ポメラニアン魔王

カム

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三 タケルの話

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「戻りたい。ポメを連れて帰りたいんだ」

 もちろんアパートには戻りたいけど、ポメが一緒じゃないと嫌だ。それに、少し話しただけだけど、虫のゼブと鳥のトリスと、ニンジンのドラコも悪い魔族じゃないって分かってるから、できれば一緒に帰ってアパートで暮らしたい。

「そうか、兄ちゃんならそう言ってくれると思ってたぜ! さすが魔王様の見込んだ人間だな!」

 ケルピが水掻きのついた手でペシペシと俺の肩をたたく。

「そうと決まればすぐに行こう!」
「場所はわかるんですか?」

 ケルピは神妙な顔で頷いた。

「魔王様は多分、勇者や人間たちと決着をつけるつもりだ。それなら最終決戦の場所で間違いない。破壊された魔王様の城があった場所だよ」

***

「うっ……なんか怖いです」
「そうか?」

 水の中からケルピが呼ぶ。
 ケルピは河童の姿から馬のような姿に変化していた。しかも下半身は馬じゃなくて魚っぽい。それとも蛇っぽいのか?
 なんにしろ気持ち悪い。虫のゼブとはまた違った気持ち悪さだ。

「俺は水の王だから、陸上はゆっくりとしか移動できないんだ。水の中じゃないと」
「でもその姿はちょっと……」
「じゃこんなのはどうだ?」

 ケルピは一度水に潜ると、今度は亀のような姿で浮かんで来た。

「これならどうだ?」
「確かに……」

 竜宮城に行った昔話の太郎みたいだけど、半分魚の馬よりはマシかも。

「それにします」

 おそるおそる水辺に近寄って、亀の甲羅にまたがる。亀がちょっと沈んだので腰から下が濡れる事になった。ズボンの裾は捲り上げていたけど、けっこう水浸しだ。でもさすがにパンツ一枚で亀に乗る気にはならなかったので少しくらいの浸水は諦めた。海の水はけっこう冷たい。

「それじゃ行くぜ」
「はいっ」

 亀はゆっくりと進み、河口から川へと侵入した。流れに逆らって進んでいく。

「あの……スピード出てますか?」
「仕方ないだろ。馬の姿じゃないとスピード出ないんだよ」
「じゃあ馬でいいです」
「そうか!」

 ケルピはいきなり亀から馬に変わった。慌てて馬の首にしがみつく。馬はスピードを上げた。


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