焦げ目のついたご飯が混ぜ込まれてて美味いんだぜ」
そう言って男は握り飯にかぶりつく。
パリッ
煎餅状になった米が軽快な音を立て、男の口に消えていく。
「うん、いける。君も食ってみなよ」
「へぇ、おいしそうね。それじゃ、あたしも」
バリッ
「あっ! おいしい! これって香ばしさとお米の甘さが出ていて、それでいて塩味が効いてて、塩で甘さが引き立っているわ!」
「なっ、うまいだろ。こいつは焼きおにぎりに似ているけど、それとは違っておこげを抱き込んで握ってるから、柔らかい米の中からバリッとした食感が楽しめるんだぜ」
早々にひとつを平らげた男が、二個目のおこげご飯のお握りに手を出していた。
「それにこの黒が基調で白地の模様が入った付出皿もいいわね。お米の白さとおこげの茶が混じったお握りとマッチしているわ」
「そうだな……、すみませーん。この皿と同じ物はありますか?」
「はい、ございますよ。こちらになります」
いそいそと瀬戸大将が客を販売スペースの角皿エリアに案内する。
瀬戸大将の庵で眠っていた焼き物の数々は食器などの日用品が多かった。
焼き物の中には飾るのが目的の物もある。
だが、少なくともここにある大多数は日常使いの物なのだ。
『瀬戸物は庶民の暮らしに密着していました故』
鳥居はそう説明していたが、まったくその通りである。
皿というものは使ってみてこそ価値があると我は思うのだ。
「それじゃあ、これを3セット頂けますか」
「はい! まだサンライズでありますが、3セットまいどあり!」
…
……
………
「あー、コホン、彼が言いたいのはですね……今は午前中でSunriseの時刻ですが、お買い上げ頂いた3セットと日没のSunsetを掛けた……」
最初の客は笑ってくれた。
次の客は『うわっ、さむっ』とか言っていたが。
まあ、笑顔だったから良しとしよう。
◇◇◇◇
カンパーイ!
昨日よりちょっと広さの増した店舗の中に一門の声が響き渡る。
広くなっているのは今日の販売が好調だった故。
「しかし見事でしたな黄貴様。一週間の陶器市の初日に3割ほどが売れてしまうとは」
「この調子ならば最終日も待たずに完売なのじゃ。これも妾の魅力の賜物」
ふふん、と胸を張り讃美が自らの働きをアピールする。
「讃美殿の魅力もさることながら、鳥居殿の慧眼も見事でございましたぞ。まさに鶏眼! 鳥居だけにっ!」
……これは、鳥居の鳥と鶏とかけて、慧眼を鶏眼としたのであろうな。
鳥居は気付くと思うが、他の者は気付かぬかもしれぬ。
ここは我が解説してやるとするか。
「みなの者、瀬戸大将が言うのは……」
「慧眼を鶏眼を掛けるなんて洒落ておるのじゃ」
「鵜の目、鷹の目のみならず、鶏の目までお持ちとは、流石は南町奉行まで昇りつめた鳥居殿であるな」
あれ? みんな気付いておるのか!?
「黄貴様、頼豪殿は平安の世より言葉遊びを嗜んだ高僧。讃美殿は傾国を企てる千年妖狐なれば機知や洒落に富むのは当然かと」
我の表情より何かを読み取ったのか、鳥居が口を開く。
「ええい、我の心情の解説はよい! まあ、今日の鳥居の働きは見事であったぞ。褒めてつかわす」
「殿の言ってみたい王道台詞、その三十二『褒めてつかわす』ありがとうございます」
……こいつ、まだ我の王道ノートの内容を忘れておらぬようだな。
まあ、確かに見事であった。
土鍋で飯を炊き、その香りにつられて来た人間におこげご飯の握り飯と茶を振舞うのが我の策。
だが、鳥居は『王道はそれでよろしいです。ですが、この鳥居が少々肉付けいたしましょう』ともう一品追加したのだ。
小皿に盛られた香の物。
人参の赤、胡瓜の緑、大根と蕪の白、茄子の紫。
皿の釉薬の色に映えるように用意された鮮やかな野菜が、食彩を鮮やかにし、器の魅力を十二分に引き立てた。
結果、店舗用にと和食の店からの大口の注文が何件も入ったのだ。
「鳥居殿の漬物と器の策は見事であった」
「香の物で飯を食べるのは庶民の、倹約の基本でございました故」
鳥居の政策の基本は過度の贅沢を禁止し、質実剛健に暮らすことにあった。
現代は飽食の時代であるがゆえ、その粗食の道が逆に珍しく、衆目を集めるのも当然であるな。
「しかし、最初にこの店の在庫を売り尽くすと聞いた時は『無理ゲーじゃ』とも思ってみたが、何とかなるもんじゃのう」
ウンウンとにこやかな顔で讃美がうなずくが、鳥居の顔は晴れない。
「なんだ、鳥居。何か心配事でもあるのか?」
我の問いに、鳥居は少し考える。
「殿、珠子殿と電話は出来ましたかな? ここは珠子殿の意見も汲んでおくべきかと……」
「なんだ、今の策だけでは不足だというのか?」
「左様、勝ち馬に乗っている時こそ、周囲をよく見つめ、兜の緒を締めるべき所でございます」
女中は昨日は『電波が届かない所……』に居たせいで連絡が付かなかった。
今日はどうであろうか。
我はピポパとスマホを鳴らし、登録してある女中の連絡先をタップする。
『おかけになった電話番号は現在電波の……』
「やはり通じぬな。だが、心配は要らぬぞ、女中は息災でやっているようであるからな」
そう言って我はスマホのSNS画面を見せる。
直接の連絡は付かぬが、女中のSNSに書き込みはある。
今朝は『徹夜明けの駅弁なう』とか書き込んでおった。
「なるほど、どこかの駅のようでありますな。有休を満喫しているのは結構ですな。ですが、ここは状況だけでも伝えておくべきかと……」
「鳥居殿は心配性じゃの。じゃが大丈夫じゃ、これから妾のスカート丈を日ごとに切り詰めていくのでな、それに合わせて客も増えること受け合いじゃ」
讃美が笑ってスカートの裾をパタパタさせるが、鳥居は一瞥するだけ。
「伝えておくべきかと……」
「まったくお堅いのじゃから」とそっぽを向く讃美を横目に鳥居は我の目をじっと見つめる。
部下の真摯な意見には応えねばならぬな。
「わかった。メールで女中に状況を伝えておく。だが、女中は休暇中なのだ、過度な働きは期待してはならぬぞ」
「はい、それでよろしいかと」
我のその言葉を聞くと、鳥居は安心したように酒に手を伸ばした。
◇◇◇◇
「あ、あしたこそがんばろー」
4日後、陶器市も残すところ2日。
だが、初日とは裏腹に我が一門の目は暗い。
理由は明白、売り上げが全く伸びていないのだ。
この時点で売りさばけたのは全体の4割ほど。
初日に3割売れたのに、続く4日で売れたのは1割程度に留まっている。
土鍋炊きのおこげご飯の握り飯は好評で、茶も香の物もすこぶる評判が良い。
客足は確実に増えておるのだが、肝心の売上につながらぬ。
なに悪いのか、わからぬ。
「なあ、主殿、ここは一気に値引き大バーゲンセールを行うしかないと思うのじゃが……」
もはや讃美のスカートの丈は営業停止になりかねない程に短くなっている。
それでも売上が伸びぬ原因が価格にあるとみたのか、讃美が値下げ提案してくる。
「駄目だ。価格はこのままでいく」
だが、我はそれに賛同しなかった。
「え~、なんでじゃ、このままじゃと陶器市が終了してしまうのじゃぞ」
「それはだな……」
ピロロロ……ピロロロ……
「しばし待て、女中からだ」
あの日、女中にはメールで連絡を入れたが返事は来なかった。
おそらく休暇を満喫していたのだろう。
それが、やっと来た。
「我だ」
『あー、黄貴様、やっとつながりました。すみません、ご返事が中々出来なくて。電波悪いんですよ、この列車』
「いや、よい。女中は休暇中なのだから」
『お気遣いありがとうございます。状況はメールで理解しています。それで、どうですか? ひょっとして客足は良いのに売上が下がってたりしません?』
「わかるのか!?」
我がメールしたのは大口の買い付けがあった初日。
売上が非常に好調な時だった。
『あー、やっぱり。あの写真を見て、そうじゃないかと思ったけど、あたしの心配が当たってしまいましたか』
何かを理解したような声で女中が言う。
いや、女中は理解しているのだ、この売上減少の原因を。
「なあなあ、主殿、その写真を妾にも見せてたもれ」
『あっ、讃美さんもいらっしゃるのですか』
「うむ、TV会議モードに切り替えよう。しばし待て」
我はスマホをスタンドに置き、通話モードからTV会議モードに切り替える。
『あー、みえました! みなさーん、お元気ですかー! あたしは死出の旅路の帰り道ですけど、元気でーす!』
モニタ越しに女中が手を振る。
その血色は良く、顔も朗らか。
死出の旅路の復路とか言いおったが、きっと冗談なのであろう。
「初めまして珠子殿。拙者は瀬戸大将と申します」
『あっ、初めまして。黄貴様の臣下で『金の亡者』を務めさせて頂いています。珠子でーす』
金の亡者は務めるものじゃないだろ……
そんなツッコミを入れたくなったが、我はその言葉を押し留めた。
「それで写真はどれじゃ?」
「ああ、これだ」
我はスマホを操作し、珠子に送った写真を表示させる。
「これは、初日の設営時の写真と、終了時の写真じゃな。大口の売上があったので記念に撮ったのじゃ」
「そうですね。何の変容もない写真ですが、窯変がある写真でございます。焼き物だけにっ」
『あははー、おもしろーい』
…
……
………
「殿、これは変化の意味の変容と窯の焼成の中で陶器の色が変わるという意味の窯変を掛けたものでございます。変容と窯変で漢字の読みの並びを逆にして、変容のないの逆、つまり窯変がある、とどのつまり変化のない焼き物がある写真という洒落で」
「ややこしいぞ! 鳥居!」
解説ありがとう、鳥居。
『あははー、江戸時代の言葉遊びは奥が深いですから。例えば”鷹がいなくて小鳥が遊ぶ”、だから小鳥遊、鷹がなしってやっちゃうくらいですからねー』
「左様」
モニタ越しに女中と鳥居がにこやかに笑いあう。
「洒落はいい。女中、この写真から何かわかったのか?」
『洒落は良いというのに、洒落が要らないとは何ぞや!? 洒落は必要です! とまあ、不思議日本語講座はさておき、お客さんが来ているのに売上が下がっているのにはちゃんと理由があります』
「ほほう、それは何故だ?」
『理由は簡単ですよ。初日の和食の店の大量購入された方は、年配の方ばかりじゃありませんでしたか?』
「女中の言う通りだが、それが何か?」
陶器市の年齢層は高い。
若者もいるが、やはり年配の者が多いのは当然のこと。
この程度は驚くべき予想ではない。
『その方々は目利きの優れた方ですよ。だから、良い物を買っていったのです。つまりですね、全商品の中で和食に合う質の良い上位3割を買っていっちゃったんですよ。今、残っているのは中の下、よくて中の中の商品です。これじゃあ、売上が下がるのは自明の理です』
あ!
我ら一門は理解した。
そして気付いた、初日の浮かれようが落とし穴であったことに。
「流石ですな珠子殿。ならば、ここは人類の叡智とやらの出番であろう。ここは愛知だけに」
鳥居……無理するな。
堅物のお前の洒落はきつい。
『おまかせ下さい! へっへっへ、あたしは写真で見つけてしまったのですよ。今や完全に骨董品と化した焼き物を。この写真の右下にあるこれ!』
女中が差す物は真ん中に穴の開いた筒のある凸凹の鉢。
「これは、百年ほど前からの在庫ですな。全く売れる気配がなかった物でございますが、これが役に立つのでございますか?」
女中が示した陶器を持ち、瀬戸大将がそれを眺めながら言う。
『それが焼きに立つのですよ。あたし”洒落は必要ですっ”て言ったじゃないですか。今回の話は”資本主義をぶったおす!” なら、それを食い倒しましょう! 名づけて! ”シフォン主義を食い倒せ!” 作戦ですっ!」
なんだ、その洒落は……
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