13 / 129
成長
3 訪問者
しおりを挟む
エリオットはヒースとジェイソンの会話から考えて、おそらくヒースの腹違いの兄だと思う。ヒースは他に兄がもう一人いて、第三王子らしい。姉や妹はもっといるみたいだけど、みんな母親が違う。
ヒースのお父さんにはお妃様や側室がたくさんいて、複雑な家族関係を構築しているみたいだ。エリオットはもっと王様の城に近い場所に自分の母親と住んでいるからヒースはこの古くて広い城に一人。俺が父親だったらヒースが可愛くてずっとそばにいたいのに、何でそう思わないのか不思議だ。
剣の稽古をしているヒースの横で、小さい虫や鳥を追いかけて遊ぶ。中庭には複雑な柄を持つ蝶や、鮮やかな色の鳥がいて遊ぶのに最適だ。
小鳥達は俺を見ると猛スピードで逃げるけど、少し大きな鳥になると警戒しつつも逃げないから同類みたいな顔をして近づき仲間に入れてもらう。やればできる気もするけど、殺したり傷つけたりはしない。別の行列に並んでいた魂達の生まれ変わった姿かもしれないし。
遊んでいると従者の一人が中庭に走ってやってきた。
「ヒース様、エリオット様とターニャ様がいらっしゃってます」
「えーっ……何で急に」
ヒースは露骨に嫌そうな顔をした。ターニャっていうのは多分エリオットの母親だな。
剣を鞘に納めたジェイソンがヒースの肩に手を置く。
「私が出迎えます。ヒース様は身支度を。何をされても挑発には乗りませんように。我慢ですよ、ヒース様」
「分かってるけど、嫌いなんだよ」
ヒースはぶつぶつ言いながらも剣を片付けると俺のほうに近寄って来た。
「カル、嫌なやつが来たからかごに入って隠れて。見つかったらいじめられるから」
「キュイー」
「大丈夫。俺が守ってやるから」
守ってやるの一言にきゅんとしてしまった。でもちょっとだけ、エリオットがどんなやつか見てみたい。
***
ヒースは俺を連れて部屋に戻ると、汗をかいた運動用の服を脱いでいつもよりキラキラした衣装に着替えた。
いつ見てもかっこいいなぁ。午後の稽古の時は髪の毛を無造作に結んでるから雰囲気が違うし、汗を拭いてる姿を見るとドキドキする。
「キューキュー」
「お前はここで留守番」
ヒースはお世話係のおばちゃんに俺を預けると、部屋を出て行った。
「エリオット様もターニャ様も、いい加減にしてくれないかしらね」
「キュイ?」
おばちゃんが独り言のようにつぶやく。おばちゃんはおしゃべり好きだ。俺のヒース家の情報はほぼおばちゃんの噂話から仕入れている。おばちゃんは俺みたいなちびドラゴン相手にも(むしろドラゴンだから?)愚痴のような話をよく聞かせてくれた。
「お前は知らないとおもうけど、あのお二方は意地悪なのよ。亡くなった奥様に似てヒース様も美しいから嫉妬してるのね。兄王子だっているのに、国王になるつもりなんじゃないかしら。図々しいわよねえ、カル」
「ギュイ!」
腹が立って尻尾を振り立てると、おばちゃんは首をかしげた。
「あら、どうしたの? ご機嫌ななめね。おやつをあげるから機嫌なおしてちょうだい。ちょっと待ってね」
やっぱり様子を見に行こう。性格の悪い二人にどんな嫌がらせを受けるか、ヒースが心配だ。
ヒースのお父さんにはお妃様や側室がたくさんいて、複雑な家族関係を構築しているみたいだ。エリオットはもっと王様の城に近い場所に自分の母親と住んでいるからヒースはこの古くて広い城に一人。俺が父親だったらヒースが可愛くてずっとそばにいたいのに、何でそう思わないのか不思議だ。
剣の稽古をしているヒースの横で、小さい虫や鳥を追いかけて遊ぶ。中庭には複雑な柄を持つ蝶や、鮮やかな色の鳥がいて遊ぶのに最適だ。
小鳥達は俺を見ると猛スピードで逃げるけど、少し大きな鳥になると警戒しつつも逃げないから同類みたいな顔をして近づき仲間に入れてもらう。やればできる気もするけど、殺したり傷つけたりはしない。別の行列に並んでいた魂達の生まれ変わった姿かもしれないし。
遊んでいると従者の一人が中庭に走ってやってきた。
「ヒース様、エリオット様とターニャ様がいらっしゃってます」
「えーっ……何で急に」
ヒースは露骨に嫌そうな顔をした。ターニャっていうのは多分エリオットの母親だな。
剣を鞘に納めたジェイソンがヒースの肩に手を置く。
「私が出迎えます。ヒース様は身支度を。何をされても挑発には乗りませんように。我慢ですよ、ヒース様」
「分かってるけど、嫌いなんだよ」
ヒースはぶつぶつ言いながらも剣を片付けると俺のほうに近寄って来た。
「カル、嫌なやつが来たからかごに入って隠れて。見つかったらいじめられるから」
「キュイー」
「大丈夫。俺が守ってやるから」
守ってやるの一言にきゅんとしてしまった。でもちょっとだけ、エリオットがどんなやつか見てみたい。
***
ヒースは俺を連れて部屋に戻ると、汗をかいた運動用の服を脱いでいつもよりキラキラした衣装に着替えた。
いつ見てもかっこいいなぁ。午後の稽古の時は髪の毛を無造作に結んでるから雰囲気が違うし、汗を拭いてる姿を見るとドキドキする。
「キューキュー」
「お前はここで留守番」
ヒースはお世話係のおばちゃんに俺を預けると、部屋を出て行った。
「エリオット様もターニャ様も、いい加減にしてくれないかしらね」
「キュイ?」
おばちゃんが独り言のようにつぶやく。おばちゃんはおしゃべり好きだ。俺のヒース家の情報はほぼおばちゃんの噂話から仕入れている。おばちゃんは俺みたいなちびドラゴン相手にも(むしろドラゴンだから?)愚痴のような話をよく聞かせてくれた。
「お前は知らないとおもうけど、あのお二方は意地悪なのよ。亡くなった奥様に似てヒース様も美しいから嫉妬してるのね。兄王子だっているのに、国王になるつもりなんじゃないかしら。図々しいわよねえ、カル」
「ギュイ!」
腹が立って尻尾を振り立てると、おばちゃんは首をかしげた。
「あら、どうしたの? ご機嫌ななめね。おやつをあげるから機嫌なおしてちょうだい。ちょっと待ってね」
やっぱり様子を見に行こう。性格の悪い二人にどんな嫌がらせを受けるか、ヒースが心配だ。
21
お気に入りに追加
833
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…


元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる