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王族の付き人
15 いざお風呂
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その後、ヴィクターに習った通りに夕食の準備を整えた。話を聞けば鑑定の魔法を使えば毒入りかどうかわかるらしい。
何となく出来るような気がしたので、目を閉じたり開けたり、息を吐いたりして試行錯誤を繰り返すと、頭の中に呪文のイメージが浮かび、目の前の料理が無害かどうか分かるようになった。
「夕食は歯形がついてないんだな」
ヒースが笑いながら言う。
「ちゃんと安全な方法で調べたよ。安心して」
「ヴィクターに教わったのか?」
「うん」
ヒースはそれで納得してくれたみたいだった。お茶も昼よりは上手に淹れて、ヒースが料理を口に運ぶのを隣で眺める。
「カル、部屋にいる時は一緒に食べよう」
「いいの?」
「他に誰もいないからいい」
「やった!」
ヴィクターには怒られそうだけど、隣に座って俺も同じ料理を食べることになった。本当の家族みたいだ。嬉しくてつい調子に乗ってたくさん頬張った。
夕食が終わると、食器をトレーに乗せて廊下に全部出しておく。後で持っていこう。それにしても、ずっとヒースと一緒にいられて、同じ部屋で過ごせるなんて付き人って最高だな。人間に変身できるように特訓して良かった。
「ヒース、お風呂はどうする?」
ヴィクターに教わったのは主人によって違う三つのパターン。一つは入浴の準備だけして終了。準備といっても担当の人にお湯をお願いして、ちゃんと出来ているかとか温度を確認するだけ。もう一つは準備と着替えを手伝うパターン。最後の一つは準備と着替えと、さらに主人の背中を洗ったり、そのほか俺には教えられないあれこれを追加でするパターンだそうだ。ヴィクター曰く、君みたいな子供は知らなくていいし、ヒースはそんな男じゃないから準備だけでいいだろうと言っていたけど、俺は三番目のパターンでお願いしたい。ちなみにハロルドはどれなのか聞いたけど教えてくれなかった。
「風呂は自分で適当にすませるから、カルはもう部屋に戻って休憩していい」
まさかのどれでもなかった。
「い、いや……絶対に手伝う。手伝いたい」
「今日は疲れただろう?」
「全然疲れてないよ」
石運びに比べたら働いてないも同然だ。
「分かった。準備だけ頼もうかな」
高速で頷くと、部屋のすぐ近くにある王族専用の浴室に行き、担当の人にお風呂の準備を頼んだ。ついでにお湯運びを手伝う。従業員が何往復もするところを短時間で済ませたのでけっこう喜ばれた。俺は力持ちだし火竜だから熱いのは平気。この仕事も向いてる気がする。
「ヒース、準備できたよ!」
「早いな……」
「はやくはやく」
着替えを持ってヒースの背中を押し、浴室まで連れて行く。この階には王族用の浴室しかなくて、王族はみんな個人別になっている。だからここはヒース専用。貴族たちは階下のお風呂に入りに行くみたいだ。建物の中ではあまり見かけない護衛兵が、使用中の浴室の前には配属されることになっている。俺とヒースが行くと、警備していた兵士が中に入れてくれた。
中には付き人の待機場所とくつろぐスペース、それに脱衣所と洗い場がある。洗い場にはさっきお湯を運んだバスタブ。二人でも充分入れそうな広さだな。
「カル、もう大丈夫だから」
一緒にお風呂に入りたいけど、あまりしつこく言うと嫌われるかな……。
何となく出来るような気がしたので、目を閉じたり開けたり、息を吐いたりして試行錯誤を繰り返すと、頭の中に呪文のイメージが浮かび、目の前の料理が無害かどうか分かるようになった。
「夕食は歯形がついてないんだな」
ヒースが笑いながら言う。
「ちゃんと安全な方法で調べたよ。安心して」
「ヴィクターに教わったのか?」
「うん」
ヒースはそれで納得してくれたみたいだった。お茶も昼よりは上手に淹れて、ヒースが料理を口に運ぶのを隣で眺める。
「カル、部屋にいる時は一緒に食べよう」
「いいの?」
「他に誰もいないからいい」
「やった!」
ヴィクターには怒られそうだけど、隣に座って俺も同じ料理を食べることになった。本当の家族みたいだ。嬉しくてつい調子に乗ってたくさん頬張った。
夕食が終わると、食器をトレーに乗せて廊下に全部出しておく。後で持っていこう。それにしても、ずっとヒースと一緒にいられて、同じ部屋で過ごせるなんて付き人って最高だな。人間に変身できるように特訓して良かった。
「ヒース、お風呂はどうする?」
ヴィクターに教わったのは主人によって違う三つのパターン。一つは入浴の準備だけして終了。準備といっても担当の人にお湯をお願いして、ちゃんと出来ているかとか温度を確認するだけ。もう一つは準備と着替えを手伝うパターン。最後の一つは準備と着替えと、さらに主人の背中を洗ったり、そのほか俺には教えられないあれこれを追加でするパターンだそうだ。ヴィクター曰く、君みたいな子供は知らなくていいし、ヒースはそんな男じゃないから準備だけでいいだろうと言っていたけど、俺は三番目のパターンでお願いしたい。ちなみにハロルドはどれなのか聞いたけど教えてくれなかった。
「風呂は自分で適当にすませるから、カルはもう部屋に戻って休憩していい」
まさかのどれでもなかった。
「い、いや……絶対に手伝う。手伝いたい」
「今日は疲れただろう?」
「全然疲れてないよ」
石運びに比べたら働いてないも同然だ。
「分かった。準備だけ頼もうかな」
高速で頷くと、部屋のすぐ近くにある王族専用の浴室に行き、担当の人にお風呂の準備を頼んだ。ついでにお湯運びを手伝う。従業員が何往復もするところを短時間で済ませたのでけっこう喜ばれた。俺は力持ちだし火竜だから熱いのは平気。この仕事も向いてる気がする。
「ヒース、準備できたよ!」
「早いな……」
「はやくはやく」
着替えを持ってヒースの背中を押し、浴室まで連れて行く。この階には王族用の浴室しかなくて、王族はみんな個人別になっている。だからここはヒース専用。貴族たちは階下のお風呂に入りに行くみたいだ。建物の中ではあまり見かけない護衛兵が、使用中の浴室の前には配属されることになっている。俺とヒースが行くと、警備していた兵士が中に入れてくれた。
中には付き人の待機場所とくつろぐスペース、それに脱衣所と洗い場がある。洗い場にはさっきお湯を運んだバスタブ。二人でも充分入れそうな広さだな。
「カル、もう大丈夫だから」
一緒にお風呂に入りたいけど、あまりしつこく言うと嫌われるかな……。
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