ポメラニアン魔王

カム

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三 タケルの話

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村の門には警備の兵士が槍を持って立っていた。
俺とポメを見て声をかけて来る。

「おい、あの騒ぎは何だ?広場で何かあったのか?」
「すみません、外に出してもらえませんか?」
「おいおい、夜は門を閉鎖するに決まってるだろう」
「広場で魔物が暴れてるんです」
「何っ、それを早く言え!」

門の前の兵士は槍を持って広場に向かって走っていった。
誰もいなくなったので外に出ようと思うけど、門には丸太ほどの太さの木製の閂がかけられていたので外そうとポメを下ろす。メルヘンの世界だから魔法の鍵なんかがかかっていてもおかしくないと思ったけど、意外と昔ながらの鍵なんだな。

「タケル、私が開けてやろう」
「えっ!?」

止める間もなくポメが弾丸のように門に突っ込んでいった。すごい音が響く。

「ポメ!!」

木製の門が左右に開いた。丸太は真っ二つになっている。

「大丈夫か!?」

門の先にポメがちょこんと立っていた。あんな強固な門に体当たりするなんて無茶だ。見た目は普通だけど、どこか骨が折れたんじゃないかとオロオロしていると、ポメはブルブルっと身体を震わせた。
首と脚から棘のついた鎖がジャラリと外れる。ポメは得意げに俺を見上げた。

「この程度の破壊ならどうという事はない。だが、鎖を外すのに少しエネルギーを使い過ぎてしまった。まだ魔力が全然足りないのだ」

そう言うと俺の手の匂いをくんくんと嗅いで、手のひらに顎を乗せる。

ポメは確かに普通の子犬とは違う。
何かに思い切りぶつかっても怪我すらしていないし、人語を話すし、部下もいる(虫と鳥だけど)
だけど、鼻をならして甘えて来る姿は普通の子犬と変わらなくて、可愛くて、俺はぎゅっとポメを抱き上げた。

「本当に大丈夫か?怪我してないよな?首輪と鎖が取れて良かった」

ポメはフンと鼻を鳴らした。

「タケル、少し力を分けてもらえないか?」
「力?」
「勇者とまともに戦うには、お前の力がどうしても必要だ」

勇者って、春樹さんだよな……。
どうしても戦わなきゃいけないんだろうか。
見上げて来るポメを撫でていると、後ろから複数の足音と声がした。


「待ちなさい!」

振り向くと賢者さんだった。
美人さんが杖を振りかざして怒っている姿はやっぱり怖い。
その周りには弓矢を構えた兵士たちが固めている。
人生で人に弓矢を向けられたのは初めてだ。刺さったらどうするんだよ。いや、狙ってるって事は刺さってもいいと思ってそうしてるんだよな。

「そこの村人、よくもやってくれましたね。勇者に近づいて騙し、最初から魔王を解放するのが狙いだったのですか!?」

「この子は魔王じゃありません。俺の愛犬のポメです」

足が震えそうになりながらもなんとかそう伝えると、賢者さんは首を振った。

「すっかり魔王に魅了されているようですね……村人に怪我をさせるのは本意ではありませんが、仕方ありません」

賢者さんが杖を振り上げると、兵士達が一斉にこっちに向けて矢を放った。
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