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別れ?

4 チートな竜

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 兵士の一人が口を掴む。

「おい、口開けろ」

 うーん、開けたくない。でもヒースが人を傷つけるなって言ってたし、今ここで戦って勝ち目はあるだろうか。殺す気でやらないと逃げられない気がする。兵士二人を真っ黒焦げにしたら、ヒースはきっと責められるだろうな。

 仕方なくパカっと口を開けたら口の中に何かが放り込まれた。意外と美味しい薬だ。多分身体には悪いんだろうな。でも毒じゃないはず。殺すなって言ってたし。

「キュウ~」
「大人しくしてろよ」


 眠くなってきた……。きっと眠り薬だ。眠るくらいなら解毒する必要はないか。どうせ明日の祭典が終わるまでヒースも王城から帰らないんだろうし。でも、ヒースのそばで眠りたかったな。一生懸命練習してたのに、ヒースが祭典で魔法を使うところも見られないのかな。

***

 あれからどれくらい時間が過ぎたんだろう。目を覚ましても灯りのない暗い牢屋の中じゃ時間が分からない。

 頭がぼんやりしてる。薬のせいかな。ブルブルと身震いをして、立ち上がった。首輪と鎖がジャラジャラ鳴る。誇り高き竜(自称)なのにこの扱いはあんまりだ。

「キュイキュイ」

 よく見たら牢屋の中にご飯があった。汚いお皿の上に生肉が乗せられてる。あと水路に続く窪みに水が注がれていた。なんだか不味そうな水だな。

 とりあえず炎の魔法を思い浮かべ、口から火を吐いて皿の上の肉を程よく焼いてみた。寄生虫とかいたら嫌だから念入りに火を通す。ついでに水もお湯にしてみた。水をお湯にするのは肉を焼くより難しい。でも少しはマシになったかな。
 食べてみると、やっぱりあまり美味しくなかった。それでも食べられないほどじゃない。半分だけ食べて眠りにつく。

 うとうとしては起きて肉をかじり、ぬるま湯を飲んで眠るを繰り返しているうちに、どんどん時間が過ぎていった。
 もちろんやる事もきちんとやった。起きているうちは目を閉じて王城の見取り図を頭に入れる。兵士が何人いて、どんな動きをしているのかもなんとなく掴んだ。地上には人が多すぎて、ヒースがどこにいるのか分からない。魔法があちこちかけられていてとても見えにくいんだ。多分見られないようにするための魔法なんだろうな。

 そして鎖と首輪がどうにかならないかあれこれ魔法を試す。ほとんどの魔法が効かなくて困っていると、突然頭の中にひらめきが降りてきた。
 身体の大きさを変えたらいいんじゃないか?
 そしてそれが俺には出来るような気がした。なぜなら俺はチートな竜だから。集中して頭の中で強く念じれば、きっとなんとかなるはず。
 ひらめきと一緒に降りてきた呪文を想像し、魔力を息に乗せる。

 カシャンと音がして、首輪は石の床の上に落ちていた。
 もともと二十センチくらいだった俺は、鉄格子を余裕で抜けられるほどの、ネズミくらいの大きさに変わっていた。


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