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三人の王子
16 好きだから離れたくない
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「ところでお前ら王都に何しにきた。観光じゃないだろう」
「うん。ヒースに会いにきた」
「ヒース? 第三王子か」
俺は学園でヒースの付き人だったことと、王様が倒れてヒースが王都に帰ってしまったことをクラウスに話した。
執事のウィルが話の途中でお茶を持ってきてくれる。付き人だった時の俺とは全然違うさりげなさだ。さらにクラウスが放り投げた服や装飾品も丁寧に片付けてた。なれてるな。
「一応聞いておくが、会いにきたっていうのは何か理由があるのか?」
「理由って?」
「用があるとか。何か命令されていたとか」
「違うよ。好きだから離れたくないんだ。来るなって言われたけど」
言うとクラウスはちょっと遠い目をした。
「俺も五百年前にはこんな純粋な時代があったのか」
「ご主人にはなさそうですが」
「おい、昔のウィルはもっと優しかったぞ」
「変わったのはご主人のせいですね」
仲がいいなぁ。
「まあいい。そうだろうと思った。五年前に闘技会場で魔物と戦い死んだ竜の噂は聞いていたからな。たしか王族を守ったとか言う話だった。そんなことなら好きになるのはやめておけと言っても無駄だろう。すでに命をかけているのだからな」
「クラウス、あの時会場にいたんだよね」
「ああ。お得意様と一緒にな。あの程度の毒で死ぬとは思わなかったが、なにしろチビだから解毒方法を知らない可能性もある。そのまま王宮に残されたら救出する予定だった。バラバラにされて研究されたり、売られたりするのは嫌だろう?」
「そうなる予定だったの?」
「竜は金になる。ウロコの一枚から内臓にいたるまで、いくらでも金を積む人間はいるだろう。第三王子が引き取って埋葬したと聞いて少し安心していた。毒で死んだと思われたのも幸いだったな。毒に侵されていなければ身体は売られるか薬の材料になっていたはずだ」
「ヒースはそんなことしないよ。優しいんだ」
「そうだな。だがそういった王族は珍しい。お前、ヒースに自分の正体をあかしてないだろうな」
「ジークさんに言われたから秘密にしてるよ」
「おお、やっぱりその変身術はジークのオヤジ直伝だったか。あいつもああ見えて世話焼きだからな。それが賢明だ。正体がバレると命を狙われる。人に変化できる竜の存在があきらかになると俺の仕事にも差し障るから秘密にしてくれ」
「ウィルはいいの?」
そばに控えていたウィルはにこりと笑った。目尻に優しそうな皺がきざまれてる。
「私はご主人様に忠誠を誓っていますので、けっして秘密は漏らしません。魔法使いとして誓約も交わしております」
なるほど。俺もヒースと誓約を交わせばいいのか。そうしたらヒースに正体を話せる。
「何を考えてるか顔に出てるぞ」
「えへへ」
「だが一度冷静に考えてみろ。仲良くしていた人間が竜だと知ったら、引かれるんじゃないか?」
「竜の時も可愛がってくれたよ」
「お子様め。そんな単純なものじゃない。恋愛が絡むと特にな。正体をあかすのは最終手段にしろ」
「うん……」
もしも竜だって話したら、ヒースは絶対に喜んでくれると思ってたけど、そうじゃないのかな。俺がまだ子供だからよくわかっていないのか。五百年生きてる竜から言われると心配になるな。
「ずっとそばにいるのもダメ?」
「とりあえずその話は夕食のときにでもしよう。お前たち、しばらく俺の店に泊まっていくだろ?」
「いいの?」
「もちろん。どうせ国葬が終わるまで警備が厳重で正門は突破できないんだ。この国の不安定な情勢を話してやる」
「うん。ヒースに会いにきた」
「ヒース? 第三王子か」
俺は学園でヒースの付き人だったことと、王様が倒れてヒースが王都に帰ってしまったことをクラウスに話した。
執事のウィルが話の途中でお茶を持ってきてくれる。付き人だった時の俺とは全然違うさりげなさだ。さらにクラウスが放り投げた服や装飾品も丁寧に片付けてた。なれてるな。
「一応聞いておくが、会いにきたっていうのは何か理由があるのか?」
「理由って?」
「用があるとか。何か命令されていたとか」
「違うよ。好きだから離れたくないんだ。来るなって言われたけど」
言うとクラウスはちょっと遠い目をした。
「俺も五百年前にはこんな純粋な時代があったのか」
「ご主人にはなさそうですが」
「おい、昔のウィルはもっと優しかったぞ」
「変わったのはご主人のせいですね」
仲がいいなぁ。
「まあいい。そうだろうと思った。五年前に闘技会場で魔物と戦い死んだ竜の噂は聞いていたからな。たしか王族を守ったとか言う話だった。そんなことなら好きになるのはやめておけと言っても無駄だろう。すでに命をかけているのだからな」
「クラウス、あの時会場にいたんだよね」
「ああ。お得意様と一緒にな。あの程度の毒で死ぬとは思わなかったが、なにしろチビだから解毒方法を知らない可能性もある。そのまま王宮に残されたら救出する予定だった。バラバラにされて研究されたり、売られたりするのは嫌だろう?」
「そうなる予定だったの?」
「竜は金になる。ウロコの一枚から内臓にいたるまで、いくらでも金を積む人間はいるだろう。第三王子が引き取って埋葬したと聞いて少し安心していた。毒で死んだと思われたのも幸いだったな。毒に侵されていなければ身体は売られるか薬の材料になっていたはずだ」
「ヒースはそんなことしないよ。優しいんだ」
「そうだな。だがそういった王族は珍しい。お前、ヒースに自分の正体をあかしてないだろうな」
「ジークさんに言われたから秘密にしてるよ」
「おお、やっぱりその変身術はジークのオヤジ直伝だったか。あいつもああ見えて世話焼きだからな。それが賢明だ。正体がバレると命を狙われる。人に変化できる竜の存在があきらかになると俺の仕事にも差し障るから秘密にしてくれ」
「ウィルはいいの?」
そばに控えていたウィルはにこりと笑った。目尻に優しそうな皺がきざまれてる。
「私はご主人様に忠誠を誓っていますので、けっして秘密は漏らしません。魔法使いとして誓約も交わしております」
なるほど。俺もヒースと誓約を交わせばいいのか。そうしたらヒースに正体を話せる。
「何を考えてるか顔に出てるぞ」
「えへへ」
「だが一度冷静に考えてみろ。仲良くしていた人間が竜だと知ったら、引かれるんじゃないか?」
「竜の時も可愛がってくれたよ」
「お子様め。そんな単純なものじゃない。恋愛が絡むと特にな。正体をあかすのは最終手段にしろ」
「うん……」
もしも竜だって話したら、ヒースは絶対に喜んでくれると思ってたけど、そうじゃないのかな。俺がまだ子供だからよくわかっていないのか。五百年生きてる竜から言われると心配になるな。
「ずっとそばにいるのもダメ?」
「とりあえずその話は夕食のときにでもしよう。お前たち、しばらく俺の店に泊まっていくだろ?」
「いいの?」
「もちろん。どうせ国葬が終わるまで警備が厳重で正門は突破できないんだ。この国の不安定な情勢を話してやる」
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