赤い髪の騎士と黒い魔法使い

カム

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服従と抵抗

4 お兄様

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「秘密って何が……?」

 もしかしたら半分黒竜の血が流れているとバレたのだろうか。そんなはずはないと思いながらも、震える声をかくせない。

「お兄様よ」
「えっ?」

「まさか、シンのお兄様があのアルフレッド様だったなんて! しかも五つ星の魔物に襲われたシンを抱えて部屋まで運んでくれたんでしょう? 友達や同級生たちがみんな見てたの! 王子様みたいですごくかっこよかったって! さすが騎士候補生一位よね。ああ~私も見たかったわ! シンってば、なんで教えてくれなかったの?」

 シンは顔が赤くなるのを感じた。何も見えてなかったから気づかなかったけど、みんなに見られてたのか……。

「兄さんとは、本当は血が繋がってないんだ。同じ家で暮らしたのも数年で」

「同じ家って、羨ましい~! 一つ屋根の下にあんな素敵な人がいたら興奮して眠れないわ! ね、今度紹介してよ」

 興奮するナタリーとは対照的に、ハンスがシンの肩をぽんと叩いた。

「シン……何も言うな。お前の気持ちよく分かるよ。優秀な兄と比較されて辛かったんだろ。オイラもさぁ、兄弟で比較されてくやしくて、立派な魔法使いになるってたんか切って都に来たのにさぁ……」

 ナタリーの興奮とハンスの自虐を交互に聞きながら、同じ家に兄がいて眠れなかったのはナタリーの言う通りだ、とシンは思った。

***

 ナタリーとハンスはシンの面会を終えて、自室に歩いていた。男子寮と女子寮を分ける手前の通路でナタリーが立ち止まる。

「ねえ、シン……ちょっと変だったわね」
「えっ?」
「なんだか前と雰囲気が違うっていうか……」
「そうか? オイラ何も気づかなかったぞ」
「アンタ本当に鈍いわね」
「悪かったな。どうせオイラは鈍いよ。で、どこが変だったんだよ」
「すごく落ち込んでるのに、魔力が減ったように見えなかったわ。むしろ、前より増えたんじゃないかなって思うくらい。五つ星の魔物に取られたはずなのに。変よね」
「ええー? そうか?」
「まあいいわ。あたしの気のせいかも。シンの魔力もそんなに減ってないなら、ハンスが一番進級がやばそうだから、アンタもう少し頑張りなさいよね」
「ううっ……」

 ナタリーはビシッと指を立てた。

「噂だけど、進級試験が今年はかなり厳しくなるって話よ。実技試験で結果が出せなかったり、五つ星から逃亡した生徒たちは軒並み評価を落とされたって聞いたわ。例年なら半数近くが振り落とされるけど、今年はもっと落とされるんじゃないかって。そうなったら、あたしもアンタもギリギリよ。シンの心配してる場合じゃないわ」

「分かってるよー……」

 ハンスは力なく頷いた。



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