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無残! 聖女、屈辱の磔処刑宣告
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だが、ここで王太子が意外なことを言い出した。
「今日、わざわざここに来たのは、リリアン、君に提案があるんだよ」
「提案とは?」
ひょっとして助かる道があるのだろうか? わたしは、ほんのわずかな希望を抱いて、王太子に尋ねた。
「うむ。リリアン、君に潔く自分の罪を認めてもらいたい。そしてその罪を民衆の前で告白し、懺悔するのだ。わたしは魔族と内通し、王国を滅ぼそうとしていましたとね。そうすれば、死刑は取り消してもいい。終身刑に減刑で、一生牢獄からは出れないだろうが、命は助けてやってもよい」
わたしの抱いたかすかな希望は粉々に打ち砕かれた。わたしに減刑を受け、死刑を免れる代償として、犯してもいない罪を認め、人々の前で懺悔せよ、というのだった。
なんという恥知らずな提案だろう。たとえ、命を失おうとも、そのような欺瞞はわたしには受け入れることはできない。わたしは毅然として、答えを返した。
「王太子殿下にはもうわかっておられるはずです。聖女であるこのわたしが、そのような提案を受け入れるはずはないということが。お断りします」
アステールは、わたしがこの提案を断るだろう、と予測していたのだろう。わたしの拒絶にも表情を変えなかった。
「これまた残念だねえ、リリアン。せっかく命だけは助けてやる、というのにこれを断ってしまうなんて。君はほんとうに愚か者だよ」
そして、残酷かつ卑劣な計画を開陳した。
「それなら、こっちも徹底的にやらせてもらうよ。せっかくの聖女の公開処刑だ。派手なショーにしないとね。君には十字架に磔になって火炙りになってもらう。それも裸になってもらってね」
「フフ、まあ全裸じゃあんまりだからパンツ一枚くらい着けさせてもいい。でも上半身は裸さ。君の大きくて美しいオッパイが民衆の前に晒されるなんて、ゾクゾクするね」
「ええっ、なんですって!」
聖女のわたしを辱めて晒し者にする気なのだ。どこまで、わたしを貶めれば気が済むのか? 激しい怒りとともに、沸き上がってきたあまりの恐ろしさに気が遠くなりそうだったが、かろうじて会話は続けた。
「目的は、わたしを辱めて聖女としての名声を地に堕とすため…‥なのね」
「さすがリリアンだ。わかってるじゃないか」
わたしは頭がクラクラしてきた。この男は冷酷なだけではなく、大変なサディストだ。結婚しなくて大正解だったのだが、わかるのが遅過ぎた。
「何をしようというの! この破廉恥野郎!」
ずっと、怒りをこらえて、自分を抑えてきたわたしも、とうとう堪忍袋の尾が切れてしまい、声を荒らげてしまった。そんなことをしても何の役にも立たないのだけど。
「フフ、怖い聖女様だ。婚約破棄してよかったよ」
バツの悪そうな顔をしてくだらない皮肉を言ったアステールは、最後のパンチをわたしに食らわせてきた。
「そうそう、これも教えとかないとね。リリアン、君の処刑が終わったら、ジリーナとの婚約を発表する予定だ。彼女はいい王妃になるだろう。君に結婚式に出てもらえないのが残念だよ」
王太子とジリーナの婚約の話にわたしはショックを受けたが、その話題はいやだったわたしは、わざと違う話にそらして反論した。
「もし、わたしがいなくなれば、だれが魔族と戦うのですか? 魔法戦士に変身するものだけが魔獣を倒せるのですよ」
「通常の兵力を増強すれば済むことだ。何の心配もない」
王太子は、魔族を甘く見ているようだ。王室はどうでもいいが、無辜の民衆たちが魔族の毒牙にかからねばよいのだが。
このやり取りが最後で、王太子は去っていった。牢獄に一人取り残されたわたしの目からは涙が溢れてきた。
彼らは、わたしから誇りと尊厳も奪い取るつもりなのだ。多くの人々の見ている前で、半裸にされ、磔火炙りだなんて、こんな残酷で屈辱的な死に方はない。わたしが何をしたというのか。こみ上げてきた大変な羞恥心と王太子への怒りで、身が焦がれそうだった。
「今日、わざわざここに来たのは、リリアン、君に提案があるんだよ」
「提案とは?」
ひょっとして助かる道があるのだろうか? わたしは、ほんのわずかな希望を抱いて、王太子に尋ねた。
「うむ。リリアン、君に潔く自分の罪を認めてもらいたい。そしてその罪を民衆の前で告白し、懺悔するのだ。わたしは魔族と内通し、王国を滅ぼそうとしていましたとね。そうすれば、死刑は取り消してもいい。終身刑に減刑で、一生牢獄からは出れないだろうが、命は助けてやってもよい」
わたしの抱いたかすかな希望は粉々に打ち砕かれた。わたしに減刑を受け、死刑を免れる代償として、犯してもいない罪を認め、人々の前で懺悔せよ、というのだった。
なんという恥知らずな提案だろう。たとえ、命を失おうとも、そのような欺瞞はわたしには受け入れることはできない。わたしは毅然として、答えを返した。
「王太子殿下にはもうわかっておられるはずです。聖女であるこのわたしが、そのような提案を受け入れるはずはないということが。お断りします」
アステールは、わたしがこの提案を断るだろう、と予測していたのだろう。わたしの拒絶にも表情を変えなかった。
「これまた残念だねえ、リリアン。せっかく命だけは助けてやる、というのにこれを断ってしまうなんて。君はほんとうに愚か者だよ」
そして、残酷かつ卑劣な計画を開陳した。
「それなら、こっちも徹底的にやらせてもらうよ。せっかくの聖女の公開処刑だ。派手なショーにしないとね。君には十字架に磔になって火炙りになってもらう。それも裸になってもらってね」
「フフ、まあ全裸じゃあんまりだからパンツ一枚くらい着けさせてもいい。でも上半身は裸さ。君の大きくて美しいオッパイが民衆の前に晒されるなんて、ゾクゾクするね」
「ええっ、なんですって!」
聖女のわたしを辱めて晒し者にする気なのだ。どこまで、わたしを貶めれば気が済むのか? 激しい怒りとともに、沸き上がってきたあまりの恐ろしさに気が遠くなりそうだったが、かろうじて会話は続けた。
「目的は、わたしを辱めて聖女としての名声を地に堕とすため…‥なのね」
「さすがリリアンだ。わかってるじゃないか」
わたしは頭がクラクラしてきた。この男は冷酷なだけではなく、大変なサディストだ。結婚しなくて大正解だったのだが、わかるのが遅過ぎた。
「何をしようというの! この破廉恥野郎!」
ずっと、怒りをこらえて、自分を抑えてきたわたしも、とうとう堪忍袋の尾が切れてしまい、声を荒らげてしまった。そんなことをしても何の役にも立たないのだけど。
「フフ、怖い聖女様だ。婚約破棄してよかったよ」
バツの悪そうな顔をしてくだらない皮肉を言ったアステールは、最後のパンチをわたしに食らわせてきた。
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このやり取りが最後で、王太子は去っていった。牢獄に一人取り残されたわたしの目からは涙が溢れてきた。
彼らは、わたしから誇りと尊厳も奪い取るつもりなのだ。多くの人々の見ている前で、半裸にされ、磔火炙りだなんて、こんな残酷で屈辱的な死に方はない。わたしが何をしたというのか。こみ上げてきた大変な羞恥心と王太子への怒りで、身が焦がれそうだった。
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