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三 タケルの話
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「えっ、えええっ!!?」
びっくりしすぎて声が裏返った。
夢と同じだ。いや、ちょっと違う?そんなことより俺の気持ちバレてる!?
「……実はそんなことを奈美が言ってて」
春樹さんがくすくす笑いながら続ける。
あれ?からかわれてる?
奈美さんは、春樹先輩と仲のいい美人の先輩だ。スタイルが良くて、優しそうで、たまにアパートにも来てる。
春樹さんとは幼なじみで、幼稚園からずっと一緒らしい。うらやましい。
付き合ってるのか気になるけど、そんなこと聞けないし。
春樹先輩にはたくさんの幼なじみがいて、みんな仲良しなんだ。よく男の先輩達も入り浸っているから、誰かと付き合っているのかはよく分からない。
「好きっていうか……その、尊敬してます。なんでも出来るところとか、誰にでも優しい所とか、かっこいい所とか」
いや、本当は大好きです。
いつか一緒に旅行に行きたいくらいです。こんなお化けの出るボロアパートでも春樹さんと同じ屋根の下だと思うとパラダイスです。
「冗談だったんだけど。嬉しいよ。ありがとう」
「いっ、いえ」
ああ、やばい。顔が赤くなる。
これじゃあ好きって言ってるようなものだよな。引かれてなくて良かった。
「それじゃあ」
「あっ、あの!」
部屋に戻ろうとした春樹さんを慌てて引き止める。
別に何か用があるわけじゃないけど、もう少し話がしたい。
「何?」
「い、いやあの……そういえば、俺、子犬を拾って」
「子犬?」
春樹さんって動物好きだったっけ?嫌いじゃないと思うけど、そういえば聞いたことない。
「あまり吠えない子犬なんですけど、うるさかったらすみません」
吠えると言うより日本語喋ってるけど。
「大丈夫だよ。タケルの部屋とは離れてるから」
うっ、そうだよな。
間に二部屋ある。
「でも、気になるから見に行ってみようかな。部屋で飼ってるの?」
「えっ?」
「タケルの部屋、入っていいかな」
うわあ!
まさか俺の部屋に!?
どうしよう。心の準備が、それにあまり片付いてない。
「あっ、あの……散らかってて」
「男の部屋なんてそんなもんだろ」
そう言うと、春樹さんは俺の持っていた鍵を取り、あっさりと部屋のドアを開けた。
「へえ、けっこう……あれだね」
玄関から中を覗いた春樹さんがよく分からない感想を呟く。
「あ、あれって何ですか?」
「出そうな雰囲気って事だよ」
「えええっ!」
春樹さんはにっこり笑って鍵を返してくれた。
「楽しく暮らしてるから、タケルは鈍いなと思ってたけど、鈍くても何か惹かれるものがあるんだろうな。僕の部屋よりすごいよ」
「春樹先輩、何か感じるんですか?」
「まあね。タケルの部屋は、押し入れあたりがあやしいかな」
「押し入れ……」
思いっきり隣で寝てるよ。
「そういえば一度座敷わらしが……それに、ポメも押し入れを見て吠えてたんです」
「ポメ?拾った子犬?」
「あっ、はい。ポメラニアンかなと思って」
「だからポメなのか」
なんだか春樹さんに笑われてる。
気を取り直して、靴を脱ぎ玄関から中に入る。
昨日片付けておけば良かった。まさか、春樹さんが俺の部屋に来てくれるなんて思わないから、洗濯した服が畳まないままその辺りに置いてある。教科書とノートもぐちゃぐちゃに……これはポメの仕業だな。
「……ただいま。ポメ?」
なんだろう。妙に静かだ。
ポメ、姿が見えないけど寝てるんだろうか。
昨日は飛びついて来たのに。
春樹さんを警戒してるのかな。
そう思ったけどポメの姿は部屋に無かった。
ご飯を食べた食器はある。だけど、こたつ布団をめくって中を覗いてもポメはいない。
お風呂場にもトイレにもいない。もちろん押し入れも。
「ど、どこに行ったんだ?」
「いないのか?」
「鍵をかけて出たのに……」
ふと窓を見ると、犬一匹が通れそうな程開いていた。
「窓が開いてる……!」
慌てて窓から外を覗く。
最悪の状況を想像して手が震えた。
……いない。
一階はアパートの裏庭になっているけど、見渡す限り黒い子犬が倒れているような形跡は無かった。
「どうしよう……」
「大家さんか一階の人に聞いてみたらどうかな。僕も手伝うよ」
「そうします」
春樹さんと二人で部屋を出て、一階の大家さんの部屋に向かう。
ポメが喋れる事を誰にも話していないのに。だから、いなくならないで欲しい。
どうしてあんな小さい子犬を一匹で留守番させたんだろう。
あの可愛い黒い毛並みを、もう二度と撫でられなかったら……そう思うと後悔で胸がキリキリ痛んだ。
びっくりしすぎて声が裏返った。
夢と同じだ。いや、ちょっと違う?そんなことより俺の気持ちバレてる!?
「……実はそんなことを奈美が言ってて」
春樹さんがくすくす笑いながら続ける。
あれ?からかわれてる?
奈美さんは、春樹先輩と仲のいい美人の先輩だ。スタイルが良くて、優しそうで、たまにアパートにも来てる。
春樹さんとは幼なじみで、幼稚園からずっと一緒らしい。うらやましい。
付き合ってるのか気になるけど、そんなこと聞けないし。
春樹先輩にはたくさんの幼なじみがいて、みんな仲良しなんだ。よく男の先輩達も入り浸っているから、誰かと付き合っているのかはよく分からない。
「好きっていうか……その、尊敬してます。なんでも出来るところとか、誰にでも優しい所とか、かっこいい所とか」
いや、本当は大好きです。
いつか一緒に旅行に行きたいくらいです。こんなお化けの出るボロアパートでも春樹さんと同じ屋根の下だと思うとパラダイスです。
「冗談だったんだけど。嬉しいよ。ありがとう」
「いっ、いえ」
ああ、やばい。顔が赤くなる。
これじゃあ好きって言ってるようなものだよな。引かれてなくて良かった。
「それじゃあ」
「あっ、あの!」
部屋に戻ろうとした春樹さんを慌てて引き止める。
別に何か用があるわけじゃないけど、もう少し話がしたい。
「何?」
「い、いやあの……そういえば、俺、子犬を拾って」
「子犬?」
春樹さんって動物好きだったっけ?嫌いじゃないと思うけど、そういえば聞いたことない。
「あまり吠えない子犬なんですけど、うるさかったらすみません」
吠えると言うより日本語喋ってるけど。
「大丈夫だよ。タケルの部屋とは離れてるから」
うっ、そうだよな。
間に二部屋ある。
「でも、気になるから見に行ってみようかな。部屋で飼ってるの?」
「えっ?」
「タケルの部屋、入っていいかな」
うわあ!
まさか俺の部屋に!?
どうしよう。心の準備が、それにあまり片付いてない。
「あっ、あの……散らかってて」
「男の部屋なんてそんなもんだろ」
そう言うと、春樹さんは俺の持っていた鍵を取り、あっさりと部屋のドアを開けた。
「へえ、けっこう……あれだね」
玄関から中を覗いた春樹さんがよく分からない感想を呟く。
「あ、あれって何ですか?」
「出そうな雰囲気って事だよ」
「えええっ!」
春樹さんはにっこり笑って鍵を返してくれた。
「楽しく暮らしてるから、タケルは鈍いなと思ってたけど、鈍くても何か惹かれるものがあるんだろうな。僕の部屋よりすごいよ」
「春樹先輩、何か感じるんですか?」
「まあね。タケルの部屋は、押し入れあたりがあやしいかな」
「押し入れ……」
思いっきり隣で寝てるよ。
「そういえば一度座敷わらしが……それに、ポメも押し入れを見て吠えてたんです」
「ポメ?拾った子犬?」
「あっ、はい。ポメラニアンかなと思って」
「だからポメなのか」
なんだか春樹さんに笑われてる。
気を取り直して、靴を脱ぎ玄関から中に入る。
昨日片付けておけば良かった。まさか、春樹さんが俺の部屋に来てくれるなんて思わないから、洗濯した服が畳まないままその辺りに置いてある。教科書とノートもぐちゃぐちゃに……これはポメの仕業だな。
「……ただいま。ポメ?」
なんだろう。妙に静かだ。
ポメ、姿が見えないけど寝てるんだろうか。
昨日は飛びついて来たのに。
春樹さんを警戒してるのかな。
そう思ったけどポメの姿は部屋に無かった。
ご飯を食べた食器はある。だけど、こたつ布団をめくって中を覗いてもポメはいない。
お風呂場にもトイレにもいない。もちろん押し入れも。
「ど、どこに行ったんだ?」
「いないのか?」
「鍵をかけて出たのに……」
ふと窓を見ると、犬一匹が通れそうな程開いていた。
「窓が開いてる……!」
慌てて窓から外を覗く。
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……いない。
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「どうしよう……」
「大家さんか一階の人に聞いてみたらどうかな。僕も手伝うよ」
「そうします」
春樹さんと二人で部屋を出て、一階の大家さんの部屋に向かう。
ポメが喋れる事を誰にも話していないのに。だから、いなくならないで欲しい。
どうしてあんな小さい子犬を一匹で留守番させたんだろう。
あの可愛い黒い毛並みを、もう二度と撫でられなかったら……そう思うと後悔で胸がキリキリ痛んだ。
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