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 私の父と名乗った男性、セイヴィアの話をまとめるとこうだった。

 グラス家は代々音楽の精霊に加護されていたが、お父様はその加護では満足できず、精霊を強制的に捕らえ、その力を悪用していたのだという。

 音楽の力で魅了し、通常ではあり得ないような支援を受けていたのだという。

 そういえばグラス家は子爵なのにやけに財産が多いとは思っていたのだ。高級な楽器もたくさん買い集められている。

 それに気が付き、告発しようとしていた王太子の存在に気が付いたお父様……いいえ、グラス家当主は、同じく精霊の加護を持ったシャンテ家夫人であるアドレットから産まれたばかりの我が子を奪い、脅して王太子を殺すように命じた。

 だが、アドレットは凶行に及べなかった。王太子に事実を打ち明け逃がそうとしたのだ。だが、それを見越していたグラス家が雇った刺客によって命を落とした。王太子をかばったのだ。



「人の命を奪ったお前たちは精霊に見放された。だからお前たちは、ポーリーンから精霊の加護を奪ったのだ」

「……!!」



 信じられないと目を見開けば、いつの間にか近くにきていたジュレがセイヴィアに続けて話し始めた。



「ポーリーン。君にはこぼれるばかりの音楽の才能がある。この国……いや、世界で最も優れた音楽家と言っても間違いないだろう」

「でも、私は歌も歌えないしどんな楽器も使えないのよ」

「それはあいつらが君から力を奪っていたからだよ。その銀の鎖が、君から精霊の力を奪っていたんだ」



 思わず腕を見る。幼い頃もらったそれは、ずっと外せなかった。私と家族を唯一繋いでいるものに思えたから。



「こんなもの……壊してやる!」

「や、やめろおぉぉ!」



 セイヴィアが鎖に手をかけた。見た目の繊細さとは違い頑丈な鎖は、セイヴィアの手により音を立てて砕かれた。シャランと音を立ててそれが床に落ちた瞬間、何故か世界が突然輝いた。



「おお……」

「ポーリーン、君は……!」

「え、これ……」



 どうやら輝いたのは世界ではなく、私だった。全身が淡く光っている。



「歌ってごらん、ポーリーン」

「で、でも」

「大丈夫。今の君は最強だよ」

「……」



 ジュレに促され、私は昨日は歌えなかった賛美歌を歌った。

 周囲の人々がみんな私を見ている。自分でも信じられないほどに美しい歌声がホールに響き渡る。

 私は歌いながら泣いていた。これこそが私の声だと魂が感じていた。



「ああ、ポーリーン……!!」



 涙を流すセイヴィアの表情に胸が締め付けられる。

 彼だ。彼こそが本当のお父様だと確信できた。

 歌いきった私をセイヴィアお父様がぎゅっと抱きしめてくれる。



「愛してるよポーリーン。私とうちに帰ろう」

「……お父様」



 抱きしめれば、これまで欠けていた心の大事な部分が埋まっていくのがわかった。
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