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三 タケルの話
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「おおっ、まさしくこれだ」
興奮するポメの前に、銀の冠が飾られている。冠は石の台座の上の赤いクッションの上に堂々と置かれていた。
見つかるかどうか心配していたのに、お城の中が観光地の歴史的建造物でよくある感じの仕様になっていて、順路っていう看板もあるし、地図もあるし、『魔王の冠』とか『謁見の間』とか説明文まで書かれている。
「拷問部屋とかあるぞ、ポメ。捕らえた人間の捕虜を拷問していたと書かれている」
「違う。ここは部下たちと娯楽に興じていた部屋なのだ。人間など面倒な生き物をわざわざ捕まえてどうするのだ」
ふてくされたように話すポメは、とても魔王様には見えない。見た目は完全に少年で、それも見惚れるほどの美少年なのでなんだか信じられなくて何度も頭を撫でたり頬をぷにぷにしてしまった。
「何をするのだ、タケル」
「いや……肌もすべすべだなぁと思って。顔もすごく綺麗だし……」
こんな同級生がいたら間違いなく好きになってただろうな。
「そんな事より王冠だ」
「あっそうか。あの、これ被ってもいいですか?」
近くに警備しているお兄さんがいたので聞いてみると、お兄さんはあっさりと頷いた。
「いいぞ。ちゃんと戻しとけよ。あと壊すなよ」
「ありがとうございます」
ゆるいな。
そこがこの世界のいいところだけど、ゆるすぎて心配だ。日本人の感覚と違うんだろうか。海外のノリってこんな感じかな。
石の台座から銀の王冠を取り上げてポメの頭に載せると、ポメは実に満足そうに微笑んだ。
すごく似合う。美人は何をしても似合っていてずるい。
「いいなぁ、坊主。魔王様になった気分はどうだ?」
警備のお兄さんも何故かノリノリだ。
「魔力強化など、昔はどうでも良かったが、魔力の少ない今となっては非常に助かるな」
ポメはそう言うと、いきなり俺の方に腕を伸ばした。
「え⁉」
いきなり美少年の姿をしたポメがしがみ付いてきて、動揺が隠しきれない。
「どうした?」
「あっ、いや、何でもないです」
「魔力の補充だ」
補充ってなんだよ。こんなに年の離れた美少年に抱きつかれると焦る。でもこの隙に王冠をどうにかしろって事かな。
「ポメ……どうするんだ?」
小声で聞くと、もっと頭を下げろと言うのでそうすると今度は首に腕をまわされて、じっと見つめられる。
もしかしてこれは、目こそ閉じてないけどキスする寸前のポーズじゃないだろうか。
「ポメ……これって」
「早くしろ、タケル」
「何を……?」
「魔力の補充をしたい。獣の姿の時はいつもしていただろう」
まさかと思うけど、もしかして子犬の姿の時にいつも口元をペロペロ舐めていたあれか⁉
「いや、無理! こんな小さい子にそんな事するなんて犯罪だし」
「百年以上生きているから気にするな」
「いや、そういう問題じゃないんだけど!」
「おいおい、どうした?」
不審に思って近づいてきた警備のお兄さんをポメがひと睨みすると、お兄さんはあっという間にその場に倒れるようにして眠ってしまった。
「うわ……ポメがやったのか?」
「眠らせただけだ」
警備のお兄さんをに気を取られていると、唇をかすめるようにペロリと舐められた。
慌ててポメを引き離す。
「タケル、この先私が求めた時は、必ず魔力の補充に付き合うのだぞ」
ちょっと出来る気がしないんだけど……。
興奮するポメの前に、銀の冠が飾られている。冠は石の台座の上の赤いクッションの上に堂々と置かれていた。
見つかるかどうか心配していたのに、お城の中が観光地の歴史的建造物でよくある感じの仕様になっていて、順路っていう看板もあるし、地図もあるし、『魔王の冠』とか『謁見の間』とか説明文まで書かれている。
「拷問部屋とかあるぞ、ポメ。捕らえた人間の捕虜を拷問していたと書かれている」
「違う。ここは部下たちと娯楽に興じていた部屋なのだ。人間など面倒な生き物をわざわざ捕まえてどうするのだ」
ふてくされたように話すポメは、とても魔王様には見えない。見た目は完全に少年で、それも見惚れるほどの美少年なのでなんだか信じられなくて何度も頭を撫でたり頬をぷにぷにしてしまった。
「何をするのだ、タケル」
「いや……肌もすべすべだなぁと思って。顔もすごく綺麗だし……」
こんな同級生がいたら間違いなく好きになってただろうな。
「そんな事より王冠だ」
「あっそうか。あの、これ被ってもいいですか?」
近くに警備しているお兄さんがいたので聞いてみると、お兄さんはあっさりと頷いた。
「いいぞ。ちゃんと戻しとけよ。あと壊すなよ」
「ありがとうございます」
ゆるいな。
そこがこの世界のいいところだけど、ゆるすぎて心配だ。日本人の感覚と違うんだろうか。海外のノリってこんな感じかな。
石の台座から銀の王冠を取り上げてポメの頭に載せると、ポメは実に満足そうに微笑んだ。
すごく似合う。美人は何をしても似合っていてずるい。
「いいなぁ、坊主。魔王様になった気分はどうだ?」
警備のお兄さんも何故かノリノリだ。
「魔力強化など、昔はどうでも良かったが、魔力の少ない今となっては非常に助かるな」
ポメはそう言うと、いきなり俺の方に腕を伸ばした。
「え⁉」
いきなり美少年の姿をしたポメがしがみ付いてきて、動揺が隠しきれない。
「どうした?」
「あっ、いや、何でもないです」
「魔力の補充だ」
補充ってなんだよ。こんなに年の離れた美少年に抱きつかれると焦る。でもこの隙に王冠をどうにかしろって事かな。
「ポメ……どうするんだ?」
小声で聞くと、もっと頭を下げろと言うのでそうすると今度は首に腕をまわされて、じっと見つめられる。
もしかしてこれは、目こそ閉じてないけどキスする寸前のポーズじゃないだろうか。
「ポメ……これって」
「早くしろ、タケル」
「何を……?」
「魔力の補充をしたい。獣の姿の時はいつもしていただろう」
まさかと思うけど、もしかして子犬の姿の時にいつも口元をペロペロ舐めていたあれか⁉
「いや、無理! こんな小さい子にそんな事するなんて犯罪だし」
「百年以上生きているから気にするな」
「いや、そういう問題じゃないんだけど!」
「おいおい、どうした?」
不審に思って近づいてきた警備のお兄さんをポメがひと睨みすると、お兄さんはあっという間にその場に倒れるようにして眠ってしまった。
「うわ……ポメがやったのか?」
「眠らせただけだ」
警備のお兄さんをに気を取られていると、唇をかすめるようにペロリと舐められた。
慌ててポメを引き離す。
「タケル、この先私が求めた時は、必ず魔力の補充に付き合うのだぞ」
ちょっと出来る気がしないんだけど……。
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