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第十二章 レオの戦い

(四)

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 だけど、違った。

 キンッ!

 金属のぶつかる、鋭い音がした。

「おれの、おれの赤輝石……! 持ってるんだろ、ルーク兄さん!」

 レオは剣を抜いて、ルークさんに斬り込んでいた。ルークさんは目を見開いて、自身の剣で受け止めている。

「頼む、返してくれ! お願いだ……!」

 レオは泣きそうな声で、そう訴えた。

「……まだ、意識があるのか、強いね、レオは」

 ルークさんが小さくつぶやく。その胸もとに、きらりと光るものが見えた。

 あれって……、レオの赤輝石だ!

「でも、ごめんね。返してあげない」

 ルークさんは微笑んで、レオの刀をはじき返した。レオはうめいて、剣を取り落とす。そこに、狼が駆けてきた。落ちた剣をくわえ、街の奥へと消えてしまう。

「剣がなければ、わたしには勝てないだろう、レオ。もう、あきらめるといい」
「くそ……っ! 返せよ!」

 うなりながら、レオが拳を握って、ルークさんに向かっていく。

「返せ! おれは、ひとを襲いたくないし、ルーク兄さんに、そんなことさせたくない!」
「わたしに……?」

 なにを言われているのかわからない、とルークさんは首をかしげる。

 レオが何度殴りかかっても、ルークさんはひらりとよける。それどころか、剣で斬りつけられて、レオの傷が増えるばかりだ。

(なにか、なにか、わたしにできることはないの……!)

 わたしは周りを見渡した。レオの剣を持って行った狼の姿は、とっくに夜の闇へ消えていた。

 武器が、どこかにあれば。

「あ」

 白く輝くものが目に入った。

 十字架だ。教会の正面に飾られた、白銀の美しい十字架。

 この街の教会は、すべて、銀聖石ぎんせいせきでつくられている。

「そうだ。これも、石……!」

 きらびやかなアクセサリーとは違う。だけど、十字架だって、もともとは同じ石のはず。それなら……!

 わたしは走った。十字架に手をかざして、魔力をこめる。

「お願い!」

 手からあふれだした、ぼんやりとした光。願いをこめれば、その光は強くなる。十字架の形が崩れて、変わっていく。

(もっと硬く、もっと鋭く、もっと、もっと……!)

 あふれる光は、目に痛いほどのまばゆさになった。わたしは細く目を開けて、必死に魔法を使い続ける。

(もっと、もっと、レオを守るために――……!)

 光が一番強くなったとき、わたしはその光に手を入れる。ぐっと、中にあるものを握って、引き抜いた。たしかな重さを手に、レオたちのもとに走る。

 レオに向かってふりかざされる、ルークさんの剣。

「やめて!」

 わたしは手に握ったものを、両手でふり上げた。

 甲高い音が、夜の街に響く。ルークさんもレオも、おどろきに目を大きくさせた。

 ルークさんの剣を、わたしが握った剣が、受け止めていた。

(重い……!)

 手にかかる衝撃に、わたしは思わず膝をつく。

「まさか、十字架で、剣をつくったのかい?」
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