様々な性

遠藤良二

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第1章 様々な出会い

3話 顔見知りからの誘い

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 僕には行きつけのスーパーマーケットがある。そこのレジの店員と何度も顔を合わせる内に声を掛けられるようになった。今日は少し気分が良いのでそこに買い物に行くことにした。まずは支度から始めた。洗髪をし洗顔も済ませてから着替えた。服装は黒いカットソーにブルージーンズ。靴は赤いスニーカー。どれも安物ばかりだけれど。今は無職なので以前働いて貯めた貯金をチビチビ下ろして使っている。
銀行にも寄って少しだけお金を下ろそう。

 親の車は二台あり、今日は母の仕事が休みで家にいるので、了承を得てから車の鍵を借りた。

 いずれは僕も仕事をして、中古のマイカーを買おうかなと考えている。いちいち親から借りるのは面倒だから。

 家を出る前に、「どこに行くの?」と訊かれた。こういうことを訊かれるのもウザい。なので、
「買い物ー」
適当に答えておいた。嘘じゃないし。それから目的地に向かった。

 外は太陽が出ていて気持ちが良い。暑いくらい。風は少し吹いている。

 今日も声を掛けてもらえるだろうか。そう思うと緊張してきた。店の駐車場には車がたくさん停めてあり、店内に入ると中は混雑していた。これではレジで話す時間がないかもしれない。

 このスーパーマーケットは二階建てで、外壁は白っぽい色をしている。一階は食料品売り場で二階は衣料品売り場になっている。

 まず、一階をグルッと見渡して例の店員がいるか確認した。いた! 細身の身体に茶色く長い髪を後ろで縛ってある。赤いエプロン姿だ。僕が思うに結構可愛いと思う。今度はこちらから勇気を出して話しかけようかと思っていたけれど、この混雑ぶりでは無理そう。ネームプレートを見ていなかったので名前はわからない。見ておけば良かったと後悔している。でも、人混みに紛れているせいか、最近の体調不良の延長なのか、気分が悪くなってきた。なので、例の女性とも話せそうにないし、飲み物だけを買って帰宅することにした。

 お目当てのレジの店員には、体調が悪い姿を見せたくなかったので、あえて別のレジで支払いを済ませた。本当はジュースも大して飲みたくなかったけれど、何も買わずに帰るのも万引き犯のようで嫌だから、口塩梅の良いスポーツドリンクを買って駐車場に向かった。

 歩きながらスマホの画面を見ると13:31と表示されている。

 陽射しも強くなってきた。家から出た時よりもそれは強く感じられる。じんわり脇に汗をかいていた。車まで行って陽射しから逃れようと急いで乗ったが、車中の方が気温が高いようで気分が更に悪くなった。エンジンをかけて、すぐにクーラーを回した。それを回したばかりだから、風は生ぬるい。早く家に帰りたくて、急いで帰った。

 いつもより速度は出ていた。

 ようやく僕は自室のベッドに横になることが出来た。でも、何故か徐々に調子の悪さが増してきた。また何か聞こえてきそうで怖い……。

シネ

コロスゾ

 やっぱり聞こえてきた……。お寺に行こうかな……。でも、面倒だな……。聞こえてくるのさえ無くなればいいのだけれど。僕は帰って来たばかりだけれど、重たい腰を上げてお寺に行くことにした。お布施はいくらが良いのだろう。適当に銀行から下ろしてきたお金を封筒に入れた。

 お寺と言ってもどこにあるのかよくわからないので、自宅から一番近い山の方にあるお寺に向かった。ちなみそこは、祖父が亡くなった時にお世話になったお寺だ。

 二時間後、お祓いを受けたが何の変化もなかった。そこにいた住職というのだろうか老婆が言うには、精神科に受診してみてはどうか、と言っていた。この声は「幻聴」という症状らしい。いったい何という病気なのだろう。皆目見当もつかない病名については、ここは病院ではないから医者に訊いて欲しいと言っていた。

 今は午後三時頃。

 調子はあまり良くないけれど、例の女性と話したかったので、自宅には戻らずそのままスーパーマーケットにまた向かった。十分程走って到着した。さっきよりはだいぶ車の台数も減った。入店してみると、お客さんの人数も少ないように感じる。レジを見るとお目当ての女性はまだ働いていた。話せそうなので、缶ジュースをひと缶持っていき彼女がいるレジにむかった。お客さんは二、三人並んでいた。会計のとき、
「あら、こんにちは!」
と声を掛けられた。嬉しい。僕も、
「こんにちは、元気ですか?」
と言った。
「うん、元気よ。あなたは?」
「まあまあかな」
僕は咄嗟に嘘をついた。
「名前何ていうの?」
積極的な人だと思った。
「山宮剛輝っていうんだ」
「剛輝くん。強そうな名前ね。アタシは風間瑠璃かざまるりっていうの。よろしくね!」
「よ、よろしく」
僕は突然名前を訊かれて戸惑ってしまった。
風間さんは顔を近づけてきて、
「ねえねえ、今度あそばない?」
と、小声で言った。
「え」
僕は予想外の展開にびっくりした。
「いいけど」
そう答えると、いらないレシートに連絡先を書いた紙をくれた。
「そこに連絡して。私のだから」
これは逆ナンというやつか。でも、嬉しかった。夜にでも電話してみよう。勇気をだして。
「ありがとうございます」
僕は礼を言った。これから楽しくなれば良いけれど。
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