盗賊とペット（レヴィン編）

盗賊とペット

1

　いつからここにいるのだろう。

　生臭い風が吹いてくる寂しい場所。

　走って走って、仲間を探すけど誰もいない。
　寂しくてたまらない。

　みんなどこに行ったんだ？


　走り疲れてその場に座り込む。
　どこまで行っても同じ風景だ。
　もう飽きてしまった。
　まだ迎えは来ない。


　暫くして、足が思うように動かなくなった。
　誰もいないと思っていたのに、遠くの草原に潜んでいる黒い獣の影が見える。
　あいつの事はよく分かっている。死神が連れていた番犬だ。死神に魂のおこぼれをもらっている。

　
　俺は狙われている。



　いつからここにいるのだろう。
　怯えていた黒い獣にも、すっかり慣れてしまった。
　じりじりと近づいている。どうせならすぐにここへ来て、俺を喰えばいいのに。そうすれば仲間のもとに行けるだろうか。


　別の影が草原を歩いていく。
　川を目指している。
　俺にはもう、川を目指す力も残っていない。
　黒い獣は近づいている。


　もう少しだけ。
　生きたいのか死にたいのかもよく分からない。ここはもう飽きた。寂しい感情も忘れてしまった。

　あと少し。


＊＊＊

「アニキ、どうしたんすか？ぼうっとして」 

　盗賊の一人が背後から声をかけてきた。
　たまに見る夢を思い出していたせいで、声をかけられても気づかなかった。

「ペットがいなくなって寂しいんすか？」

　ヘラヘラ笑いながら聞いてくる盗賊を殴ろうか考えて止めた。
　飼っていたペットがいなくなったのは二日前だ。
　砂漠で迷っていた砂トカゲの子供だったが、ひんやりとした皮膚やのんびりした動きが気に入っていた。
　寂しいという感情は俺にはもうない。
　眠るときにあれがいないと思うと、すこし残念なだけだ。

「珍しく可愛がってましたもんね」
「アニキは人よりトカゲの方が大事らしいっす」

「トカゲはてめえらと違って、くだらねぇ事をペラペラ喋らねえからな」

　黙れという意味を込めて嫌みを送るが、盗賊どもには通用しなかった。
　頭の悪いスグリがやって来て俺を励ます。

「大丈夫。アニキには新しいペットがすぐに見つかる」

「もういらねえよ」