13 / 35
13
しおりを挟む
「掛けなさい」
そい言われてラニーと目の前のソファに腰を下ろした。
目の前には厳しい面持ちの男性はゲイル・アンダーソン、ラニーのお父様だ。
「なかなか時間が取れなくて挨拶もしていなかった。すまなかったね」
「……は、い。私こそ、申し訳ありません。こちらから、伺うべきでしたのに」
言葉とは裏腹にその表情は厳しい。会ったことがない方なのでこれが元からのものかは解らないけれど、正直、嫌われているのだろうと思える。緊張のためか、震える声で話す私をお義父さまはじっと見つめる。
「私が屋敷から出さなかったんだ。レイは悪くない」
ラニーがお義父さまに対して少し強い口調で話し、私の手を握った。それを見てか、お義父さまはほんの僅かに眉を上げた。
「何も取って食おうというわけではない、結婚にも反対しなかっただろう」
「……」
ほんの僅かに視線をらラニー向ける。その表情は硬く、彼もまた緊張しているようだった。
「私は息子達がどんな女性を連れてこようと、余程のことがない限り反対する気はない。それに君の事情は知っている、申し訳ないがあらかた調べさせてもらったよ」
それはつまり、私は大丈夫だったということでいいのだろうか、それとも調べた結果、その余程のことがあったからだろうか。
記憶は戻ってきた。けれど全てではなく1部はとても曖昧だ。だから私がその余程のことをしでかしていても、何ら不思議ではないのかもしれない。
「良い女性を妻に迎えたと思っているよ、とても素晴らしい。おかげで私も今まで気付けなかったことに気づくことができた」
ニィっと口の端を持ち上げたお義父さまが、一体何のことを話しているのかは分からない。ただ、私の手を握っているラニーの手は、ピクリと反応し、その力を強めた。
私の知らない何かがあるのだろうか。
「私は君を歓迎するよレイニー」
そういったお義父さまは、手を伸ばし握手を求めた。
なぜ握手を、そう思いながらもその手を取り、ありがとうございますと礼を述べた。
その後、食事をと誘いを受けたがラニーはそれを断った。それによって不興を買ってしまうかとも思ったが、お義父さまは何か面白いものでも見るかのように、ラニーを眺め帰宅を許した。
「今日は父に会ってくれてありがとう」
「私もお会いしたいと思っていましたから」
帰りの車の中でらラニーどこか、考え事をしているようだった。いつもならもっと会話が広がるのに、途切れてしまう。
「きっといいお父様なのでしょうね」
「……どうかな」
「お相手を自由に選んでもいいということは、信頼してくれているということでしょう」
資産も地位もある家庭で自由に相手を選んでいいということは、そうあることではない。通常は、その立場に見合った相手を選ぶことを求められるのだから。
「信頼、どうだろう。ある程度自由は許してくれるけれども、それに見合った責任は求められる。父の中の線を越えなければ罰せられることはなかったが」
ラニーはお義父さまを好きでは無いのか、どこかトゲを感じる気がした。
「……」
黙ってしまったラニーに、少し疲れたと凭れてまぶたを閉じると、ラニーはそっと肩を抱いて髪にキスをくれた。
ラニーには腹違いの弟がいる。だけど、私たちはその話には触れることがない。彼について私がどこまで思い出したかも、伝えていない。ラニーも聞こうとはしないし、私も自分から話そうとも思っていない。
お義父さまの言葉がふっと蘇る。
とても素晴らしい? なにが素晴らしいの?
そい言われてラニーと目の前のソファに腰を下ろした。
目の前には厳しい面持ちの男性はゲイル・アンダーソン、ラニーのお父様だ。
「なかなか時間が取れなくて挨拶もしていなかった。すまなかったね」
「……は、い。私こそ、申し訳ありません。こちらから、伺うべきでしたのに」
言葉とは裏腹にその表情は厳しい。会ったことがない方なのでこれが元からのものかは解らないけれど、正直、嫌われているのだろうと思える。緊張のためか、震える声で話す私をお義父さまはじっと見つめる。
「私が屋敷から出さなかったんだ。レイは悪くない」
ラニーがお義父さまに対して少し強い口調で話し、私の手を握った。それを見てか、お義父さまはほんの僅かに眉を上げた。
「何も取って食おうというわけではない、結婚にも反対しなかっただろう」
「……」
ほんの僅かに視線をらラニー向ける。その表情は硬く、彼もまた緊張しているようだった。
「私は息子達がどんな女性を連れてこようと、余程のことがない限り反対する気はない。それに君の事情は知っている、申し訳ないがあらかた調べさせてもらったよ」
それはつまり、私は大丈夫だったということでいいのだろうか、それとも調べた結果、その余程のことがあったからだろうか。
記憶は戻ってきた。けれど全てではなく1部はとても曖昧だ。だから私がその余程のことをしでかしていても、何ら不思議ではないのかもしれない。
「良い女性を妻に迎えたと思っているよ、とても素晴らしい。おかげで私も今まで気付けなかったことに気づくことができた」
ニィっと口の端を持ち上げたお義父さまが、一体何のことを話しているのかは分からない。ただ、私の手を握っているラニーの手は、ピクリと反応し、その力を強めた。
私の知らない何かがあるのだろうか。
「私は君を歓迎するよレイニー」
そういったお義父さまは、手を伸ばし握手を求めた。
なぜ握手を、そう思いながらもその手を取り、ありがとうございますと礼を述べた。
その後、食事をと誘いを受けたがラニーはそれを断った。それによって不興を買ってしまうかとも思ったが、お義父さまは何か面白いものでも見るかのように、ラニーを眺め帰宅を許した。
「今日は父に会ってくれてありがとう」
「私もお会いしたいと思っていましたから」
帰りの車の中でらラニーどこか、考え事をしているようだった。いつもならもっと会話が広がるのに、途切れてしまう。
「きっといいお父様なのでしょうね」
「……どうかな」
「お相手を自由に選んでもいいということは、信頼してくれているということでしょう」
資産も地位もある家庭で自由に相手を選んでいいということは、そうあることではない。通常は、その立場に見合った相手を選ぶことを求められるのだから。
「信頼、どうだろう。ある程度自由は許してくれるけれども、それに見合った責任は求められる。父の中の線を越えなければ罰せられることはなかったが」
ラニーはお義父さまを好きでは無いのか、どこかトゲを感じる気がした。
「……」
黙ってしまったラニーに、少し疲れたと凭れてまぶたを閉じると、ラニーはそっと肩を抱いて髪にキスをくれた。
ラニーには腹違いの弟がいる。だけど、私たちはその話には触れることがない。彼について私がどこまで思い出したかも、伝えていない。ラニーも聞こうとはしないし、私も自分から話そうとも思っていない。
お義父さまの言葉がふっと蘇る。
とても素晴らしい? なにが素晴らしいの?
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
妻のち愛人。
ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。
「ねーねー、ロナぁー」
甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。
そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。
【完結】愛していないと王子が言った
miniko
恋愛
王子の婚約者であるリリアナは、大好きな彼が「リリアナの事など愛していない」と言っているのを、偶然立ち聞きしてしまう。
「こんな気持ちになるならば、恋など知りたくはなかったのに・・・」
ショックを受けたリリアナは、王子と距離を置こうとするのだが、なかなか上手くいかず・・・。
※合わない場合はそっ閉じお願いします。
※感想欄、ネタバレ有りの振り分けをしていないので、本編未読の方は自己責任で閲覧お願いします。
王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました
鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と
王女殿下の騎士 の話
短いので、サクッと読んでもらえると思います。
読みやすいように、3話に分けました。
毎日1回、予約投稿します。
あなたが望んだ、ただそれだけ
cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。
国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。
カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。
王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。
失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。
公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。
逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。
心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる