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誓約
5 なにしろ本人だから
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「ジェイソンに送らせるから気をつけて帰れ。いいな?」
「一日だけ泊まっていい?」
「だから駄目だと言ってるだろ」
「分かったよ……」
結局ヒースは一緒にいさせてくれなかった。時々薬を届けに来ることだけ許可してくれたけど、気持ちには応えられないってことはそばにいるのも駄目なのかな。しつこくしてるから嫌われたのかな。
ヒースと一緒に廊下に出ると、クラウディアさんはいなくて、ジェイソンと部下の人だけが待っていた。
「王子、お話は終わりましたか」
「ああ」
ジェイソンがちらっと俺を見る。何か言いたげだけど、落ち込んでるからそんなことに構っていられない。
「クラウディアさんは?」
「王妃様方に届け物があるから、先に帰ってくれていいとのことだ」
「ジェイソン、カルを家まで送ってやってくれ」
「分かりました。ではお前たち、私のいない間王子の護衛を頼む」
ジェイソンに引きずられて仕方なく歩く。廊下を曲がるとヒースの姿が見えなくなってさみしくなった。せっかくクラウディアさんが王城に入れてくれたのに。
「ジェイソン、ヒースに黙ってこっそり俺を雇ってよ」
「お前、初対面なのにやけに馴れ馴れしいな。私はともかく、ヒース様は王子だ。庶民なら礼儀をわきまえろ」
「俺、もしかしてヒースに嫌われたのかな。どう思う?」
「聞いているのか、私の話を」
「嫌われてたらどうしよう」
メソメソしている俺を呆れた様子で眺めながら、それでもジェイソンは門の近くまで送ってくれた。
「お前……ヒース様の手紙にあった通り、どことなくカルに似ているな」
「手紙?」
そういえば学園にいる時、ヒースはジェイソンに手紙を書いていた。一度はエリオットに破られたけど、あの後も他の人に頼んで出してた。手紙すら送れない俺って役立たずだ。でもヒースが俺のこと書いてくれてたのは嬉しい。
「聞いたことはないか? ヒース様が子供の頃、卵から孵した子供の竜のことだ」
「知ってるよ」
なにしろ本人だから。ついでにジェイソンのことだって知ってる。男同士の約束をしたんだ。覚えてないだろうけど。
「髪の色や目の色といい……タレ目で憎めない顔といい、後先かんがえず突っ込んで来るところとか、ヒース様のあとをひたすらついて回るところとか、怖がりで鳴いてばかりの所など、そっくりだ。ヒース様がお前を気にかけるのも頷ける」
「ううっ、でも、本当は強い竜なんだよ。ヒースを守って大きくなったり」
「なんだ、見ていたような口ぶりだな。まさかお前、カルの生まれ変わりじゃないだろうな」
「生まれ変わりじゃないよ。カルなんだ」
思わず口を滑らせてしまった。何故かジェイソンにはすんなり秘密をもらしてしまった。竜の掟なのに。
「そうかそうか。そういうことにしておいてやるから、子供は家に帰って寝ろ。情勢が不安定な時に王城をぶらつくのは自殺行為だ。余計な疑いをかけられて投獄されたくないだろう? 少なくとも、ケネス王太子が即位するまでは大人しくしていろ」
魔法をかけて眠らせようかと思ったけど、信じてなさそうだな。
「分かったよ。即位したら王城に来ていい?」
安心したのも束の間、ジェイソンの身体が緊張で強張る。魔法のエネルギーを感じて振り向くと、葬列の時に眺めた王太子、ケネスが部下を連れてこちらに歩いてくるところだった。
「一日だけ泊まっていい?」
「だから駄目だと言ってるだろ」
「分かったよ……」
結局ヒースは一緒にいさせてくれなかった。時々薬を届けに来ることだけ許可してくれたけど、気持ちには応えられないってことはそばにいるのも駄目なのかな。しつこくしてるから嫌われたのかな。
ヒースと一緒に廊下に出ると、クラウディアさんはいなくて、ジェイソンと部下の人だけが待っていた。
「王子、お話は終わりましたか」
「ああ」
ジェイソンがちらっと俺を見る。何か言いたげだけど、落ち込んでるからそんなことに構っていられない。
「クラウディアさんは?」
「王妃様方に届け物があるから、先に帰ってくれていいとのことだ」
「ジェイソン、カルを家まで送ってやってくれ」
「分かりました。ではお前たち、私のいない間王子の護衛を頼む」
ジェイソンに引きずられて仕方なく歩く。廊下を曲がるとヒースの姿が見えなくなってさみしくなった。せっかくクラウディアさんが王城に入れてくれたのに。
「ジェイソン、ヒースに黙ってこっそり俺を雇ってよ」
「お前、初対面なのにやけに馴れ馴れしいな。私はともかく、ヒース様は王子だ。庶民なら礼儀をわきまえろ」
「俺、もしかしてヒースに嫌われたのかな。どう思う?」
「聞いているのか、私の話を」
「嫌われてたらどうしよう」
メソメソしている俺を呆れた様子で眺めながら、それでもジェイソンは門の近くまで送ってくれた。
「お前……ヒース様の手紙にあった通り、どことなくカルに似ているな」
「手紙?」
そういえば学園にいる時、ヒースはジェイソンに手紙を書いていた。一度はエリオットに破られたけど、あの後も他の人に頼んで出してた。手紙すら送れない俺って役立たずだ。でもヒースが俺のこと書いてくれてたのは嬉しい。
「聞いたことはないか? ヒース様が子供の頃、卵から孵した子供の竜のことだ」
「知ってるよ」
なにしろ本人だから。ついでにジェイソンのことだって知ってる。男同士の約束をしたんだ。覚えてないだろうけど。
「髪の色や目の色といい……タレ目で憎めない顔といい、後先かんがえず突っ込んで来るところとか、ヒース様のあとをひたすらついて回るところとか、怖がりで鳴いてばかりの所など、そっくりだ。ヒース様がお前を気にかけるのも頷ける」
「ううっ、でも、本当は強い竜なんだよ。ヒースを守って大きくなったり」
「なんだ、見ていたような口ぶりだな。まさかお前、カルの生まれ変わりじゃないだろうな」
「生まれ変わりじゃないよ。カルなんだ」
思わず口を滑らせてしまった。何故かジェイソンにはすんなり秘密をもらしてしまった。竜の掟なのに。
「そうかそうか。そういうことにしておいてやるから、子供は家に帰って寝ろ。情勢が不安定な時に王城をぶらつくのは自殺行為だ。余計な疑いをかけられて投獄されたくないだろう? 少なくとも、ケネス王太子が即位するまでは大人しくしていろ」
魔法をかけて眠らせようかと思ったけど、信じてなさそうだな。
「分かったよ。即位したら王城に来ていい?」
安心したのも束の間、ジェイソンの身体が緊張で強張る。魔法のエネルギーを感じて振り向くと、葬列の時に眺めた王太子、ケネスが部下を連れてこちらに歩いてくるところだった。
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