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三人の王子
7 ニンゲンは二つ足
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友達になれそうだと思ったのは間違いだったかも。ゲイルは飼育舎から出た時までは大人しくてみんなが感動していたけど、いざ俺が乗ると本領発揮して三回もふり落とされた。
俺を振り落としたあとは大人しくしてるのに何でだろう。乗り方がまずいのかな。
「カル、今日はもうやめよう」
「あと少しだったのに」
かすり傷なのにヒースが心配して何度も回復魔法をかけてくれるから今日の乗馬練習はやめることにした。今度ヒースがいない時にこっそり練習しよう。
「違う馬にした方がいいんじゃないか?」
「この馬がいいよ」
「しかし……」
「王子様、もしも付き人の方が乗りこなせるならこの馬は差し上げます。いやその……これはとんでもない暴れ馬なので手をやいていまして、ぜひお城で飼育していただけたらと」
それって、俺またヒースの城で暮らしていいってことかな。
「やった! 絶対欲しい。ヒース、それでいいよね?」
「乗りこなせたらだぞ」
「分かってるよ」
(ゲイル、俺と一緒に城に行こう。ヒースのお城は山の中にあって楽しいぞ)
(考えておく。オマエもっと魔力をなんとかしろ)
念話で話しかけたらゲイルは鼻をならした。魔力をなんとかするってどういう意味だろう。
乗馬の練習のあと、待っていたハロルドとヴィクターと合流する。それから夕食の準備はヴィクターが手伝ってくれたおかげで上手くいった。今日は一緒に食べずにヴィクターと近くで待機する。
「カル君はあの暴れ馬を乗りこなすつもりなのか」
「乗りこなせてはいないが、カルの前ではなぜか大人しいんだ」
「動物に好かれる体質なのかな。カル君、今度コツを教えてくれ」
「心で話しかけると、たまに通じるんだ」
「なるほど、心か。難しい事を言うなぁ」
ハロルドはヒースほどじゃないけど、貴族の息子なのに気取らない性格で話しやすい。俺とエリオットのことも心配してくれていた。それは仏頂面のヴィクターも同じだけど。
夕食のあとはお風呂。でも今日はヒースのお風呂について行っても廊下の前で待つだけにしておいた。だってあまり近くにいると、変なことばかり考えてしまって心臓に悪い。前はもっと近くにいたかったのに、今は少しだけ距離がとりたいなんて、俺ヒースの事嫌いになったのかな。
いやいや、そんなことない。ヒースのことはやっぱり大好きだ。だけどお昼のキスみたいな回復魔法を思い出してしまうから、あまり近くで顔を見られないんだ。
「おやすみ、カル」
「おやすみ、ヒース。明日も頑張るよ」
ヒースがお休みを言って頭を撫でてくれる時も、またうつむいてしまった。きっと真っ赤になってる。どうしよう、こんな調子で付き人やっていけるのかな。
夜ベッドに入ってもやもやしていると、窓をトントンと叩く音が聞こえた。
目を閉じて気配を探る。すごく小さいけど、この気配はゲイルだ。
窓を開けると、小さな馬の形をした生き物が空に浮かんでいた。馬の姿の時と違って頭に角がある。
(ゲイル、どうしたの? それが本当の姿?)
(夜の散歩だ。ホントウの姿などない。オマエは人間と一緒に過ごしてどうするのだ?)
(ヒースが好きなんだ)
報告するとゲイルはちょっと考え込んだ。
(ヒースはかっこいいんだよ。それに優しい)
(ニンゲンは二つ足だ。四つ足の方が格好いい。オマエ変わってる)
(そうなの?)
(まあいい。俺に乗りたければもっと強くなれ。弱いやつは乗せたくない)
(分かった)
返事をするとゲイルは暗闇に消えていった。俺って弱いのか。もっと強くならなきゃダメなのか。
俺を振り落としたあとは大人しくしてるのに何でだろう。乗り方がまずいのかな。
「カル、今日はもうやめよう」
「あと少しだったのに」
かすり傷なのにヒースが心配して何度も回復魔法をかけてくれるから今日の乗馬練習はやめることにした。今度ヒースがいない時にこっそり練習しよう。
「違う馬にした方がいいんじゃないか?」
「この馬がいいよ」
「しかし……」
「王子様、もしも付き人の方が乗りこなせるならこの馬は差し上げます。いやその……これはとんでもない暴れ馬なので手をやいていまして、ぜひお城で飼育していただけたらと」
それって、俺またヒースの城で暮らしていいってことかな。
「やった! 絶対欲しい。ヒース、それでいいよね?」
「乗りこなせたらだぞ」
「分かってるよ」
(ゲイル、俺と一緒に城に行こう。ヒースのお城は山の中にあって楽しいぞ)
(考えておく。オマエもっと魔力をなんとかしろ)
念話で話しかけたらゲイルは鼻をならした。魔力をなんとかするってどういう意味だろう。
乗馬の練習のあと、待っていたハロルドとヴィクターと合流する。それから夕食の準備はヴィクターが手伝ってくれたおかげで上手くいった。今日は一緒に食べずにヴィクターと近くで待機する。
「カル君はあの暴れ馬を乗りこなすつもりなのか」
「乗りこなせてはいないが、カルの前ではなぜか大人しいんだ」
「動物に好かれる体質なのかな。カル君、今度コツを教えてくれ」
「心で話しかけると、たまに通じるんだ」
「なるほど、心か。難しい事を言うなぁ」
ハロルドはヒースほどじゃないけど、貴族の息子なのに気取らない性格で話しやすい。俺とエリオットのことも心配してくれていた。それは仏頂面のヴィクターも同じだけど。
夕食のあとはお風呂。でも今日はヒースのお風呂について行っても廊下の前で待つだけにしておいた。だってあまり近くにいると、変なことばかり考えてしまって心臓に悪い。前はもっと近くにいたかったのに、今は少しだけ距離がとりたいなんて、俺ヒースの事嫌いになったのかな。
いやいや、そんなことない。ヒースのことはやっぱり大好きだ。だけどお昼のキスみたいな回復魔法を思い出してしまうから、あまり近くで顔を見られないんだ。
「おやすみ、カル」
「おやすみ、ヒース。明日も頑張るよ」
ヒースがお休みを言って頭を撫でてくれる時も、またうつむいてしまった。きっと真っ赤になってる。どうしよう、こんな調子で付き人やっていけるのかな。
夜ベッドに入ってもやもやしていると、窓をトントンと叩く音が聞こえた。
目を閉じて気配を探る。すごく小さいけど、この気配はゲイルだ。
窓を開けると、小さな馬の形をした生き物が空に浮かんでいた。馬の姿の時と違って頭に角がある。
(ゲイル、どうしたの? それが本当の姿?)
(夜の散歩だ。ホントウの姿などない。オマエは人間と一緒に過ごしてどうするのだ?)
(ヒースが好きなんだ)
報告するとゲイルはちょっと考え込んだ。
(ヒースはかっこいいんだよ。それに優しい)
(ニンゲンは二つ足だ。四つ足の方が格好いい。オマエ変わってる)
(そうなの?)
(まあいい。俺に乗りたければもっと強くなれ。弱いやつは乗せたくない)
(分かった)
返事をするとゲイルは暗闇に消えていった。俺って弱いのか。もっと強くならなきゃダメなのか。
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