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一章 神様転生に御注意下さい

1話 人身売買されました

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(拝啓、前世の両親へ。
この世界『イストレア』に転生して、早くも6年が経過しました。
いま、オレは……)

(何故か奴隷商人の馬車で揺られています…!!)

馬車に乗ってるのは自分の他に3人。
2人はオレと同い年くらいの女の子。
話を何となしに聞いていると、オレの住んでいた村から2つほど山を越えた所の村らしい。
そしてもう1人が動きやすそうな装備の男性。
ちなみに顔は怖い。
人を10人ほど殺ってますといわんばかりに怖い。

「おう2人とも、腹減ってないか?」

「いえ、大丈夫です」

「私も平気だよ」

「そうか? 何かあったらちゃんと言えよ?」

(でもなんかすっごく優しいんですが)

(この世界では人身売買は合法だけど…イメージ狂うなぁ)

「おい!」

「ふぁ!? な、何ですか!?」

「ああ、驚かせちまったか、悪ぃ。…えっとな、ショックなのは分かるけど、そろそろ自己紹介をしてくれや。お前の纏う空気で、こいつらも普段より大人しいんだ」

「…あ、えと、クオリアです。歳は6才で、スキルは『建築魔法』です」

「そうか。オレはカインドって言って、クエストで商人の護衛をやってる冒険者だ。とりあえずこれから2日間、よろしくなクオリア」

「よろしくお願いします」

「えっと、私はアルマ。こっちは妹のユミル。よろしくね?」

「ユミルなんだよ、よろしくなんだよ!」

「あ、うん、よろしく」

(姉が金髪で妹は赤髪…両親の髪色を継いでるのかな……オレも両親と同じ色だったら……いや、絶対ないな!!)

両親の髪色は共に緑であり、オレは2人から産まれたのに黒髪だった。
3才になって弟ができるまでは普通に育ててくれていたが、緑の髪をした弟が産まれた途端、『悪魔の子』として物置に隔離された。
ついこないだ両親が狩りの最中に死んだ事で物置からは出れたのだが、後見人として引き取るはずの村長は弟だけを引き取ったため、残った自宅で自給自足をしていた。

(いや、ホント建築魔法なかったら死んでたな、絶対)

安全に暖を取れる設備を加えたり、栄養たっぷりのスープが出る蛇口を加えたり…。
『建築…?』な部分もあったが、それで助かったのだから感謝しかない。
ちなみに弟が引き取られた理由は、スキル『狩人(R)』があったから。
Rはレアと読むが、スキル効果を区分したもので、『ランク』と総称される。
Rの場合だと戦闘系スキルなら1つにつき、全ステータスに50が加算される。
それとスキルを持っていない状態の平均値は、各ステータス10~15らしい事がオレ的調査でわかっている。
ちなみにカインドさんのスキルは『戦士(R)』『狩人(N)』『サバイバル(N)』『気配察知(N)』。
Nはノーマルといい、全ステータス+10の加算。
これだけでカインドさんは全ステータス+80という計算だ。

「おい? 大丈夫か?」

「大丈夫ですよ」

こうして王都を目指した旅が始まった。
弟の事は心配だが、優秀なスキルがあるから大丈夫だろう。

(願わくはちゃんとした場所に売ってほしいな)

追伸、アルマとユミルで何故売られたのかを話してたら、2人どころかカインドさんまで大泣きしました。
困った事があったら冒険者ギルドまで来い、と熱く語る彼は、この上無いお人好しのようです。

追伸2、アルマとユミルは住み込みで働ける冒険者ギルドに売られるらしいが、オレはまず適性を調べないといけないそうだ。
村長が鑑定石をけちったから、ステータスの写しに色んな不備があるらしかった…村長ェ…

追伸3、オレ的調査…ぶっちゃけスキル『鑑定(?)』を自分に使った事はあるが、『?』が示す通りの詳細不明。
女神がプラカード抱えてる画像が出てきて、それに書かれてたのが『王都にある本神殿にて教えます☆』『一応言っとくと、スキルは頼まれた2つと別に幾つか加えてるよ(はぁと』というふざけた内容だった。
感謝を返せ、ショタ女神。
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