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誓約
12 幸せな夢
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握ったヒースの手からひんやりした魔力が出てる。気持ちよくて頬やおでこにあてているうちにうとうとして眠ってしまった。
そして夢をみた。
子供の頃のヒースの夢だ。寝る前におもちゃで遊んで、それから一緒のベッドにもぐりこみ、泣いているヒースの涙を舐めたあとはお腹や足の上で丸くなって眠る。ヒースが時々蹴ってきてベッドから落ちそうになったり、逆に抱っこしてもらったり、そんな幸せな夢だった。
***
「父上……」
目を覚ますと真っ暗だった。暗闇の中にヒースの声が聞こえる。まだ起きてるのかな、ヒース。
「申し訳ありません……」
真夜中になってた。部屋の隅に蝋燭の灯りが付いていて、よく目をこらすとヒースがベッドにもたれるようにして眠っていた。だから今のは寝言だ。
そうだよな、ヒースのお父さん亡くなったんだ。お父さんと仲が良さそうなところは見たことがなかったけど、やっぱりショックだよな。
ヒース、そんなところにいないでベッドに入って、一緒に寝よう。
握られた手を引っ張ろうとして、自分の手が違う事に気づいた。
小さい。そして皮膚が硬い。
「ギュッ⁉︎」
なんだかやけにベッドが広いと思ったら、ドラゴン姿に戻ってる。焦って人間に変身する呪文を唱えようとするけど何にも変わらない。ふーっ、ふーっと息を何度も吐いても全然変わらない。
魔力がゼロだ。回復と解毒に無意識に全部の魔力を使ってしまったらしい。ジークさんの飴をもう少し舐めないと。
そっとシーツから出て、ベッドサイドにある瓶に近づこうとしたらいきなり背後から翼を掴まれた。
「ギュッ⁉︎」
「……カル」
ヒースだ。まずいバレた。お腹を刺されても変身せずに耐えたのに。竜の掟に背いてしまった。でもヒースの記憶を消したくない。
「……死ぬな」
ん? バレてない?
ヒースは寝てるみたいだ。これも寝言?
でも目の前に瓶があるのに、ヒースにがっしり掴まれてて身動き取れない。そのままぎゅっと抱きかかえられて、ベッドに引きずり込まれた。
うわわわ。
なんだかいろいろと大変なことになってる。ヒースに思いっきり抱きしめられてる。それもベッドで。俺が誘ったけど、こんなにぎゅっと抱きしめられると、身体がますます熱くなってドキドキする。でも竜の姿だからいろいろまずい。
「キューッ、キューッ!」
「よしよし……暴れるなって……」
「キュイ」
しばらくしたら本格的にヒースの寝息が聞こえてきた。俺を掴んだまま眠ってしまったみたいだ。魔法を使いすぎて疲れてたのかな。完全にバレたと思ってドキドキしたぞ。まあこのまま一緒に眠ってると朝にはバレそうだ。
「……」
でも、もういいかな。ヒースにバレても。だってこんなに幸せなんだ。それにヒースならきっと黙っててくれる。
心臓の鼓動を聴いていると生まれたての頃を思い出して安心する。
腕の中で身体をもそもそ動かしてヒースの顔を眺める。相変わらず美人だけど昔よりずっと大人っぽくなった。昔みたいに泣いてはいないけど、きっと泣きたい気分のはずだ。よじ登って頬をペロペロ舐めると、ヒースは目を閉じたまま少しだけ笑った。
そして夢をみた。
子供の頃のヒースの夢だ。寝る前におもちゃで遊んで、それから一緒のベッドにもぐりこみ、泣いているヒースの涙を舐めたあとはお腹や足の上で丸くなって眠る。ヒースが時々蹴ってきてベッドから落ちそうになったり、逆に抱っこしてもらったり、そんな幸せな夢だった。
***
「父上……」
目を覚ますと真っ暗だった。暗闇の中にヒースの声が聞こえる。まだ起きてるのかな、ヒース。
「申し訳ありません……」
真夜中になってた。部屋の隅に蝋燭の灯りが付いていて、よく目をこらすとヒースがベッドにもたれるようにして眠っていた。だから今のは寝言だ。
そうだよな、ヒースのお父さん亡くなったんだ。お父さんと仲が良さそうなところは見たことがなかったけど、やっぱりショックだよな。
ヒース、そんなところにいないでベッドに入って、一緒に寝よう。
握られた手を引っ張ろうとして、自分の手が違う事に気づいた。
小さい。そして皮膚が硬い。
「ギュッ⁉︎」
なんだかやけにベッドが広いと思ったら、ドラゴン姿に戻ってる。焦って人間に変身する呪文を唱えようとするけど何にも変わらない。ふーっ、ふーっと息を何度も吐いても全然変わらない。
魔力がゼロだ。回復と解毒に無意識に全部の魔力を使ってしまったらしい。ジークさんの飴をもう少し舐めないと。
そっとシーツから出て、ベッドサイドにある瓶に近づこうとしたらいきなり背後から翼を掴まれた。
「ギュッ⁉︎」
「……カル」
ヒースだ。まずいバレた。お腹を刺されても変身せずに耐えたのに。竜の掟に背いてしまった。でもヒースの記憶を消したくない。
「……死ぬな」
ん? バレてない?
ヒースは寝てるみたいだ。これも寝言?
でも目の前に瓶があるのに、ヒースにがっしり掴まれてて身動き取れない。そのままぎゅっと抱きかかえられて、ベッドに引きずり込まれた。
うわわわ。
なんだかいろいろと大変なことになってる。ヒースに思いっきり抱きしめられてる。それもベッドで。俺が誘ったけど、こんなにぎゅっと抱きしめられると、身体がますます熱くなってドキドキする。でも竜の姿だからいろいろまずい。
「キューッ、キューッ!」
「よしよし……暴れるなって……」
「キュイ」
しばらくしたら本格的にヒースの寝息が聞こえてきた。俺を掴んだまま眠ってしまったみたいだ。魔法を使いすぎて疲れてたのかな。完全にバレたと思ってドキドキしたぞ。まあこのまま一緒に眠ってると朝にはバレそうだ。
「……」
でも、もういいかな。ヒースにバレても。だってこんなに幸せなんだ。それにヒースならきっと黙っててくれる。
心臓の鼓動を聴いていると生まれたての頃を思い出して安心する。
腕の中で身体をもそもそ動かしてヒースの顔を眺める。相変わらず美人だけど昔よりずっと大人っぽくなった。昔みたいに泣いてはいないけど、きっと泣きたい気分のはずだ。よじ登って頬をペロペロ舐めると、ヒースは目を閉じたまま少しだけ笑った。
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