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三人の王子

18 竜と人

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「親って……お母さん?」
「不正解。父親だ」
「亡くなった国王のこと?」
「そう。でも言うなよ。側近しか知らない事実だ。俺は知っての通り竜だから、誰がどの程度毒に侵されているか見ればわかる。お前もあるだろ? 人間よりよく見える目が」
「ある」

 目を閉じても道が分かるし、暗闇でも見えるし、毒が料理に入っていれば毒見しなくても分かるようになった。

「調子が悪い人間は見ればわかる。ケネスもさすがに俺から毒を入手したりはしなかったが、国王に会うたびに毒を盛られているのは分かった。病だと本人は信じていたが」

「病気じゃなかったんだね」

「そうだ。でも国王は病が治るという竜の生き血や生き胆を必死で探させていた。竜を目の前にしながら、竜の生き血の話をするものだからため息が出そうだったよ。そんなものなくても、俺ならあんな毒くらい完治できるけどね。まあ、しなかったけど」

「治さなかったの? どうして?」

「人間の争いにはかかわらないことにしてる。国王もケネスも、お得意様ではあるが、特別親しくもない。人間としても好きじゃなかった。竜の掟を破ってまで助ける意味はない。俺が治したところで、別の方法で殺されるだけさ」

 複雑な気持ちになった。二人とも一度しか会ったことないけど、ヒースのお父さんとお兄さんだ。家族で殺し合うなんて。

「お前もチビの時捕まってるんだろ? 成長するまで飼われて少しずつ切り刻まれるところだったんだから情けをかける必要はないぞ。まあ、俺たち竜を飼うなんて人間には絶対に無理だけどな」

「俺、ヒースなら生き血をあげてもいいよ」

「そうそう。竜とは友好を結ぶのがもっとも賢いやり方だ。お前とヒース王子みたいにな。そうすればお互いにいい関係を築けるし、素晴らしい物を手に入れられる。でもそれが人間も竜もわかっていない。大多数の人間は竜を恐れているし、竜もほとんどが人間嫌いだ」

「なんだか、悲しいね」

「そうだな」

 遠い目をしてるクラウディアさん。五百年も生きていたら、俺にはわからない経験をたくさんしているんだろうな。そう思ってウィルを見ると、ウィルも少し悲しそうな顔をしていた。ウィルとクラウディアさんは竜と人なのに仲良しだ。俺だってヒースとは仲良しだ。みんな仲良くできたらいいのに。

***

 クラウディアさんは夕食までお風呂に入ったり、おしゃれをして遊んでいるみたいなので、俺はウィルの手伝いをした。ピカピカに磨かれたキッチンでお肉や野菜を切り分ける。ジークさんの料理より細かくて手が込んでる。

「ウィルはクラウスとクラウディアさんどっちの姿が好き?」
「どちらも敬愛するご主人様にかわりありませんよ」
「でもどっちかというと?」
「そうですね、クラウス様とは友達のように接しています。クラウディア様は、やはり永遠の憧れでしょうか」

 ウィルはそう言ってほんのり赤くなった。女性姿の方が好きみたいだ。

「カル様、お願いがございます」
「何?」
「ご主人様はああ見えて寂しがり屋でございます。私はあと、長くても二十年程度しか生きられません。私が亡くなった後も、ご主人のことをよろしくお願いします。ずっと友人でいてあげて欲しいのです」
「……分かった」

 寿命のことを何も考えてなかった。俺は何年生きるんだろう。そしてヒースは? 俺だけ長生きして、ヒースはウィルみたいにはやく年をとって亡くなってしまうんだろうか。そんなのは嫌だ。いっしょにずっと生きて、同じくらいに死にたい。雲の神殿に二人で行って、それからまた二人で生まれ変わるんだ。アンケートには、恋人同士になりたいって書く。

「ウィル、死んだら雲の上に行くんだよ。そこでクラウスを待ってたらいいよ」

 料理を作っていたウィルは手を止めて微笑んだ。

「それはいいことを聞きました。ありがとうございます。カル様」


 






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