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異世界転移⁉ 生き延びたリリアン
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(ああ、ここはどこかしら?)
気を失っていたリリアンは、意識を取り戻した。十字架磔にされて火炙り公開処刑という、悲惨極まりない最期を遂げようとしたところで、神に命を助けられたのだ。そして、新たな地で生きるべく、神の転移魔法で異世界転移の最中だった。
(わたし、一度死んだのかしら)
転移中に覚醒するのは珍しかった。リリアンとしての身体の実体はなく、意識だけが異空間を浮遊しているような状況だった。
(わたしの人生って、何だったのかなあ?)
短かいながら波乱万丈だった。幼い頃に、変身魔法の素質を見いだされ、将来は聖女として人々を守るべく、マールベラ伯爵家に養女として入った。
それから、聖女として順調に成長し、シュペール王国の守護神として、魔族と戦って、人々を守り続けた。そして、王太子のアステールと婚約、晴れて王太子と結ばれて処女でなくなれば、聖女としての役目も終わり、王国の王妃としての生涯が始まるはずだったのだ。
だが、わずか数日でその運命は暗転した。王太子妃の座を狙う侯爵令嬢ジリーナの策謀に嵌められてしまい、魔族と内通する悪役令嬢のレッテルを貼られて、婚約は破棄され、あろうことか死刑の宣告を受けてしまったのだ。
それもただの死刑ではなく、リリアンを辱めて尊厳を奪い取るべく、半裸で十字架に磔にされ火炙りにされるという残酷極まりないものだった。
彼女にとって、何よりショックだったのは、乳房を丸出しにした十字架上で感じた、観衆たちの下卑た視線であった。聖女として崇拝されていたはずの自分が、どうしてこんないやらしい視線を浴びるのか?
だが、こうなった遠因を考えるに、リリアンがすべて人任せの人生を送ってきたことかもしれなかった。伯爵家の養女から聖女、さらに次期王妃、全部既定の路線に乗ってきただけだった。聖女として人のために尽くしてはきたが、自主的に決めるということをしてこなかったのだ。
(もし、次に機会があったら、今度こそ自分のために生きるようにしよう)
とリリアンは決意したが、その次があるのかどうか? はたしてこの後、どこに行くのか見当もつかない。
(いったい、これからどこに行くのかしら?)
誰かの身体に憑依して転生するのか? それとも自分の姿のまま転移するのか?
神様は、そこまでは教えてくれなかった。場合によっては、人間以外のものに転生してしまう場合すらある、と聞いていた。なんだかぞっとしない話だ。
(できたら、今のままで転移するのがいいなあ)
とリリアンは強く願った。彼女は今の自分が気に入っていた。今のリリアン・マールベラのまま、どこか知らない新しい世界でやり直したい、聖女の切なる願いだった。
そうして時が経ち、ふと気がつくと、急に雰囲気が変わった。異空間から突然現実世界に戻ったのだった。
「やったわ! わたしのままだわ。これからもリリアンとして生きられるんだわ!」
神様が、リリアンの願いをまたもかなえてくれたのか? 転生して、他の誰かに生まれ変わるのではなく、リリアン・マールベラの姿で異世界転移したのだった。
格好は、転移直前の姿のままだった。つまり、下着一枚の半裸だったが、とにかくこうして生き延びて、違う世界に転移しただけでも喜ばねばならない。
リリアンは、パンツの右腰のあたりに違和感を感じたので、目を向けた。すると奪われたはずの魔法スティックがパンツに挟まっているではないか。しかも3本もあった。これがあれば、千人力である。神様がリリアンの最後の願いを聞き届けてくれたのだ。
「ありがとう、神様! しかも、3本ももらえるなんて大サービスね」
だが、その時部屋の中にあったベッドがゴゾゴソと動き出した。人が寝ていたのだ。
「ちょ、ちょっと! 君、誰なの?」
男性の声がした。心底から仰天したような男性が現れたのだった。おそらく、この部屋の持ち主なのだろう。だがそこで、リリアンは自分が現在パンツ一枚しか穿いていないことを思い出した。知らない男に見せる姿ではない。
「きゃあっ! いやあんっ、見ないで!」
聖女は慌てて両腕で胸を隠し、恥じらいの悲鳴を上げた。
気を失っていたリリアンは、意識を取り戻した。十字架磔にされて火炙り公開処刑という、悲惨極まりない最期を遂げようとしたところで、神に命を助けられたのだ。そして、新たな地で生きるべく、神の転移魔法で異世界転移の最中だった。
(わたし、一度死んだのかしら)
転移中に覚醒するのは珍しかった。リリアンとしての身体の実体はなく、意識だけが異空間を浮遊しているような状況だった。
(わたしの人生って、何だったのかなあ?)
短かいながら波乱万丈だった。幼い頃に、変身魔法の素質を見いだされ、将来は聖女として人々を守るべく、マールベラ伯爵家に養女として入った。
それから、聖女として順調に成長し、シュペール王国の守護神として、魔族と戦って、人々を守り続けた。そして、王太子のアステールと婚約、晴れて王太子と結ばれて処女でなくなれば、聖女としての役目も終わり、王国の王妃としての生涯が始まるはずだったのだ。
だが、わずか数日でその運命は暗転した。王太子妃の座を狙う侯爵令嬢ジリーナの策謀に嵌められてしまい、魔族と内通する悪役令嬢のレッテルを貼られて、婚約は破棄され、あろうことか死刑の宣告を受けてしまったのだ。
それもただの死刑ではなく、リリアンを辱めて尊厳を奪い取るべく、半裸で十字架に磔にされ火炙りにされるという残酷極まりないものだった。
彼女にとって、何よりショックだったのは、乳房を丸出しにした十字架上で感じた、観衆たちの下卑た視線であった。聖女として崇拝されていたはずの自分が、どうしてこんないやらしい視線を浴びるのか?
だが、こうなった遠因を考えるに、リリアンがすべて人任せの人生を送ってきたことかもしれなかった。伯爵家の養女から聖女、さらに次期王妃、全部既定の路線に乗ってきただけだった。聖女として人のために尽くしてはきたが、自主的に決めるということをしてこなかったのだ。
(もし、次に機会があったら、今度こそ自分のために生きるようにしよう)
とリリアンは決意したが、その次があるのかどうか? はたしてこの後、どこに行くのか見当もつかない。
(いったい、これからどこに行くのかしら?)
誰かの身体に憑依して転生するのか? それとも自分の姿のまま転移するのか?
神様は、そこまでは教えてくれなかった。場合によっては、人間以外のものに転生してしまう場合すらある、と聞いていた。なんだかぞっとしない話だ。
(できたら、今のままで転移するのがいいなあ)
とリリアンは強く願った。彼女は今の自分が気に入っていた。今のリリアン・マールベラのまま、どこか知らない新しい世界でやり直したい、聖女の切なる願いだった。
そうして時が経ち、ふと気がつくと、急に雰囲気が変わった。異空間から突然現実世界に戻ったのだった。
「やったわ! わたしのままだわ。これからもリリアンとして生きられるんだわ!」
神様が、リリアンの願いをまたもかなえてくれたのか? 転生して、他の誰かに生まれ変わるのではなく、リリアン・マールベラの姿で異世界転移したのだった。
格好は、転移直前の姿のままだった。つまり、下着一枚の半裸だったが、とにかくこうして生き延びて、違う世界に転移しただけでも喜ばねばならない。
リリアンは、パンツの右腰のあたりに違和感を感じたので、目を向けた。すると奪われたはずの魔法スティックがパンツに挟まっているではないか。しかも3本もあった。これがあれば、千人力である。神様がリリアンの最後の願いを聞き届けてくれたのだ。
「ありがとう、神様! しかも、3本ももらえるなんて大サービスね」
だが、その時部屋の中にあったベッドがゴゾゴソと動き出した。人が寝ていたのだ。
「ちょ、ちょっと! 君、誰なの?」
男性の声がした。心底から仰天したような男性が現れたのだった。おそらく、この部屋の持ち主なのだろう。だがそこで、リリアンは自分が現在パンツ一枚しか穿いていないことを思い出した。知らない男に見せる姿ではない。
「きゃあっ! いやあんっ、見ないで!」
聖女は慌てて両腕で胸を隠し、恥じらいの悲鳴を上げた。
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