盗賊とペット(レヴィン編)

カム

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旅行編 お墓参り〜赤砂の街

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 何かをお腹におさめると、少しだけマシな気分になった。味は全然分からなかったけど、とりあえず空腹は満たされた。

 ……出て行こうか。

 死ぬまで代償を払えと言われたけど、もういいんじゃないかな。
 復讐したかったら、今からすればいいんだ。もうグリモフを殺してもアニキは死なないのだから。復讐をやめてルイーズさんと幸せになりたいならそういう人生だって歩める。
 なにも愛してない俺と一緒にいなくたっていいはずだ。俺がどこかで生きていれば、アニキだって生きていられるんだから。

 鞄に少ない荷物をまとめてから部屋を見回すと、椅子の上にアニキの上着がたたまれて置いてあるのが見えた。一度だけその服の匂いを嗅ぐと、それだけで身体がきゅうっと反応した。

 いや、ダメだ。こんな事じゃ。吹っ切らないと、同じことの繰り返しだ。

 アニキの服をなんとか元に戻すと、鞄を持って部屋を出た。

 アニキやルイーズさんに出会ったらどうしようかと思ったけど、宿屋を出るまで知り合いには誰も出会わなかった。

 外は明るくて、お昼時だったみたいだ。俺、何時間寝てたんだろう。屋根裏部屋が真っ暗だったから時間が全然わからなかった。

 宿屋は泊まる人や出ていく人で賑わっていて、忙しそうだ。料金は前払いだから、勝手に出ていっても呼び止める人もいない。少し歩いては休憩し、赤砂の街の踏み固められた大通りをひたすら歩いて行った。

「疲れたな……」

 ベンチに座って休憩を取る。
 どこに行こうか。やっぱり王都がいいかな。お金を全然持ってないけど、働きながら貯めればいいし、忘れられていても如月やルーシェンが暮らしてる。

 ぼんやりしながら通りを歩く人を眺めていると、大きな荷物を背負い荷車を押して歩く男と目が合った。

 あれ? この人どこかで会ったような気がする。灰色に近い髪、細い身体に垂れ目の顔。そうだ、アニキと夕食を食べに行く前に屋台のある場所で出会った。その時もどこかで見たような顔だと思ったんだ。
 誰だったかな。
 俺と目が合ったその男は、荷車をベンチの前に止めると俺の隣にどさりと座った。

「お前、匂う」

 え?
 俺? 臭いって事か?
 確かに以前より風呂に入る回数減ったけど、この世界では誰でもそんなもんじゃないか?
 それにこんなに乾燥してて、スパイスだったり動物だったり多種多様な匂いが立ち込めてるこの世界で、俺だけ匂うなんてそんなはずないぞ。

 それでも気になって自分の匂いをクンクン嗅いでいると、男が続けた。

「アニキの、匂いがする」
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