94 / 186
第四章 後宮には危険が一杯!
31.鷹峯院潜入計画
しおりを挟むちょっと待ってよ。私、危険じゃない!
第一、この、関白殿下が、こんなにも嫌がる、鷹峯院って、なんなのよ!
怖すぎるっ!
「あの……私、どうしても、鷹峯院の所へ往かないと……」
ダメ? と可愛く聞こうとしたら、陽が私の言葉を遮って言う。
「事態の真相には、たどり着けないよね。ただ、護衛は、付けた方が良いかも」
陽の、オタンコナス!
「護衛か……」
「まさか、衛士を連れる訳にも、いかないし、随身も無理だし……」
随身は、高貴な方のために、朝廷から遣わされる警護のことだ。
私が、勅使ならともかく、随身なんか、付けられるはずもない。
大体、随身なんて言ったら、近衛府の歴とした官人でから、ピシッと束帯を着た上に、弓矢と剣、徒歩と騎馬まで引き連れるんだから、悪目立ちするだろう。
ちなみに、関白殿下は、随身の勅宣も得ているから、お忍び以外の外出だと、十人も随身を引き連れなければならないのだ。関白殿下も、大変よね。
「いっそ、男に女房の格好でもさせようか。どうだい、左兵衛大尉。君、似合いそうだよ?」
関白殿下は、クスクス笑う。
うん、まあ、似合いそうよね~。そうなったら、私より可愛くなったりして。
なんて妄想していた、私は、淑景舎で、スイーツ攻撃にあっているはずの、小鬼のことを思い出した。
「そうだ。うちの小者が来ていますから、その者に女房装束を帰せましょう。なかなか、見目よきもので、山科暮らしとは思えないわよ?」
小鬼を、私の邸で使っている小者ってことにすれば良い!
「なんだか、タイミングが良すぎる気もするけど、あなたが紹介するなら、問題ない方なのでしょうね」
「それは、気心しった小者ですからね。おふたりの邸から、殿御や女房を連れられても、私、気疲れしそうだわ」
小鬼がいれば、鬼の君に会えるかもしれないし、ね。
もし、鷹峯院の所に、鬼の君がいるなら、だけど。
「確かに、知らない人に囲まれてると、疲れるね。じゃあ、護衛は、その者に。仕える姫のことならば、命がけで守るだろうし」
命がけ、と言うことばに、私は、ドキッとした。
命がけ……命がけ、か。
「鷹峯院の所に、鬼の君が居ればいいのですけどね」
「それが、一番、手っ取り早いよね。僕も、鷹峯院のお邸に行こうかなあ」
「君は、仕事!」
「方違えとか、色々ありますから」
それは、サボる方々の話だな、うん。
そっかあ、真面目な感じだけど、陽も仕事サボるんだなあ。
こっちの関白殿下は、サボりそうもないけど。
「しかし、なんだ。遅いね、陰陽師」
あ、ちょっと、忘れてたわ。
一応、占って貰ったほうがいいものねえ。それで、鷹峯院には『いない』ってなったら、私は、絶対に、鷹峯には行かないし。
「そうですね。僕、ちょっと、見てきます。陰陽寮の方ですね」
「ああ、頼んだ、左兵衛大尉」
陽は、立ち上がって簀へ出てしまった。
部屋の中には、私と、関白殿下。
あっ! いつの間にか、千種さんも下がってる!
「あれは、察しがいいからね。主の望みは、殆んど叶えてくれるよ」
関白殿下が、隙を見て、にじり寄ってくる。
「鷹峯に行く時には、あの香を、衣にも髪にもたっぷりとたきしめて行きなさい」
関白殿下は、私の髪をそっと手に取った。
「髪の美しさは、申し分ない。手入れの行き届いた髪だ」
そこに、私の髪に、関白殿下は、そっと、口づけた。
0
お気に入りに追加
266
あなたにおすすめの小説
主の兄君がシスコン過ぎる!
鳩子
恋愛
時は平安。
関白家の姫君にお仕えする女房(侍女)の早苗は、
姫君の幸せの為に働いているのに、
姫君の兄君(関白殿下)が、シスコンゆえに邪魔ばかり。
なんと妹可愛さに、東宮との婚約破棄を勝手にする始末・・
そして、事態は、思わぬ方向に、……。
果たして、早苗は、シスコンの魔の手から、主を、守りきることは出来るのか!?
全十話くらいのお話しです。
須今 安見は常に眠たげ
風祭 風利
恋愛
高校の入学式初日 館 光輝は桜の木の下で眠る少女 須今 安見と出逢う。
彼女は勉強も運動もそつなくこなすが、なによりもすぐに眠たくなってしまい、ところ構わず眠ってしまうこともしばしば。
学校では常に眠たげな彼女とそんな彼女から目が離せない少年の甘酸っぱくて初々しい高校生活を追っていく物語
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
旦那様は離縁をお望みでしょうか
村上かおり
恋愛
ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。
けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。
バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。
とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、
屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。
そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。
母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。
そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。
しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。
メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、
財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼!
学んだことを生かし、商会を設立。
孤児院から人材を引き取り育成もスタート。
出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。
そこに隣国の王子も参戦してきて?!
本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る
とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる