22 / 25
4章 2人の朝食
2話 口論と本音
しおりを挟む
あたしは荒井由香に勇気を振り絞って訊くことにした。その時、あたしは心の中で怯えていた。きっと由香が怒るだろうなと思ったから。
「ねえ、由香」
「うん?」
彼女はご機嫌な様子。今から話す内容はもしかしたら機嫌を損ねてしまうかもしれない。それを怖れていた。
「あのね」
「うん」
なかなか話し出さないあたしを不思議そうに見ている。
「今の仕事、いつまで続けるの?」
そう言うと由香の顔付きが変わった。
「どうして?」
「正直に話すね。あたし、由香が今のAVの仕事辞めてほしいって思ってるの。理由は……他の女性と絡むのも嫌だし、病気にも良くないと思っているからなの。由香はどう思ってるの?」
「わたしは、今の仕事嫌じゃないよ。もしかして、嫉妬してるの?」
あたしはコクンと頷いた。
「これはあくまでお仕事よ。感情なんかないよ」
「でも……」
「でも、なに?」
「もし、由香が仕事を辞めないなら別れるって言ったらどうする?」
「なにそれ!」
あたしが黙っていると、
「わたし、仕事辞めないよ? 病気があるから他の仕事は雇ってもらえないだろうし」
「そんなことないと思う。作業所とか、障害者枠の仕事だってあるんだから」
由香は何か言いたげだ。
「でも、安いんでしょ? 給料」
今の馬鹿にしたような言い草にあたしはムカッとした。
「そういう言い方はよくないよ。働いている人に失礼」
「そんなの働いている人達のことなんか関係ないよ」
あたしは呆れた。
「そんな言い方しないで」
「だって、そうじゃない」
「もういい! 恋人の意見を取り入れてくれないなら距離おこう!」
「なんでそうなるわけ?」
由香は冷静だ。その冷静さが逆に腹が立つ。
「由香! 今日は帰って!」
納得がいかないように由香は見えたけれど、知らない。
「わかった! 帰るよ。帰ればいいんでしょ!」
あたしは彼女の言ったことを無視した。
「返事もしてくれないんだね」
尚もあたしは黙っていた。本当は喧嘩なんかするつもりなかったのに。どうしてこうなっちゃうかな。あたしは今まで我慢してきた。もうこれ以上我慢ならない。だから、喧嘩になっても引き下がるつもりはない。あたしこと横浜千奈津は我慢の限界。
もし、由香があたしの要望を一つも取り入れてくれないならこっちにも考えがある。覚悟だってしてある。最悪の場合だけど。でも、なるべくそうはなりたくないのが本音。何とか受け入れてもらえないかな、そう願うばかり。
「ねえ、由香」
「うん?」
彼女はご機嫌な様子。今から話す内容はもしかしたら機嫌を損ねてしまうかもしれない。それを怖れていた。
「あのね」
「うん」
なかなか話し出さないあたしを不思議そうに見ている。
「今の仕事、いつまで続けるの?」
そう言うと由香の顔付きが変わった。
「どうして?」
「正直に話すね。あたし、由香が今のAVの仕事辞めてほしいって思ってるの。理由は……他の女性と絡むのも嫌だし、病気にも良くないと思っているからなの。由香はどう思ってるの?」
「わたしは、今の仕事嫌じゃないよ。もしかして、嫉妬してるの?」
あたしはコクンと頷いた。
「これはあくまでお仕事よ。感情なんかないよ」
「でも……」
「でも、なに?」
「もし、由香が仕事を辞めないなら別れるって言ったらどうする?」
「なにそれ!」
あたしが黙っていると、
「わたし、仕事辞めないよ? 病気があるから他の仕事は雇ってもらえないだろうし」
「そんなことないと思う。作業所とか、障害者枠の仕事だってあるんだから」
由香は何か言いたげだ。
「でも、安いんでしょ? 給料」
今の馬鹿にしたような言い草にあたしはムカッとした。
「そういう言い方はよくないよ。働いている人に失礼」
「そんなの働いている人達のことなんか関係ないよ」
あたしは呆れた。
「そんな言い方しないで」
「だって、そうじゃない」
「もういい! 恋人の意見を取り入れてくれないなら距離おこう!」
「なんでそうなるわけ?」
由香は冷静だ。その冷静さが逆に腹が立つ。
「由香! 今日は帰って!」
納得がいかないように由香は見えたけれど、知らない。
「わかった! 帰るよ。帰ればいいんでしょ!」
あたしは彼女の言ったことを無視した。
「返事もしてくれないんだね」
尚もあたしは黙っていた。本当は喧嘩なんかするつもりなかったのに。どうしてこうなっちゃうかな。あたしは今まで我慢してきた。もうこれ以上我慢ならない。だから、喧嘩になっても引き下がるつもりはない。あたしこと横浜千奈津は我慢の限界。
もし、由香があたしの要望を一つも取り入れてくれないならこっちにも考えがある。覚悟だってしてある。最悪の場合だけど。でも、なるべくそうはなりたくないのが本音。何とか受け入れてもらえないかな、そう願うばかり。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
「LGBT」というレッテルを貼られて。
千石杏香
エッセイ・ノンフィクション
性的マイノリティの意志を無視して「LGBT」は広まった。それは、当事者とは何の関係もない世界だった。「LGBT」がもたらした利益は何もない。政治や商売の道具としてもてあそぶばかりか、無関係な女性や子供までをも危険に晒す真似が平然と行われている。それを告発するために、このノンフィクションを著者は書いた――当事者の一人として。
【カクヨム】
https://kakuyomu.jp/works/16816927860040342257
【ノベルアップ+】
https://novelup.plus/story/536358021
【小説家になろう】
https://ncode.syosetu.com/n1469hu/
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる