盗賊とペット(レヴィン編)

カム

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エピローグ

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 父さん、兄ちゃん、姉ちゃん、元気ですか?
 俺は今、赤砂の街に近い中央荒地という場所に住んでいます。住んでいると言っても、アパートのような建物ではなく、岩肌に空いた洞窟に布や板をはって住居風にしています。たまに砂漠から砂嵐が吹いてきて部屋が砂まみれになることをのぞけば、なかなか快適な生活を送っています。
 同居人はレヴィンという名前の年上の男です。普段は俺様ですが、たまに優しい所のある人です。あと黒助という名前の黒い大型動物を飼っています。
 皆には会えませんが、俺は元気で楽しくやっています。みんなも元気でいてください。 

 修平より

            

 俺はノートに書いた家族への手紙を、出すことなく閉じた。
 日本には戻れないし、戻ってもみんな俺の事を忘れているだろう。それでもたまに手紙を書きたくなってしまうから、そんな時は日記代わりにノートに書き込んでしまう。日本語だからアニキに読まれる心配もない。

 ノートを閉じると、金庫や収納ボックス代わりにしているスーツケースにしまった。

 そろそろ日差しが強くなってきたから、カーテン代わりの布を移動させて日差しを遮ろう。庭に植えている非常食のサボテンに似た植物に水をやらなければ。
 洞窟の地下に水が湧き出している場所があるので、そこから汲み出して庭にまく。
 こんな荒れ地に住んでいても快適に暮らしていけるのは、この地下水があるおかげだ。洞窟は鍾乳洞のように広く深く続いているけれど、外敵が侵入しないようにアニキが途中から封鎖しているから安心して水浴びなんかもできる。
 もっともアニキと黒助はフリーパスだから、その一人と一匹には襲われるんだけど。

 水を汲んでサボテン達に与えていると、高い岩の上に黒助が座って、こっちを見ている事に気づいた。
 黒助はアニキの憎しみをエネルギーに成長した使い魔だ。島ではスフィンクスのような大きさだったのに、今は黒ヒョウか大型犬くらいの大きさをいったりきたりしている。アニキが俺と暮らすようになって少しだけ憎しみを無くしたんだと思う。都合良く考えすぎかな。そのうち小型犬とか、手のひらサイズになったらどうしよう。それも可愛いな。

「黒助~! こっちこいよ」

 呼ぶと岩から岩に飛び移りながらこっちに下りてきた。走ってきて俺に飛びつく。

「うわ……!」

 動物は大好きだからつい呼んでしまうけど、黒助はでかいし力も強いし、呼べば大体押し倒されてよだれでベトベトにされてしまう。

「よせって……」

 アニキが狩りに行って留守をしていて良かった。じゃれ合っている時にアニキが帰ってくると、キレられて大体お仕置きが待っている。アニキは黒助が嫌いで、俺が黒助とじゃれ合っているのが心底気に入らないらしい。

「い、イテテ……!」

 しまった。黒助に腕を甘噛みされた。
 軽く咬まれたまま、前足でシャツを破られる。
 噛み跡と破れたシャツでお仕置き決定だ。真っ青になっている俺にはお構いなしに、黒助は破れたシャツの下の腹や胸をざらついた舌でペロペロ舐めてきた。胸はかなりの急所だ。黒い異世界文字を触られると、尋常じゃないくらい快感が走る。

「こらっ、黒助……! やめろ。エサ、やらないぞ……」

 そう言うと、黒助はぴたっと舐めるのを止めた。助かった。
 前かがみで起き上がり、黒助のエサを取りに洞窟内に入る。黒助はペタペタと付いてきた。

「ほら」

 黒助は保存用の砂ワニの肉に食いつくと、ペロリと胃に収めた。
 思ったよりたくさん食べられてしまった。保存用の食料が減ると、アニキの機嫌がさらに悪くなる。夕食にアニキの好きなジャガイモ料理を作って機嫌を取ろう。

 黒助はリビングと呼んでいる広い部屋に寝そべった。
 アニキがいると、絶対に部屋には入って来ないけど、いないときは別だ。布を何重にもかけて作ったベッドの横でくつろいでいる。
微笑ましいけど掃除が大変だ。破れたシャツも繕わないと。

 アニキが帰ってくるまで、ジャガイモもどきの皮を剥き、ワニ肉を焼いて夕食の準備をする。
 晴れている日はけっこうやることが多い。
 逆に雨だったり、砂嵐が来た時は、かたく出入り口を閉ざして洞窟にこもる事になる。たいていは数時間で嵐が過ぎ去るけれど、そういう時はひたすらアニキと過ごしている。やることは一つしかないけど、体力的には晴れた日よりハードだ。
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