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第十章 空の戦い

(五)

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「ルリ」
「うわあっ!」

 声をかけられて、わたしは飛び上がった。

「み、ミナセ⁉ なんでいるの⁉」
「どこに行くつもりだい?」

 顔をしかめたミナセが、わたしに詰め寄る。

「どうせ、吸血鬼を訪ねて赤輝石を貸してもらおう、とか考えたんだろう?」

(ば、ばれてる……⁉)

 目を見開いたわたしに、ミナセは自分の言葉が合っていることを確信したのか、ため息をついた。

「レオだけじゃなくて、吸血鬼たちはみんな、吸血衝動が強くなっているんだよ。こんな夜に吸血鬼を訪ねて、ただで済むと思ってるの?」
「あ、そっか」

 そう言われてみれば、そうだ。

「もう、ルリってば、おっちょこちょいなんだから」
「で、でもミナセ! ほかの吸血鬼たちは、赤輝石を持ってるんでしょ? だったら、襲われることはないんじゃない?」
「鎖に繋がれているからって、ライオンの檻に入るのは危険だろう? なにが起きるかわからない。もっと慎重に行動すべきだよ」

 ミナセは淡々と言う。

(うっ、なにも言い返せない……!)

 でも、あきらめることもできないんだ。

「……もう、ルリは危なっかしくて、見てられないよ。レオみたいに、部屋に閉じこめておきたいくらいだな」
「えええっ」
「っていうのは冗談だけど。……吸血鬼を訪ねるなら、明日の朝だよ」

 ミナセはわたしを家に押し戻しながら、苦笑する。

「赤輝石があれば、って考えは正しいと思う。だから、行くなら明日の朝。ぼくもいっしょに行くから」
「ミナセも? でも、お屋敷の仕事は?」
「モーリスさまに頼んで、休みにしてもらった。ルリとレオを放っておけないからね」
「……ミナセ!」

 わたしは、ミナセの言葉に涙がにじんだ。ミナセがいれば心強い。なんといっても、頭はいいし、魔法も得意! 百人力だ!

「ありがとう、ミナセ!」
「どういたしまして。だから、ね。今日は休んで、明日に備えて」

 今度はわたしも素直にうなずいた。言われたとおりに、部屋に戻ってベッドに寝転ぶ。

(待っててね、レオ。必ず、助けてみせるから)

 わたしは目を閉じて、心の中でつぶやいた。
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