ちびドラゴンは王子様に恋をする

カム

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 エリオットはヒースとジェイソンの会話から考えて、おそらくヒースの腹違いの兄だと思う。ヒースは他に兄がもう一人いて、第三王子らしい。姉や妹はもっといるみたいだけど、みんな母親が違う。
 ヒースのお父さんにはお妃様や側室がたくさんいて、複雑な家族関係を構築しているみたいだ。エリオットはもっと王様の城に近い場所に自分の母親と住んでいるからヒースはこの古くて広い城に一人。俺が父親だったらヒースが可愛くてずっとそばにいたいのに、何でそう思わないのか不思議だ。

 剣の稽古をしているヒースの横で、小さい虫や鳥を追いかけて遊ぶ。中庭には複雑な柄を持つ蝶や、鮮やかな色の鳥がいて遊ぶのに最適だ。
 小鳥達は俺を見ると猛スピードで逃げるけど、少し大きな鳥になると警戒しつつも逃げないから同類みたいな顔をして近づき仲間に入れてもらう。やればできる気もするけど、殺したり傷つけたりはしない。別の行列に並んでいた魂達の生まれ変わった姿かもしれないし。

 遊んでいると従者の一人が中庭に走ってやってきた。

「ヒース様、エリオット様とターニャ様がいらっしゃってます」

「えーっ……何で急に」

 ヒースは露骨に嫌そうな顔をした。ターニャっていうのは多分エリオットの母親だな。
 剣を鞘に納めたジェイソンがヒースの肩に手を置く。

「私が出迎えます。ヒース様は身支度を。何をされても挑発には乗りませんように。我慢ですよ、ヒース様」
「分かってるけど、嫌いなんだよ」

 ヒースはぶつぶつ言いながらも剣を片付けると俺のほうに近寄って来た。

「カル、嫌なやつが来たからかごに入って隠れて。見つかったらいじめられるから」
「キュイー」
「大丈夫。俺が守ってやるから」

 守ってやるの一言にきゅんとしてしまった。でもちょっとだけ、エリオットがどんなやつか見てみたい。

***

 ヒースは俺を連れて部屋に戻ると、汗をかいた運動用の服を脱いでいつもよりキラキラした衣装に着替えた。
 いつ見てもかっこいいなぁ。午後の稽古の時は髪の毛を無造作に結んでるから雰囲気が違うし、汗を拭いてる姿を見るとドキドキする。

「キューキュー」
「お前はここで留守番」

 ヒースはお世話係のおばちゃんに俺を預けると、部屋を出て行った。

「エリオット様もターニャ様も、いい加減にしてくれないかしらね」
「キュイ?」

 おばちゃんが独り言のようにつぶやく。おばちゃんはおしゃべり好きだ。俺のヒース家の情報はほぼおばちゃんの噂話から仕入れている。おばちゃんは俺みたいなちびドラゴン相手にも(むしろドラゴンだから?)愚痴のような話をよく聞かせてくれた。

「お前は知らないとおもうけど、あのお二方は意地悪なのよ。亡くなった奥様に似てヒース様も美しいから嫉妬してるのね。兄王子だっているのに、国王になるつもりなんじゃないかしら。図々しいわよねえ、カル」

「ギュイ!」

 腹が立って尻尾を振り立てると、おばちゃんは首をかしげた。

「あら、どうしたの? ご機嫌ななめね。おやつをあげるから機嫌なおしてちょうだい。ちょっと待ってね」

 やっぱり様子を見に行こう。性格の悪い二人にどんな嫌がらせを受けるか、ヒースが心配だ。
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