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聖女リリアンの戦い
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「聖女さま、お助けください!」
わたしに助けを求めて、すがりついてくる村人たちの叫びだった。彼らは魔獣に追い立てられていた。魔獣は身長2mほどもある熊のように大きい身体を持ち、鋭い牙と長い爪を持っていた。おまけに知能も高く、人語も話すことができる。たとえ戦っても普通の人間では歯が立たない。
わたしの名前は、リリアン・マールベラ。マールベラ伯爵の娘、つまり伯爵令嬢だ。ここはシュペール王国、剣と魔法の世界である。この王国は最近、魔族の侵攻に悩まされていたのだ。魔族は王国内に魔獣を放ち、人々の安全を脅かしていた。
わたしが、村人たちから「聖女さま」と呼ばれているのにはわけがあった。わたしは、変身魔法を使って、この強力な魔獣を倒す能力を持つことができるのだ。ここはわたしの出番だった。
わたしは、短かいスティックを取り出して右手に持って上に掲げた。そして、大声で叫んだ。
「変身!」
わたしの全身が強烈な輝きの光に覆われた。そして、その光の中でわたしの衣服が消え、一瞬だけ全裸になった。~~残念ながら、外部からは見ることはできません~~
その後、クルクルと布の帯がわたしの身体に巻き付いて、戦闘コスチュームを形成していった。胸に花のような飾りのついたノースリーブのワンピース、スカートは超ミニでパニエを穿いていた。
「魔法戦士、ブライトスター参上! 魔獣よここから去りなさい」
わたしの登場で、魔獣は色めき立った。それまで、わたしは魔族の送り込む魔獣どもを倒して彼らを散々痛い目に遭わせていたのだった。復讐に燃えていたのは当然だった。
「現れたなブライトスター! 俺は魔獣グリズラーだ。今日こそお前をぶっ殺してやる!」
牙を剥き出して、すごい迫力で、わたしを威嚇してきた。普通の人間なら、これだけで腰が抜けて動けなくなってしまうだろう。しかし、わたしにはこんなこけおどしは通用しない。
「そちらこそ、わたしからやられる前に、今のうちに逃げた方がいいわよ」
とやり返した。すると、魔獣は口からいきなり炎を噴射してきた。先制攻撃だ。おっと危ない。ここは軽くジャンプして高熱の炎を交わした。
「グワッ!」
今度は魔獣は爪を振り上げて、わたしに襲いかかってきた。わたしは体を沈めて、爪を交わすと、すかさずボディに強烈なミドルキックを浴びせてやった。 魔獣はもんどりうって吹っ飛んだ。チャンス到来だ。
「ホーリーアロー!」
わたしの右腕から、正義のエナジーに満ちた光の矢が放たれた。わたしの魔法奥義の1つだ。ホーリーアローは魔獣の身体を貫いた。
「ギャアアッ!」
断末魔の叫びと共に、魔獣の巨体は消滅した。わたしの完全勝利だった。すると、人々がわたしの周りに集まり、感謝の言葉を口にした。
「聖女様、ありがとうございました」
「礼には及びませんよ。わたしは、自分の仕事を果たしたまでです」
そうだ。わたしは聖女として、自分の義務を果たしただけだった。変身魔法で魔族から、人々を守るのである。
わたしはこれを自分の聖なる義務として捉えていた。
もう一つ、わたしは、この王国の次期国王になる王太子と婚約していたのだ。つまり次期王妃になる立場の人間だった。そうなったら、聖女として最前線で戦うことはあまりできなくなってしまう。早く自分の後継者を作らないといけない。
しかし、聖女として人々を守りながら、彼らと交流する今の生活も、わたしには気に入っていた。これを簡単に捨てるのも、わたしの本意ではなかった。なんとか、今の生活を続けたい気持ちも強かったのだ。
だが、やがてわたしを取り巻く事態はそれどころではなくなるのだった。このわたしが卑劣な罠に嵌められてすべてを失ってしまうなんて、その時は思いもしなかったのだ。
わたしに助けを求めて、すがりついてくる村人たちの叫びだった。彼らは魔獣に追い立てられていた。魔獣は身長2mほどもある熊のように大きい身体を持ち、鋭い牙と長い爪を持っていた。おまけに知能も高く、人語も話すことができる。たとえ戦っても普通の人間では歯が立たない。
わたしの名前は、リリアン・マールベラ。マールベラ伯爵の娘、つまり伯爵令嬢だ。ここはシュペール王国、剣と魔法の世界である。この王国は最近、魔族の侵攻に悩まされていたのだ。魔族は王国内に魔獣を放ち、人々の安全を脅かしていた。
わたしが、村人たちから「聖女さま」と呼ばれているのにはわけがあった。わたしは、変身魔法を使って、この強力な魔獣を倒す能力を持つことができるのだ。ここはわたしの出番だった。
わたしは、短かいスティックを取り出して右手に持って上に掲げた。そして、大声で叫んだ。
「変身!」
わたしの全身が強烈な輝きの光に覆われた。そして、その光の中でわたしの衣服が消え、一瞬だけ全裸になった。~~残念ながら、外部からは見ることはできません~~
その後、クルクルと布の帯がわたしの身体に巻き付いて、戦闘コスチュームを形成していった。胸に花のような飾りのついたノースリーブのワンピース、スカートは超ミニでパニエを穿いていた。
「魔法戦士、ブライトスター参上! 魔獣よここから去りなさい」
わたしの登場で、魔獣は色めき立った。それまで、わたしは魔族の送り込む魔獣どもを倒して彼らを散々痛い目に遭わせていたのだった。復讐に燃えていたのは当然だった。
「現れたなブライトスター! 俺は魔獣グリズラーだ。今日こそお前をぶっ殺してやる!」
牙を剥き出して、すごい迫力で、わたしを威嚇してきた。普通の人間なら、これだけで腰が抜けて動けなくなってしまうだろう。しかし、わたしにはこんなこけおどしは通用しない。
「そちらこそ、わたしからやられる前に、今のうちに逃げた方がいいわよ」
とやり返した。すると、魔獣は口からいきなり炎を噴射してきた。先制攻撃だ。おっと危ない。ここは軽くジャンプして高熱の炎を交わした。
「グワッ!」
今度は魔獣は爪を振り上げて、わたしに襲いかかってきた。わたしは体を沈めて、爪を交わすと、すかさずボディに強烈なミドルキックを浴びせてやった。 魔獣はもんどりうって吹っ飛んだ。チャンス到来だ。
「ホーリーアロー!」
わたしの右腕から、正義のエナジーに満ちた光の矢が放たれた。わたしの魔法奥義の1つだ。ホーリーアローは魔獣の身体を貫いた。
「ギャアアッ!」
断末魔の叫びと共に、魔獣の巨体は消滅した。わたしの完全勝利だった。すると、人々がわたしの周りに集まり、感謝の言葉を口にした。
「聖女様、ありがとうございました」
「礼には及びませんよ。わたしは、自分の仕事を果たしたまでです」
そうだ。わたしは聖女として、自分の義務を果たしただけだった。変身魔法で魔族から、人々を守るのである。
わたしはこれを自分の聖なる義務として捉えていた。
もう一つ、わたしは、この王国の次期国王になる王太子と婚約していたのだ。つまり次期王妃になる立場の人間だった。そうなったら、聖女として最前線で戦うことはあまりできなくなってしまう。早く自分の後継者を作らないといけない。
しかし、聖女として人々を守りながら、彼らと交流する今の生活も、わたしには気に入っていた。これを簡単に捨てるのも、わたしの本意ではなかった。なんとか、今の生活を続けたい気持ちも強かったのだ。
だが、やがてわたしを取り巻く事態はそれどころではなくなるのだった。このわたしが卑劣な罠に嵌められてすべてを失ってしまうなんて、その時は思いもしなかったのだ。
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