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第26話 領地決定

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 俺たち『翼竜の翼』はフィンブルド伯爵令嬢の王都アルバまでの護衛依頼を無事達成し、伯爵から直々に報酬を貰った。
 その後ギルドには達成報告をしなくてはならないので『翼竜の翼』の面々で王都の冒険者ギルドへと向かう。
 
 王都アルバの冒険者ギルドは王都だけあって、一つの屋敷のように聳え立っていた。
 
 俺達が王都の冒険者ギルドへと入ると、冒険者ギルドが一瞬静まり返り、噂話で騒々しさを増す。

「あれがあのSSS級の地龍を討伐した『翼竜の翼』らしいわよ!」
「え!? それ本当なの? 私達よりも全然若いパーティじゃない!」
「本当らしいぞ! なんたっても国王陛下から直々に褒賞を賜ったとか!」
「それに黒髪の少年が『翼竜の翼』で一番強いんだとか!」

 ギルド内はSSS級の地龍討伐という異例の事を話題の種に盛り上がりを見せていた。

 だが噂をするものの、近づいてくるものはそれほど居なかった。

 こういう注目はフィンブルドの街でもこういう注目は受けてきたが、あからさまに注目されている度合いが違う。

 俺たちは注目を浴びながら、ギルド内の受付へと向かう。そして『翼竜の翼』リーダーのケインが護衛依頼の達成を告げる。

 王都冒険者ギルドの受付嬢も『翼竜の翼』と聞くと、実際に目の前にし驚いていたが、事務的な作業をしてくれる。

 俺たちはいつも通りにギルドカードを受付嬢へと渡す。

「それではこちらがギルドカードのお返しでございます。また今回、地龍の討伐によりアルトバルト国王陛下から『翼竜の翼』のランクアップを申請されたので、これを受理して、冒険者ギルドとして『翼竜の翼』を本日より、Aランクへとランクアップさせます。またAランク以上になりますと色々と特権がありますのでそちらの方も確認しておいてください。この度は地龍討伐、冒険者ギルドを代表して感謝を申し上げます」

 王都の受付嬢だけあってか、素晴らしいスピードでギルドカードの処理を終えて、連絡事項を淡々と伝えてくれる。
 特権といってたが、そういえばAランク以上は准貴族位の地位と権力が与えられているとの事だったが、権力的には騎士爵と同等の権力だという。

 その後、冒険者ギルドとして『地龍の素材』を買い取りたいという提案があったが、フィンブルド伯爵にはオークションに出品すると伝えていたので、断ることにした。

 冒険者ギルドでは護衛依頼の達成報告以外何も用事がなかったので、俺たちは王都の冒険者ギルドを後にした。

 冒険者ギルドを出ると、空が赤く染まっていて夜が近づいていた。
 それでもアルトバルトの王国建国祭があるからか屋台は光を灯し、さらに賑わいを見せていた。

 俺も王国建国祭がどんな物なのか見る為に2週間もかけて護衛依頼を受けた。
『翼竜の翼』のメンバーも先程までは伯爵令嬢の護衛、さらには国王陛下の拝謁があったためにずっと緊張に苛まれていたが、ようやく何事もなくやり遂げ、解放されたようだった。
 
 サリネが小さな子供のように屋台を駆け回る。
 面白いものを見かけてはそれを見せてくる。

「こっちきてよー。この串凄く美味しいそうじゃないー。『ドラゴンの金◯』って言うんだって。一緒に食べよー」

「ちょっと、サリネ! 一応、女の子なんだから金◯なんていうのやめなさいよね——————って、ナニコレ! めっちゃ美味しいじゃない!」

 マリンの言う通り、女の子が大通りのど真ん中で金◯というものではない。
 結局『ドラゴンの金玉』というものを食したが、前世でいうレバー似た味で、かなり美味しかった。
 店主によると本物のドラゴンの睾丸でないそうで、ただ今は注目を浴びるから『ドラゴンの金◯』という名前にしたという。

「そういえば、ケインとマルゴは王国建国祭で何か興味あるものはあるのか?」

「そうだなあ。俺は国王主催の武道会に興味があるなぁ。やっぱり男たるもの自分の力を確かめたくなるもんだろ?」

「ケインもそうかよ。俺も武道会には絶対出ようと思っていたぜ。なんたって俺の力を示すチャンスだからな!」

 ケインとマルゴは王国主催の武道会への出場に興味があるとのことだった。
 俺としては武道会には出場したいと思う程の興味はないが、ケインとマルゴが出場すると言うのなら面白そうだ。

 その後も『翼竜の翼』で王国建国祭間近で賑わいを見せる王都散策を楽しんだ。


 ⭐︎⭐︎⭐︎

 王都アルバへと護衛依頼で到着した後、数日間は『翼竜の翼』のメンバーと別行動で、ゆったりと時間を過ごしていた。

 そして、今日はというと国王デイドルドに王城へ登城する様に言われたため王城へと足を運んだ。
 城門に衛兵隊が居たが、『龍殺しの英雄』などと呼ばれて顔パスで入ることが出来た。

 こんな警備が甘くて、大丈夫なのかなと思ったけれど、恐らく大丈夫なのだろう。

 そして、俺は侍女の案内に従って、前に訪れた国王の応接室へと向かう。
 応接室の扉が開くと、そこには国王デイドルドと今日も可憐なドレスに身を包んだフィリナが居た。

「おぉソウタよ。突然呼び出してすまんかったな。今日は色々と伝えておくことがあってな」

 王女殿下フィリナは国王デイドルドの隣に座ると思いきや、俺の隣へとちょこんと座る。

「は、はい。それで伝えておくことというのはなんでしょうか?」

 デイドルドは咳を一つしてから話し始める。

「まずは王都内の屋敷を幾つか見繕って置いたぞ。フィリナからソウタは貴族入りして間もないから色々してあげてくれと頼まれてな。なるべく良さげな屋敷を選定しておいた。最終決定に関してはフィリナと決めてくれれば良い」

 子爵でも王都に屋敷が必要かどうか聞いたのだが、絶対に必要だとデイドルドは主張した。
 デイドルドは紙を広げ、屋敷の物件を俺とフィリナへと広げる。
 俺はこの状況にまるで自分たちが新婚夫婦かのようだった。
 国王陛下が直々に物件を探してくるなんて良いのかと思ったが、無用な心配らしち。

「では屋敷の方はまた後でゆっくりとフィリナ王女殿下と一緒に決める事にします」

 すぐに決定することも出来ないし、考えている間国王を待たせておく訳にもいかない。

「ああ、それで良いぞ。それと、もう一つだが、お主はもうどんな家名にするのか決めたのか?」

 完全に家名を決定することを失念していた俺は逃げるべく、

「家名に関してもですが、せっかくなら家族になるフィリナ王女殿下と一緒に決めようかと」

 そう告げると隣にいるフィリナ王女殿下は顔を赤くして、嬉しそうな表情を浮かべる。
 こんな純粋に喜んでくれるとこちら側も必然的に照れてしまう。

「そうか、では屋敷と家名に関しては、また後程聞くことにしようじゃないか。それで今から最重要の本題に入るが、今回、お主に管理と運営をお願いしたい領地が決まった。だが、その領地には色々と問題があってな———」

 国王デイドルドが言いづらそうに表情を暗くする。
 フィリナ王女殿下も知らされていないのか、困ったような不安げな表情を浮かべる。 

 俺も自分が行くことにある領地に、どんな問題があるのかは聞かないわけにはいかない。
「陛下、その領地という場所はどんな場所なんでしょうか?」

「そうだな……その領地の近くにあるものを言えば大体察すると思うんだが、その領地の近くには王国の中でも未開地である『古龍の峡谷』という場所があるんだ」

『古龍の峡谷』という場所を聞いたフィリナ王女は顔色を青くする。
 対して俺はどんな場所か分からず、はてな顔だ。

『古龍の峡谷』がどんな場所かを俺は知らなかったので、フィリナに聞くと王国の北端に位置して、名前の通りに古の龍が棲まう峡谷。さらには、その周りの森も、その古龍によって守護されていて、その影響によって、その森には上級魔物が棲息しているという。

 その古の龍の影響によって、簡単には森に侵入することが出来ず、未だに開拓されて居らず、アルトバルト国内における癌的な存在になっている場所だという。

 俺的には物凄く願いが叶ったと心が躍っているのだが、何故だかフィリナ王女殿下は少し怒っている表情を浮かべている。

「陛下! ソウタさんをそこの領主に任命するのはあんまりじゃないですか!」

「そうも言っていられないんだよ。今代に突如現れた『龍殺しの英雄』だ、多くの貴族達がもしかしたら未開地を開拓することが出来るかもしれないと期待している連中が多いんだよ。それに『龍殺しの英雄』に加えて『白銀の剣聖』がそこへと向かうことになるんだ。国王として国の発展のための選択をせねばならないんだよ」

 フィリナ王女はその実力から『白銀の剣聖』と巷で二つ名が付いており、俺に知られたのが恥ずかしい様だった。

 少しムスッとしたフィリナ王女だったが、俺にはかなり都合が良かった。
 というのもまだ冒険者としても活動していたいという思いがあったからだ。

「フィリナさん、俺の為に怒ってくれてありがとうございます。けれど、フィリナさんは心配をしなくても大丈夫です。古龍がどんなに強いかは知りませんが、どんな魔物が出てきても倒します。それにフィリナさんも一緒に戦ってくれるでしょ?」

 俺はフィリナ王女殿下を一緒に戦おうと宥めた。
 ここで王女の願いが受理されて行けなくなるのも避けたかったのが一つの理由に挙げられる。

 結局、フィリナ王女殿下もその『古龍の峡谷』が近くにある領地が俺の領地へとなることを了承してくれた。

 こうして俺は『翼竜の翼』と、まだ一緒に居られる未来を見つけるのであった。


 










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