上 下
81 / 411
第四章 加速する物語とハッピーエンド

飯食い幽霊とバースデーケーキ(中編)

しおりを挟む
◇◇◇◇

 ふんふふふーんと、おねえちゃんの鼻歌が聞こえる。
 ボクはこの間ににげようって橙依とーいおにいちゃんに言ったんだけど、

 「……無駄、そうすると、これから毎日エンドレスでピーマン茄子祭りが始まる」

 おにいちゃんは、すっかりあきらめたみたい。

 「……だけど諦めちゃいけない。僕たちのやるべきことはひとつ」

 そういっておにいちゃんはボクの耳にこしょこしょと話かけた。

 「うん! わかった!」
 「……いまこそ、力を合わせる時」

 やっぱりおにいちゃんはすごいや。
 へへーんだ、これでもうだいじょうぶだもんねー。

 「はい、おまたせ。『茄子と魚貝のアヒージョ』と『丸ごとピーマンのホイル焼き』よ。熱いから気を付けてね」

 そんなボクたちの相談なんて知らないで、おねえちゃんはウキウキ顔でジュージュー音を立てるお皿をもってきたんだ。

 「はい、二皿ずつあるから、ひとつずつ食べてね」
 「……わかった」
 「はーい!」
 「うん、いい返事。それじゃあ、あたしは仕込みに戻るから」

 そう言って、おねえちゃんは台所にもどっていった。
 こっちを、ちらっ、ちらっとみながら。
 だいじょうぶだよ、おねえちゃん、ちゃんと全部たべるから。

 「……よし、作戦開始」
 「はーい」

 ボクたちはすばやく皿をこうかんする。
 ボクの前には『ナスとぎょかいのアヒージョ』がふたつ、おにいちゃんの前には『丸ごとピーマンのホイルやき』がふたつ。

 作戦成功! あとは、パパっと食べちゃうだけ。
 ボクはナスはへーきだし、おにいちゃんはピーマンがへーき。
 ボクはプリッぷりのエビを食べて、うすく切られたナスを食べる。

 カリッ、トロッ

 「おいしーい! このナス、皮がサクサクで中はトロットロでエビさんとか貝のおいしいオイルの味がしみてジューシー!」

 ボクはアヒージョが好き、最後にオイルをパンにつけて食べるのも大好き!
 だって、そのオイルには具のおいしい味がしみているんだもん。
 だけど、これはそのおいしいオイルがナスの中からあふれてくるんだ!

 パクパクパクッとボクはアヒージョを一気に食べ続ける。
 やったあ! このナス料理は、おにいちゃんが食べてるピーマンより絶対おいしいもんね!
 
 「おいしい! このピーマン、甘くって、オツユがあふれていて、やわらかくって、ヘタもタネも食べられる!」

 あれ? 

 「そんなわけないよ。ピーマンは苦いくてかたいんだよ」
 「……ううん、ちがうよ、このピーマンは甘くて柔らかいんだ。それより、茄子がジューシーなはずがないよ。ナスは皮が固くて、中身が味のないスポンジのような味じゃないか」
 「これはちがうよ! 中からおいしいオイルがいっぱーいでてきて、甘くっておいしいんだよ!」
 「……嘘、そんなはずはない」
 「うそじゃないよ! ホントだもん! うそだと思うなら、食べてみてよ!」
 「……わかった」

 おにいちゃんは、そう言うと、フォークでボクのアヒージョからナスとエビをまとめて貫き、口に運ぶ。

 パクッ

 「……嘘だ、こんなはずがない。ナスがおいしいなんて」

 ブスッっとまたボクの皿にフォークがのびる。
 こんどはエビといっしょじゃない、ナスだけ」

 「……おいしい」
 「ほら、言ったでしょ、おいしいって。それよりおにいちゃんの方がうそつきだよ。ピーマンが甘いなんて」

 ボクはうそなんてつかないもん。

 「……うそじゃない。ほら」

 いいにおい、かつおぶしとおしょうゆのにおい。

 「ホントにホント?」
 「……本当、ほら」

 フォークにさされた丸ごとピーマンがボクの前に、ん、とつきだされる。
 それは生の時とはちがって、デレンとうなだれていた。

 「うそだったら絶交だもんね」

 ボクはちょっとだけ口にいれ、ガブッっと歯で食いちぎった。

 ジュワッ

 中から、お汁があふれる。
 あまくってこうばしい、おいしさ満点のジュース。

 「おいしーい! なにこれ!?」
 「……あとは自分で食べな」

 そう言っておにいちゃんはピーマンをお皿ごとボクにわたした。
 これってあれだよね、ピーマンだよね。
 パプリカじゃないよね。
 ボクはよーく確かめながら、ガブッっともうひとくち。

 ジュワー

 またお口の中にひろがったのはおいしいジュース。
 
 「おかしい! おいしい! ピーマンなのに!」
 
 こんなのピーマンじゃない!
 ボクの知っているピーマンはこんなのじゃない!

 「ふっふっふっ、その様子じゃ、ピーマンと茄子の美味しさにやっと気づいたみたいね。はいこれバゲット」

 おねえちゃんが持って来たのはスライスされたパン。

 「……バゲットは理解した。これにアヒージョの残ったオイルをつけて食べろって事だね」
 「半分正解、もう半分はこのバゲットにピーマンにのせたり、アヒージョの茄子をのせて食べてもおいしいのよ」

 おねえちゃんの言葉にボクたちは顔を見合わせ、チョンチョンザクッっとピーマンパンとナスパンを食べたんだ。

 「おいしーい! たっぷりとしたおツユが口の中で広がって!」
 「……旨味の染み出たオイルを余すことなくパンが受け止めている」
 
 そこからは、もう競争。
 ボクたちは先をあらそって、ピーマンとナスのアヒージョを食べたんだ。

 「おいしかった!」
 「……ふぅ」
 「うん、よろしい」

 まっさらなお皿を見ておねえちゃんは満足そうにわらった。

 「でもどーして? どーしてピーマンがおいしかったの?」
 「……ひょっとして、このピーマンとナスはお高いやつ?」
 「ううん、普通のピーマンとナスよ。ピーマンは中の水分を逃がさないように調理すれば苦みが少ないのよ。だから丸ごとホイル焼きにして水分を閉じ込めたの。それにかつお節と醤油で旨味を足したってわけ」

 へー、そうなんだ。
 うん、おツユいっぱいのピーマンっておいしいんだね。

 「ナスは油との相性がとってもいいの。だから薄めの輪切りにして、アヒージョにしたってわけ。魚貝を先に入れて魚貝の旨みがオイルに溶けた後にナスを投入! これでナスが美味しいオイルを吸って、柔らかい身になるってわけよ」
 「……説明不足」

 ちょっと不満そうな顔でおにいちゃんがおねえちゃんを見る。
 
 「あはは、橙依とーいくんにかかっちゃ企業秘密もかたなしね。そうよ、ちょっとした工夫として、ナスの皮に隠し包丁を入れたり、ピュアオリーブオイルをベースに最後にエクストラバージンオリーブオイルを回しかけて香りと風味を増したりしているわ。それよりもなによりも重要なのは、隣で『おいしい!』って言ってくれているお友達がいるって事ね。簡単なようで、意外と難しいのよ」

 へーそうだったんだ。
 ボクとおにいちゃんは友だちじゃなく兄弟だけど、おにいちゃんが『おいしい!』って言ったから、ボクも食べたくなっちゃったんだね。
 
 「まあ、好き嫌いのある子供向け料理のレパートリーはまだまだあるから”飯食い幽霊”ちゃんたちもこれで満足するでしょ」
 「おねえちゃんすごーい、これならきっとだいじょうぶだね」
 「そうよ、これで晴れてみんなはハッピーエンドってわけ。イエーイ」
 「いえーい」

 パチンとボクとおねえちゃんがハイタッチ。

 「……、………、………珠子姉さん」
 「なあに?」
 「……足りない。嫌いな物が食べれるようになるのは嬉しいけど、それじゃあ満足しない」
 「うーん、そうかもねぇ」
 「だったら、みんなが好きな物を用意すればいいと思うよ!」
 
 うん、ナイスアイディア!
 そうだよね、きらいな物より大好きな食べ物があった方がいいよね。

 「なるほど、つまり、飯食い幽霊ちゃんたちが嫌いな食材でもおいしく食べれる料理を用意した上で、みんなが共通で好きな料理をを準備しないと満足しないって事ね」
 「……それは無理。嫌いな食べ物がみんな違うように好きな食べ物もみんな違う。全員が好きな物を用意するのは至難。作る品数が膨大になる」
 
 ボクはおイモのフライが好き!
 だけど、ボクの友だちはアップルパイが好き!
 別の友だちは焼きマシュマロが好き!
 ほんとだー、みんなちがう。
 あの”飯食い幽霊”は何十人もの子どもが集まって”あやかし”になった。
 そのみんなが大好きな食べ物をいーっぱい集めるなんて……ちょっとむりかな?
 
 だけど、ボクは知っている。
 こんな時におねえちゃんが何で言うか。
 
 「だいじょうぶよ! 人類のエンターテイメント叡智にかかれば、そんなのはおちゃのこさいさいのこんこんちきよ! この珠子姉さんに、どーんとまかせなさい!」

 ほら! やっぱり出た! いつものセリフ!

 「……安直、だけど……きっとみんな喜ぶ」

 そんなおねえちゃんを見て、橙依とーいおにいちゃんは嬉しそうに笑ったんだ。

◇◇◇◇

 次の日、おねえちゃんはパーティの準備にとりかかっている。
 おねえちゃんはお料理係、ボクと橙依とーいおにいちゃんが、かざりつけ係。
 ハサミでおりがみをチョキチョキ、わっかにしてつなげるよ。
 おにいちゃんは、もくもくとティッシュでお花を作っている。

 ジュー

 夕方にさしかかると、台所からフライのおいしい音とにおい。
 
 『魚は骨を抜いて細めの短冊形のフライにしまーす、フィッシュスティックがオススメでーす』

 そんなことを言いながら、おりょうりしている。
 
 「まったく、なぜ我がこんなことを……」

 そして、飾りつけは黄貴こうきおにいちゃん。
 ボクたちじゃ手のとどかない、たかーい所でも背がとどくんだよ。

 「だって、飯食い幽霊ちゃんたちってば、黄貴こうき様に言いつけるなんて嘘つくんですもの。ここは家長としてピシッっと言って頂かないと」
 「我の威光を笠に着て良いのは我の臣下のみであるからな。まあ、良いであろう」

 やっぱり嘘だった。
 おねえちゃんとおにいちゃんたちが、がんばったのでパーティのじゅんびはあっという間に終わった。

 「来ますかね」
 「来てもらわねば困る。明日も準備をしたくはないからな。我は忙しいのだ」
 「まーだーかーなー」

 ボクたちはホカホカのお料理をながめながら待つ。

 「……来た」

 キャハハハハハと声が聞こえた。

 「また来たぜー」

 その声と同時に、パクッ、パクッとお芋のフライが消えていく。

 「うん、やっぱポテトフライは最高だぜ! あれ? これはポテトだけじゃないな?」
 「はい、それはお魚のキスのフライですね。キスとポテトのフィッシュアンドチップスです」
 「えー、あたしお魚きらーい」
 「そうかな、けっこううまかったぜ。ほら」

 パクパクパクとフィッシュアンドチップスが消えていく。

 「そーお? それならあたしも……おいしい!」
 「キスは淡白でクセが無いのに旨みはしっかり! とってもおいしいんですよ」

 そう言いながら、おねえちゃんはアルミホイルの包みを開く。
 ボクはあの中身しってるもんねー。

 「うわっ! ピーマン! 俺いらねー」
 「あたしもー」
 「あらま、困りましたね。それじゃあ、紫君しーくんたべてくれる?」
 「はーい」
 
 ボクはきのう食べたから、もうへーき。
 
 ガブッ、ジュワー

 「うーん、おいしー! もっともっと!」
 「はいはい、まだありますからね」

 アルミホイルの包みが開かれるたびに、おしょうゆのいいにおいが広がる。

 「お、おれ、食べてみようかな」
 「バカ! あれはワナだよ! ピーマンがおいしいはずないじゃないか!」
 「で、でも、ちょっとたけなら……」

 目にはみえないけど、飯食い幽霊のひとりがピーマンをガブリ!

 「うめぇ! おいしい汁がいっぱい!」
 「ほんと? にがくない?」

 うそじゃないよ。

 「にがくない、にがくない、うまい!」
 「そう言うなら……、うまーい!」
 
 ほら、ホントだったでしょ。

 「……このナスのアヒージョもいける」
 「うん、いける。……おかわり」
 「ずるーい、あたしもー」

 ボクのとなりでは橙依とーいおにいちゃんが静かにアヒージョを食べている。
 そしてそれに釣られた子もいっぱい。

 「ふんだ! せっかくおいしいものがいっぱいなのに、そんなキライな物ばかり食べるなんてバッカじゃないの。あたしは大好きなそぼろご飯をたべるわ」

 気配が向かったのは三色のそぼろご飯、茶と黄とオレンジの。
 
 「おいしーい! あたし、これすきー! でもこのオレンジのってなにかしら。甘くておいしいわ」
 「それは、すりおろした人参をゴマ油で炒めた”人参そぼろ”ですよ。甘味があっておいしいでしょ」

 ニンジン、その言葉にそぼろご飯が消えていくのが止まる。
 
 「ちがうよ。これニンジンじゃないよ。ニンジン、こんなにおいしくないもん」
 
 ボクもニンジンは、あまり好きじゃない。
 だけど、おねえちゃんが作ったのなら……
 パクッとボクも三色そぼろをひとくち。
 お口の中にひろがる、あまーい味、玉子の甘さとはちがう、あまーい味。

 「おいしー! わかった! これは”ニンジン”じゃないよ! ”おいしいにんじん”だよ!」
 「そっか”おいしいにんじん”なんだ! うん、あたし”おいしいにんじん”だーいすきー!」

 そんなボクたちを見ながら、おねえちゃんは満足そうにうなずいていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】「父に毒殺され母の葬儀までタイムリープしたので、親戚の集まる前で父にやり返してやった」

まほりろ
恋愛
十八歳の私は異母妹に婚約者を奪われ、父と継母に毒殺された。 気がついたら十歳まで時間が巻き戻っていて、母の葬儀の最中だった。 私に毒を飲ませた父と継母が、虫の息の私の耳元で得意げに母を毒殺した経緯を話していたことを思い出した。 母の葬儀が終われば私は屋敷に幽閉され、外部との連絡手段を失ってしまう。 父を断罪できるチャンスは今しかない。 「お父様は悪くないの!  お父様は愛する人と一緒になりたかっただけなの!  だからお父様はお母様に毒をもったの!  お願いお父様を捕まえないで!」 私は声の限りに叫んでいた。 心の奥にほんの少し芽生えた父への殺意とともに。 ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 ※「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※タイトル変更しました。 旧タイトル「父に殺されタイムリープしたので『お父様は悪くないの!お父様は愛する人と一緒になりたくてお母様の食事に毒をもっただけなの!』と叫んでみた」

あやかしとシャチとお嬢様の美味しいご飯日和

二位関りをん
キャラ文芸
昭和17年。ある島の別荘にて病弱な財閥令嬢の千恵子は華族出の母親・ヨシとお手伝いであやかし・濡れ女の沼霧と一緒に暮らしていた。 この別荘及びすぐ近くの海にはあやかし達と、人語を話せるシャチがいる。 「ぜいたくは敵だ」というスローガンはあるが、令嬢らしく時々ぜいたくをしてあやかしやシャチが取ってきた海の幸に山の幸を調理して頂きつつ、薬膳や漢方に詳しい沼霧の手も借りて療養生活を送る千恵子。 戦争を忘れ、ゆっくりとあやかし達と共に美味しいご飯を作って食べる。そんなお話。 ※表紙はaipictorsで生成したものを使用しております。

花鈿の後宮妃 皇帝を守るため、お毒見係になりました

秦朱音@アルファポリス文庫より書籍発売中
キャラ文芸
旧題:花鈿の後宮妃 ~ヒロインに殺される皇帝を守るため、お毒見係になりました 青龍国に住む黄明凛(こう めいりん)は、寺の階段から落ちたことをきっかけに、自分が前世で読んだ中華風ファンタジー小説『玲玉記』の世界に転生していたことに気付く。 小説『玲玉記』の主人公である皇太后・夏玲玉(か れいぎょく)は、皇帝と皇后を暗殺して自らが皇位に着くという強烈キャラ。 玲玉に殺される運命である皇帝&皇后の身に起こる悲劇を阻止して、二人を添い遂げさせてあげたい!そう思った明凛は後宮妃として入内し、二人を陰から支えることに決める。 明凛には額に花鈿のようなアザがあり、その花鈿で毒を浄化できる不思議な力を持っていた。 この力を使って皇帝陛下のお毒見係を買って出れば、とりあえず毒殺は避けられそうだ。 しかしいつまでたっても皇后になるはずの鄭玉蘭(てい ぎょくらん)は現れず、皇帝はただのお毒見係である明凛を寵愛?! そんな中、皇太后が皇帝の実母である楊淑妃を皇統から除名すると言い始め……?! 毒を浄化できる不思議な力を持つ明凛と、過去の出来事で心に傷を負った皇帝の中華後宮ラブストーリーです。

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

虐げられた無能の姉は、あやかし統領に溺愛されています

木村 真理
キャラ文芸
【書籍化、決定しました!発売中です。ありがとうございます! 】←new 【「第6回キャラ文芸大賞」大賞と読者賞をw受賞いたしました。読んでくださった方、応援してくださった方のおかげです。ありがとうございます】 【本編完結しました!ありがとうございます】 初音は、あやかし使いの名門・西園寺家の長女。西園寺家はあやかしを従える術を操ることで、大統国でも有数の名家として名を馳せている。 けれど初音はあやかしを見ることはできるものの、彼らを従えるための術がなにも使えないため「無能」の娘として虐げられていた。優秀な妹・華代とは同じ名門女学校に通うものの、そこでも家での待遇の差が明白であるため、遠巻きにされている。 けれどある日、あやかしたちの統領である高雄が初音の前にあらわれ、彼女に愛をささやくが……。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

処理中です...