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第十四章 宝石店の魔法使い
(四)
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レオはまた、表情をひきしめる。
「結局、父さんに全部話したよ。ルーク兄さんがしようとしていたことも、悩んでいたことも。ルーク兄さんが、けじめをつけたいって言ったから」
吸血鬼の貴族の掟。兄弟なのに、平等でいられないことの不満。ルークさんはそれに耐えきれなくなって、レオを襲おうとした……。
そっか。全部話したんだ。
「やっぱり、お咎めなしってわけにはいかなかった。ルーク兄さんはいま、部屋に閉じ込められてる。見張りもたくさんついて」
「……レオは、ルークさんのために、ひとりで逃げていたのに。無駄になっちゃったんだね」
悲しくなったわたしに、レオもうなずく。だけど、「でもな!」と声をあげた。その声は、意外にも明るかった。
「父さんと、ちゃんと話せたんだ。父さんもさ、ほんとは、あんな掟おかしいって思ってたんだって」
「え、そうなの?」
「ああ。だから、ルーク兄さんばかりが悪いわけじゃないって、そう言ってた」
レオは目を細めた。
「これからは、ただの兄と弟として過ごそうって、父さんが言ったんだ。だからきっと、もう大丈夫。ルーク兄さんも、しばらくしたら自由になれるよ。外に出たら、ルリとミナセに謝りに行きたいって言ってた」
「そっか、そうなんだ……!」
ほっとした。ルークさんは優しいから。もう、あんなふうに苦しんでほしくないって、わたしは思ってたんだ。レオだって、それを望んでいたんだし。
「よかったね、レオ」
「ああ」
黙って話を聞いていたミナセも、深くうなずく。
「掟は守らなきゃいけない。だけど、その掟が間違っているなら、従う必要はないからね」
わっ、とわたしは目を白黒させる。
「ミナセの口から、掟を破っていい、なんて言葉が聞けるなんて! レア!」
「間違っている掟なら、ね」
ミナセが釘を刺してから、肩をすくめる。
「そういうわけだから、レオ。もうブラッド・ムーンの夜に、ひとの街に出るのはいけないよ。今回みたいなのは、もうごめんだな」
「わかってるよ。つーか、今回が特殊だっただけだし!」
ミナセのお小言に、レオは口をとがらせる。
「部屋にいるのはつまらないけど、ルリやミナセ、ほかのひとたちも、襲いたくなんてない。これからは、赤輝石もって、部屋でおとなしくするって」
それから、はっとして、ポケットからなにかを取り出した。
「赤輝石といえば! ルリ、これ」
「なに?」
首をかしげて差し出したわたしの手に、レオは石をのせた。ごつごつとした、赤色の石だ。まだアクセサリーにもなっていないし、磨かれてもいない。採れたての石。
「赤輝石の原石だ」
「え、これが?」
「そう。おれの赤輝石、ルーク兄さんが壊したから、新しくつくらないといけないんだ。そ、こ、で!」
レオは言葉を区切る。わたしたちの注目を集めて、にっと笑った。
「ルリに、アクセサリーつくってもらおうと思ってさ。正式な仕事の依頼だ。代金も出すぞ」
「結局、父さんに全部話したよ。ルーク兄さんがしようとしていたことも、悩んでいたことも。ルーク兄さんが、けじめをつけたいって言ったから」
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そっか。全部話したんだ。
「やっぱり、お咎めなしってわけにはいかなかった。ルーク兄さんはいま、部屋に閉じ込められてる。見張りもたくさんついて」
「……レオは、ルークさんのために、ひとりで逃げていたのに。無駄になっちゃったんだね」
悲しくなったわたしに、レオもうなずく。だけど、「でもな!」と声をあげた。その声は、意外にも明るかった。
「父さんと、ちゃんと話せたんだ。父さんもさ、ほんとは、あんな掟おかしいって思ってたんだって」
「え、そうなの?」
「ああ。だから、ルーク兄さんばかりが悪いわけじゃないって、そう言ってた」
レオは目を細めた。
「これからは、ただの兄と弟として過ごそうって、父さんが言ったんだ。だからきっと、もう大丈夫。ルーク兄さんも、しばらくしたら自由になれるよ。外に出たら、ルリとミナセに謝りに行きたいって言ってた」
「そっか、そうなんだ……!」
ほっとした。ルークさんは優しいから。もう、あんなふうに苦しんでほしくないって、わたしは思ってたんだ。レオだって、それを望んでいたんだし。
「よかったね、レオ」
「ああ」
黙って話を聞いていたミナセも、深くうなずく。
「掟は守らなきゃいけない。だけど、その掟が間違っているなら、従う必要はないからね」
わっ、とわたしは目を白黒させる。
「ミナセの口から、掟を破っていい、なんて言葉が聞けるなんて! レア!」
「間違っている掟なら、ね」
ミナセが釘を刺してから、肩をすくめる。
「そういうわけだから、レオ。もうブラッド・ムーンの夜に、ひとの街に出るのはいけないよ。今回みたいなのは、もうごめんだな」
「わかってるよ。つーか、今回が特殊だっただけだし!」
ミナセのお小言に、レオは口をとがらせる。
「部屋にいるのはつまらないけど、ルリやミナセ、ほかのひとたちも、襲いたくなんてない。これからは、赤輝石もって、部屋でおとなしくするって」
それから、はっとして、ポケットからなにかを取り出した。
「赤輝石といえば! ルリ、これ」
「なに?」
首をかしげて差し出したわたしの手に、レオは石をのせた。ごつごつとした、赤色の石だ。まだアクセサリーにもなっていないし、磨かれてもいない。採れたての石。
「赤輝石の原石だ」
「え、これが?」
「そう。おれの赤輝石、ルーク兄さんが壊したから、新しくつくらないといけないんだ。そ、こ、で!」
レオは言葉を区切る。わたしたちの注目を集めて、にっと笑った。
「ルリに、アクセサリーつくってもらおうと思ってさ。正式な仕事の依頼だ。代金も出すぞ」
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