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王族の付き人

13 付き人と主人

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「ヒース、暖かい飲み物作るよ。ベッドに入ってて。あと買い物してきたから確認して欲しいな」
「分かった」

 ヒースの部屋には瓶に入ったお水しか置いてなかった。お茶ってどうやって作るんだろう。ヴィクターにもっと給仕の仕方を習っておけばよかったな。お茶とか、簡単な食事ならすぐに作れるようになりたい。とりあえず部屋から出ると食堂まで行って暖かい飲み物と簡単な食べ物を頼んだ。ちょうど午後のお茶の時間だったらしく、お茶とお菓子が準備されていたのでそれをどっさり受け取る。

 色とりどりのお菓子はとてもいい匂いがしていた。ジークおじさんもたまに俺のために美味しいお菓子を作ってくれたけど、鍋にどっさりの甘さ控えめの硬いお菓子で、こんなに綺麗で小さなお菓子じゃなかった。もちろんそれも大好物だったけど。人間ってすごいな。そうだ、毒味をしなくちゃ。

「ヒース、お菓子もらってきたよ」

 ヒースは部屋で買ってきた服や靴を見ていたけど、戻った俺を見て笑った。

「どうしたの?」
「顔にいろいろ付いてる」
「一応毒味をしたんだ。付き人の役目だから」
「毒味? 必要ないって言っただろ」

 ヒースがちょっと怒った。竜の俺が毒で死んだと思ってるから毒味が嫌なのかな。それとも全部少しずつ食べてお菓子の見た目が悪くなったから?

「毒味をし続けるなら付き人を辞めてもらうからな」
「エリオットにも喧嘩を売ったから無理だよ」
「それは二度とやるな。さっきはエリオットがそれほど怒っていなかったから運が良かったが」
「分かったよ。気をつける」

 テーブルにお茶と毒味済みのお菓子を並べる。はやくヒースに温かい物を飲ませて元気にしなきゃ。
 ヒースを椅子に座らせると、カップにお茶を注ぐ。集中したので今回はうまくできた。だんだん付き人っぽくなってきたぞ。

「それにしても、あれは本当なのか?」
「あれって?」
「竜を怒らせると罰が当たるっていう」
「あれは嘘だよ。でもエリオットみたいに自分より弱い生き物を無闇にいじめてると、来世で虫とかに生まれ変わった時、苦労すると思う」
「それは面白い考え方だな。今度お前の村の話も聞かせてくれ」
「うん」

 ヒースが本当に信じているのか分からないけど、俺のこと馬鹿にせずに聞いてくれるからやっぱり優しい。

 話しているとヒースの部屋のドアがノックされた。

「誰?」

 ドアを前に一応目を閉じて確認、エリオットじゃないな。人数は四人だ。

「お兄様、シエラよ」

 そうそう、シエラ王女だ。それにハロルドとヴィクターかな。ドアを開けると正解だった。青い顔をした王女と、心配そうな貴族の友達、その付き人二人。

「カル、ヒースお兄様とエリオットお兄様が喧嘩したんですって?」
「うん。今からお茶飲むところ」
「ヒースお兄様、何があったの?」

 シエラ王女が入ってきてヒースの手を取った。

「やっぱり少し冷えてるわ。すぐに回復するわね」

 シエラ王女は回復魔法の達人らしい。簡単な呪文一つでヒースを元気にさせた。

「いつも冷静なお前が挑発に乗ったってヴィクターが心配してた。何があったんだ?」

 みんなが椅子に座って話し始めたので、俺も席に着こうとしたら付き人二人が非難の目で見ていることに気づいた。そういえば付き人は主人同士の会話に参加しちゃいけないんだったっけ。






 
 
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