上 下
93 / 129
三人の王子

16 好きだから離れたくない

しおりを挟む
「ところでお前ら王都に何しにきた。観光じゃないだろう」
「うん。ヒースに会いにきた」
「ヒース? 第三王子か」

 俺は学園でヒースの付き人だったことと、王様が倒れてヒースが王都に帰ってしまったことをクラウスに話した。

 執事のウィルが話の途中でお茶を持ってきてくれる。付き人だった時の俺とは全然違うさりげなさだ。さらにクラウスが放り投げた服や装飾品も丁寧に片付けてた。なれてるな。

「一応聞いておくが、会いにきたっていうのは何か理由があるのか?」
「理由って?」
「用があるとか。何か命令されていたとか」
「違うよ。好きだから離れたくないんだ。来るなって言われたけど」

 言うとクラウスはちょっと遠い目をした。

「俺も五百年前にはこんな純粋な時代があったのか」
「ご主人にはなさそうですが」
「おい、昔のウィルはもっと優しかったぞ」
「変わったのはご主人のせいですね」

 仲がいいなぁ。

「まあいい。そうだろうと思った。五年前に闘技会場で魔物と戦い死んだ竜の噂は聞いていたからな。たしか王族を守ったとか言う話だった。そんなことなら好きになるのはやめておけと言っても無駄だろう。すでに命をかけているのだからな」

「クラウス、あの時会場にいたんだよね」

「ああ。お得意様と一緒にな。あの程度の毒で死ぬとは思わなかったが、なにしろチビだから解毒方法を知らない可能性もある。そのまま王宮に残されたら救出する予定だった。バラバラにされて研究されたり、売られたりするのは嫌だろう?」

「そうなる予定だったの?」

「竜は金になる。ウロコの一枚から内臓にいたるまで、いくらでも金を積む人間はいるだろう。第三王子が引き取って埋葬したと聞いて少し安心していた。毒で死んだと思われたのも幸いだったな。毒に侵されていなければ身体は売られるか薬の材料になっていたはずだ」

「ヒースはそんなことしないよ。優しいんだ」

「そうだな。だがそういった王族は珍しい。お前、ヒースに自分の正体をあかしてないだろうな」
「ジークさんに言われたから秘密にしてるよ」

「おお、やっぱりその変身術はジークのオヤジ直伝だったか。あいつもああ見えて世話焼きだからな。それが賢明だ。正体がバレると命を狙われる。人に変化できる竜の存在があきらかになると俺の仕事にも差し障るから秘密にしてくれ」
「ウィルはいいの?」

 そばに控えていたウィルはにこりと笑った。目尻に優しそうな皺がきざまれてる。

「私はご主人様に忠誠を誓っていますので、けっして秘密は漏らしません。魔法使いとして誓約も交わしております」

 なるほど。俺もヒースと誓約を交わせばいいのか。そうしたらヒースに正体を話せる。

「何を考えてるか顔に出てるぞ」
「えへへ」
「だが一度冷静に考えてみろ。仲良くしていた人間が竜だと知ったら、引かれるんじゃないか?」
「竜の時も可愛がってくれたよ」
「お子様め。そんな単純なものじゃない。恋愛が絡むと特にな。正体をあかすのは最終手段にしろ」
「うん……」

 もしも竜だって話したら、ヒースは絶対に喜んでくれると思ってたけど、そうじゃないのかな。俺がまだ子供だからよくわかっていないのか。五百年生きてる竜から言われると心配になるな。

「ずっとそばにいるのもダメ?」
「とりあえずその話は夕食のときにでもしよう。お前たち、しばらく俺の店に泊まっていくだろ?」
「いいの?」
「もちろん。どうせ国葬が終わるまで警備が厳重で正門は突破できないんだ。この国の不安定な情勢を話してやる」

しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。

寡黙な男はモテるのだ!……多分

しょうわな人
ファンタジー
俺の名前は磯貝澄也(いそがいとうや)。年齢は四十五歳で、ある会社で課長職についていた。 俺は子供の頃から人と喋るのが苦手で、大人になってからもそれは変わることが無かった。 そんな俺が何故か課長という役職についているのは、部下になってくれた若者たちがとても優秀だったからだと今でも思っている。 俺の手振り、目線で俺が何をどうすれば良いかと察してくれる優秀な部下たち。俺が居なくなってもきっと会社に多大な貢献をしてくれている事だろう。 そして今の俺は目の前に神と自称する存在と対話している。と言ってももっぱら喋っているのは自称神の方なのだが……

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】嘘はBLの始まり

紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。 突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった! 衝撃のBLドラマと現実が同時進行! 俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡ ※番外編を追加しました!(1/3)  4話追加しますのでよろしくお願いします。

悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。

みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。 男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。 メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。 奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。 pixivでは既に最終回まで投稿しています。

処理中です...