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陰謀の黒幕はあの女!
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「リリアン、君が悪役令嬢だったなんて残念だよ。こともあろうに、王国への反逆を企んでいたなんてね」
わたしに向かって厚顔無恥な一言を放った人物は、つい昨日までわたしの婚約者だった王太子アステールだった。何を思ったのか、囚われの身であるわたしの牢獄まで面会に来たのだ。
「わたしは無実です。王国への反逆を企んだりなんてしてません!」
わたしは即座に反論したが、実際にアステールに対してどんな態度を取ったらいいのか、図りかねていた。
茶番とはいえ、わたしは裁判で死刑を宣告されてしまったのだ。輝ける王太子の婚約者から、あっという間に王国への反逆を企んだ死刑囚へと暗転したわたしの運命。
これだけのことをやってのけるのは王室の権力なしでは不可能だ。だから、この陰謀に王太子が絡んでいるのは間違いない。実は婚約中も、アステールはあまり情のない人間に思え、婚約者とはいえ心底から好きにはなれなかった。伯爵家のための政略結婚と割り切っていたのだ。
だが、今のわたしの苦境を覆す力があるとしたら国王か、この王太子しかいない。今、目の前にいる王太子に媚びを売って、お情けを乞うべきなのか、それとも悪口雑言を浴びせてせめて憂さ晴らししたらいいのか迷っていた。
わたしの否認を受けて、王太子はまたしても無神経な一言を放つ。
「だってリリアン、裁判で自分の無実を証明できなかったんだろ。口でいくら無実と言ってもねえ」
わたしは、激昂して掴みかかりそうになったが、かろうじて自分を抑えた。
「あんなデタラメな茶番劇、正式な裁判だなんて言えませんわ」
というのが精一杯だった。だがアステールの信じがたい話はなおも続く。
「しかし、ジリーナのおかげで助かったよ。彼女のおかげで、君の反逆、裏切り行為が発覚したんだからね」
わたしは顔がひきつるのが自分でわかった。ジリーナ! 最近おかしな動きをしていた侯爵令嬢のジリーナのことだった。やはりあの女の企みだったのか。
「彼女が何をしたと言うのですか?」
「なあに、リリアン、君が魔族と内通している動かぬ証拠を見つけてきたんだよ。そして王妃として王室に入った後、魔族と結んで王国の転覆させようという計画を企んでいることもね」
わたしは、王太子を罵倒しそうになるのを、なんとか自制した。だが、このアステールの話のおかげで、ようやく、この陰謀の全体像が見えてきた。
黒幕として背後で暗躍しわたしを陥れる筋書きを描いたのは、侯爵令嬢ジリーナだ。王太子の婚約者の座をわたしから奪い取るつもりなのだ。そして彼女にいろいろと吹き込まれた、この多少オツムの弱いアステールが、まんまとたぶらかされてしまったのだ。
彼らにとって邪魔になったわたしを、王室の権力を使って、婚約破棄から、インチキ裁判にかけて聖女の地位を奪い取り、貶めてから火刑にして存在も抹殺しようという大変な企みだ。このような卑劣な企みを許してはならない。これが最後のチャンスだ。
「王太子殿下に申し上げます。悪女はわたしではなくジリーナの方です。証拠と称するものはすべてでっちあげです。おそらく、わたしを貶めて、次期王妃の地位から引きずり下ろし、自分がその地位に座ろうという邪悪な意図からでしょう。あのような者に騙されてはなりません。今一度、お考え直しくださいませ」
だが、わたしの必死の釈明も、王太子の心を動かすことはできなかったのだ。逆に反論してくる。
「フフ、今更何を言うんだ。だってもう裁判で判決は出てるんだよ、きみは死刑だ、火炙りにされるんだ。もう決まってるんだよ」
「ううっ……」
王太子アステールは、婚約者だったわたしを冷たく突き放した。もうおしまいなのか、わたしにとって最悪の結果になろうとしていた。
わたしに向かって厚顔無恥な一言を放った人物は、つい昨日までわたしの婚約者だった王太子アステールだった。何を思ったのか、囚われの身であるわたしの牢獄まで面会に来たのだ。
「わたしは無実です。王国への反逆を企んだりなんてしてません!」
わたしは即座に反論したが、実際にアステールに対してどんな態度を取ったらいいのか、図りかねていた。
茶番とはいえ、わたしは裁判で死刑を宣告されてしまったのだ。輝ける王太子の婚約者から、あっという間に王国への反逆を企んだ死刑囚へと暗転したわたしの運命。
これだけのことをやってのけるのは王室の権力なしでは不可能だ。だから、この陰謀に王太子が絡んでいるのは間違いない。実は婚約中も、アステールはあまり情のない人間に思え、婚約者とはいえ心底から好きにはなれなかった。伯爵家のための政略結婚と割り切っていたのだ。
だが、今のわたしの苦境を覆す力があるとしたら国王か、この王太子しかいない。今、目の前にいる王太子に媚びを売って、お情けを乞うべきなのか、それとも悪口雑言を浴びせてせめて憂さ晴らししたらいいのか迷っていた。
わたしの否認を受けて、王太子はまたしても無神経な一言を放つ。
「だってリリアン、裁判で自分の無実を証明できなかったんだろ。口でいくら無実と言ってもねえ」
わたしは、激昂して掴みかかりそうになったが、かろうじて自分を抑えた。
「あんなデタラメな茶番劇、正式な裁判だなんて言えませんわ」
というのが精一杯だった。だがアステールの信じがたい話はなおも続く。
「しかし、ジリーナのおかげで助かったよ。彼女のおかげで、君の反逆、裏切り行為が発覚したんだからね」
わたしは顔がひきつるのが自分でわかった。ジリーナ! 最近おかしな動きをしていた侯爵令嬢のジリーナのことだった。やはりあの女の企みだったのか。
「彼女が何をしたと言うのですか?」
「なあに、リリアン、君が魔族と内通している動かぬ証拠を見つけてきたんだよ。そして王妃として王室に入った後、魔族と結んで王国の転覆させようという計画を企んでいることもね」
わたしは、王太子を罵倒しそうになるのを、なんとか自制した。だが、このアステールの話のおかげで、ようやく、この陰謀の全体像が見えてきた。
黒幕として背後で暗躍しわたしを陥れる筋書きを描いたのは、侯爵令嬢ジリーナだ。王太子の婚約者の座をわたしから奪い取るつもりなのだ。そして彼女にいろいろと吹き込まれた、この多少オツムの弱いアステールが、まんまとたぶらかされてしまったのだ。
彼らにとって邪魔になったわたしを、王室の権力を使って、婚約破棄から、インチキ裁判にかけて聖女の地位を奪い取り、貶めてから火刑にして存在も抹殺しようという大変な企みだ。このような卑劣な企みを許してはならない。これが最後のチャンスだ。
「王太子殿下に申し上げます。悪女はわたしではなくジリーナの方です。証拠と称するものはすべてでっちあげです。おそらく、わたしを貶めて、次期王妃の地位から引きずり下ろし、自分がその地位に座ろうという邪悪な意図からでしょう。あのような者に騙されてはなりません。今一度、お考え直しくださいませ」
だが、わたしの必死の釈明も、王太子の心を動かすことはできなかったのだ。逆に反論してくる。
「フフ、今更何を言うんだ。だってもう裁判で判決は出てるんだよ、きみは死刑だ、火炙りにされるんだ。もう決まってるんだよ」
「ううっ……」
王太子アステールは、婚約者だったわたしを冷たく突き放した。もうおしまいなのか、わたしにとって最悪の結果になろうとしていた。
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