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第四章 後宮には危険が一杯!
31.鷹峯院潜入計画
しおりを挟むちょっと待ってよ。私、危険じゃない!
第一、この、関白殿下が、こんなにも嫌がる、鷹峯院って、なんなのよ!
怖すぎるっ!
「あの……私、どうしても、鷹峯院の所へ往かないと……」
ダメ? と可愛く聞こうとしたら、陽が私の言葉を遮って言う。
「事態の真相には、たどり着けないよね。ただ、護衛は、付けた方が良いかも」
陽の、オタンコナス!
「護衛か……」
「まさか、衛士を連れる訳にも、いかないし、随身も無理だし……」
随身は、高貴な方のために、朝廷から遣わされる警護のことだ。
私が、勅使ならともかく、随身なんか、付けられるはずもない。
大体、随身なんて言ったら、近衛府の歴とした官人でから、ピシッと束帯を着た上に、弓矢と剣、徒歩と騎馬まで引き連れるんだから、悪目立ちするだろう。
ちなみに、関白殿下は、随身の勅宣も得ているから、お忍び以外の外出だと、十人も随身を引き連れなければならないのだ。関白殿下も、大変よね。
「いっそ、男に女房の格好でもさせようか。どうだい、左兵衛大尉。君、似合いそうだよ?」
関白殿下は、クスクス笑う。
うん、まあ、似合いそうよね~。そうなったら、私より可愛くなったりして。
なんて妄想していた、私は、淑景舎で、スイーツ攻撃にあっているはずの、小鬼のことを思い出した。
「そうだ。うちの小者が来ていますから、その者に女房装束を帰せましょう。なかなか、見目よきもので、山科暮らしとは思えないわよ?」
小鬼を、私の邸で使っている小者ってことにすれば良い!
「なんだか、タイミングが良すぎる気もするけど、あなたが紹介するなら、問題ない方なのでしょうね」
「それは、気心しった小者ですからね。おふたりの邸から、殿御や女房を連れられても、私、気疲れしそうだわ」
小鬼がいれば、鬼の君に会えるかもしれないし、ね。
もし、鷹峯院の所に、鬼の君がいるなら、だけど。
「確かに、知らない人に囲まれてると、疲れるね。じゃあ、護衛は、その者に。仕える姫のことならば、命がけで守るだろうし」
命がけ、と言うことばに、私は、ドキッとした。
命がけ……命がけ、か。
「鷹峯院の所に、鬼の君が居ればいいのですけどね」
「それが、一番、手っ取り早いよね。僕も、鷹峯院のお邸に行こうかなあ」
「君は、仕事!」
「方違えとか、色々ありますから」
それは、サボる方々の話だな、うん。
そっかあ、真面目な感じだけど、陽も仕事サボるんだなあ。
こっちの関白殿下は、サボりそうもないけど。
「しかし、なんだ。遅いね、陰陽師」
あ、ちょっと、忘れてたわ。
一応、占って貰ったほうがいいものねえ。それで、鷹峯院には『いない』ってなったら、私は、絶対に、鷹峯には行かないし。
「そうですね。僕、ちょっと、見てきます。陰陽寮の方ですね」
「ああ、頼んだ、左兵衛大尉」
陽は、立ち上がって簀へ出てしまった。
部屋の中には、私と、関白殿下。
あっ! いつの間にか、千種さんも下がってる!
「あれは、察しがいいからね。主の望みは、殆んど叶えてくれるよ」
関白殿下が、隙を見て、にじり寄ってくる。
「鷹峯に行く時には、あの香を、衣にも髪にもたっぷりとたきしめて行きなさい」
関白殿下は、私の髪をそっと手に取った。
「髪の美しさは、申し分ない。手入れの行き届いた髪だ」
そこに、私の髪に、関白殿下は、そっと、口づけた。
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